2014年の囲碁賞金王・井山裕太|盤上の宇宙と独創の一手
公開日:
:
最終更新日:2015/02/24
ニュース
囲碁の2014年獲得賞金ランキングが確定したというニュース(朝日新聞)。
2014年の囲碁棋士の賞金ランキングがまとまり、1億4千万円余を獲得した井山裕太名人が4年連続の賞金王となった。井山は名人、棋聖、本因坊、碁聖の四冠を防衛し、阿含・桐山杯にも優勝。六冠を保持して史上最高額の1億6千万円超を稼いだ前年には及ばなかったが、3年連続3回目の1億円突破を記録した。
以前「いま囲碁がとんでもなく面白い:弱冠24歳の6冠井山裕太」にも書いた通り、僕はいま以後にとても興味を持っており、ちょっぴりだけどその勉強もしている。現在は4冠となった井山だが、史上初の7冠完全制覇にもっとも近い場所にいることに間違いない。今後ますます目が離せない棋士なのである。
photo credit: Ken Reppart via photopin cc
そんな井山が先日、過去に将棋で7冠独占という偉業を成し遂げた羽生善治と対談したというのだから、どうしてもその内容が気になるではないか。井山の囲碁はときに「盤上の宇宙、独創の一手」と称されるほどに、他者にはまったく見えない世界を見通しているようなのである。そんな井山の「先を読む力」を、歴代最高にして最強の将棋棋士・羽生が訪ねるというのは、どちらのファンにとっても興味深いテーマであろう。
ちなみに僕が以前にテレビ観戦した井山の囲碁戦において、彼の師匠である石井邦生が解説を務めていたのだが、その師匠に「なぜ、この一手なんでしょうねえ」とか「私にも狙いがよく分かりません」と述べさせるのだから、井山の宇宙観はずばぬけて大きく深くそして遠い。ちなみに、この師匠が井山少年を弟子として受入れ、育てていく様がまた素敵なのだ。
石井は井山に、子供らしく元気な碁、恐れを知らない大胆な一手、そういったものをどんどん奨励していったのである。だからこそ今の井山の独創性が育まれたと推測され、実に愛情と信頼の深さを感じる師弟関係と言えるだろう。今年も井山とこの師匠に、ますます注目したい。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
「われ敗れたり」:完敗だったが名勝負もあった第3回将棋・電王戦
今夜11時放送のTBS「情熱大陸」は、将棋・電王戦。 将棋のプロ棋士とコンピューター将棋ソフトが
-
-
岩波書店がAmazonで電子書籍Kindle版を配信開始:おすすめは『日本人の英語』
岩波書店がいよいよAmazonでも電子書籍を配信開始、というニュース。岩波文庫や岩波現代文庫そして岩
-
-
錦織圭のウィンブルドンテニス2019|好調を維持したままベスト8進出
錦織圭が今年もウィンブルドンでベストエイト進出を決めた。しかも、これまでの試合で失ったセットは一つの
-
-
ゲイツ財団と世界の貧困に関する3つの誤解
今年もビル&メリンダ・ゲイツ財団の年次書簡が発表される時期がやってきた。「ビル・ゲイツからの手紙と
-
-
バッタの大群襲来|書籍『バッタを倒しにアフリカへ』が現実に
以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」でも書いたように、昨今にわかに昆虫ブームなのは
-
-
論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち
先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている
-
-
サッカーW杯:絶対に負けられないファッションブランドの闘い
先日の「絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い」では、
-
-
華麗な王者モハメド・アリと、そのアリになれなかった男|沢木耕太郎の名著『敗れざる者たち』と『一瞬の夏』を再読する
2016年6月4日、プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリが74歳の人生に幕を閉
-
-
将棋竜王戦ランキング戦決勝|杉本八段と藤井七段の師弟対決が素晴らしかった
前回、「藤井聡太七段が先勝|現役最強棋士・渡辺棋聖とのタイトル戦」でも書いたように、いま将棋がむちゃ
-
-
ついに将棋界の頂点に|渡辺明・新名人のあまりにも遅かった到達
「魔王」渡辺、将棋界頂点に 縁遠かった名人位、36歳でついに(毎日新聞)等の報道にあるように、ようや