*

町山智浩最新作『言霊USA2016』は、シリーズ最高の現代アメリカ社会批評だ

公開日: : 最終更新日:2016/11/02 オススメ書籍

以前に、「町山智浩『知ってても偉くないUSA語録』は秀逸な現代アメリカ社会批評」と絶賛したように、町山の「USA語録」シリーズは舌鋒鋭くアメリカ社会の可笑しさを抉りだす、実に痛快なエッセイなのである。

 

そんな絶好調のシリーズに、待望の最新作『トランプがローリングストーンズでやってきた 言霊USA2016』が登場したものだから、町山ファンである僕は、早速に猛烈な勢いで読み終えてしまったのである。いやあ、今回もまたキレッキレの文章と、ゆるゆるの似顔絵イラストのコントラストに、こちらの爆笑・微笑・苦笑も最後まで止まらなかったのも無理はない。

世界のバカはアメリカをめざす!過激で“使えない”新語・失言がてんこ盛り!サブカルから政治まで、マッドなアメリカがほとばしる、週刊文春の人気連載「言霊USA」単行本化、いよいよ第四弾に突入!アメリカ在住映画評論家の町山智浩さんが、いまアメリカで起きているおバカな出来事、日本では考えられないハチャメチャなニュースを、現地で流行ったスラング、失言、名言をもとに面白おかしく、かつ歴史的な背景も絡めながら解説します。今回は大統領選やフランスのテロ、スターウォーズの新作映画(『フォースの覚醒』)や移民排斥問題など、ホットな話題が満載。また、ショーン・ペンのメキシコ麻薬王訪問の舞台裏や、知る人ぞ知るテキサスの「おっぱいレストラン」、ハッパでキメながら大統領選に立候補宣言したカニエ・ウェストなど、サブカルから政治まで、町山さんの幅広さと持ち味、ユーモアが存分に詰まった、ファン必読の一冊となっています。シリーズ本第四弾にして、町山さんの鋭い毒舌、切れ味抜群のギャグが、よりいっそう過激に炸裂しています!澤井健氏の爆笑イラストもあわせて、ぜひお見逃しなく!

 

 

とくに今回の作品で僕が秀逸だと思ったのが、スター・ウォーズ最新作の悪玉カイロ・レンと、IS(イスラム国)に心酔する現代の若者とを対比して考察したくだりだ。そういう視点はなかったなあと、いつもながらの町山の、映画作品やセレブ俳優を題材にしつつ、下ネタから時事ネタまで、大統領選挙から黒人差別に移民問題まで、アメリカが抱える現代の課題に縦横無尽にそして果敢に斬り込むその様に、ある種の感動を抱いてしまうのである。こうした軽妙洒脱なエッセイで、これほど心に刺さる印象を与える書き手は、いま町山智浩以外にはいないのではないだろうか。

 

そんな町山の今回のUSA語録も、この最新作で第4弾だ。週刊文春で続く人気連載であり、僕自身もときどきその文春の方にまで目を通してしまうほどにハマっているエッセイ・シリーズなのである。

 

machiyama-books

 

 

そんな珠玉のコラムの記念すべき第1弾が、この『教科書に載ってないUSA語録』だった。まさに書名にある通り、まっとうな人間であれば知る必要のない現代英語からアメリカ社会をおもしろおかしく評した一冊である。「町山ワールド」を覗き見るには、ぜひまずは本書からどうぞ。

「週刊文春」人気コラムを1冊に。新聞、テレビ、ウェブでは分からない超大国アメリカの素顔とは。現地在住の著者が、「日本人の知らないアメリカ語」ともいうべき名言、失言、流行語から読み解きます。イーストウッド監督の「今、アメリカはハーフタイムなんだ」との言葉に、自信を失ったアメリカ国民はみな涙を流したとか。連載でおなじみの澤井健さんによるギャグセンスあふれるイラストも収録。まさに町山ワールド全開ともいうべき、1級のアメリカ批評本です。

 

 

 

その後も勢いに乗ったまま投入されたのが、この第2弾『知ってても偉くないUSA語録』だ(文庫化にともない『アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2』に改題)。これはもう「知ってても偉くない」どころか、「知る必要がない」「知らない方がいい」と言ってもいいくらいの(笑)、ナンセンス満載の傑作レポート。だから、町山はクセになるのである。

アメリカで話題の言葉は、面白い。面白くて怖いーー。「共和党の候補だったミット・ロムニーは、20億ドル以上を投じた2012年の大統領選を、たった二つの失言でしくじりました。本書では政治家の発言以外にも、『トロフィー・ワイフ』のように学校や職場では使うのをためらう言葉、『フォトボム』などネットとスマホの時代に生まれてアッという間に広がった新語も紹介しています」驚くべき実態をリアルタイムで現地レポート。日本では報道されない74の最注目キーワードから、迷える超大国アメリカの恐るべき現実を学ぶ!

 

 

 

そんな町山の舌はますます絶好調であり、その証がシリーズ第3作となった『マリファナも銃もバカもOKの国 言霊USA2015 USA語録』である。書名も次第に過激さを増してきているのが、ファンの笑いを誘う。これまでは婉曲な言い回しだったにも関わらず、今回はタイトルに「バカ」と入れちゃったよ、あ~あ言っちゃった、というくらいに抱腹絶倒の渾身のエッセイ集だ。ぜひ読んでほしい。

辛口批評と痛快ギャグで日本人の知らない最新アメリカ事情をメッタ斬り。週刊文春の人気連載が一冊に。これであなたも米国通!?アメリカ人も困る驚くべき実態を緊急レポート!澤井健の超美麗&爆笑イラストも完全収録。週刊文春人気シリーズの第三弾が待望の単行本化!!

 

 

 

もしも、これまでのシリーズ3作をひとつひとつ丁寧に笑っていく時間がないという方におすすめしたいのが、こちらの「ベスト盤」である(笑)。『アメリカは今日も「炎上」中』という、これまたゼツミョーなタイトルを持ってきた町山は、もう間違いなく天下一品の炎上観察分析スキルの有段者と言えるだろう。このベスト盤からぜひ町山ワールドを味わってみて欲しい。

週刊文春で好評連載中の「言霊USA」をまとめた「教科書に載ってないUSA語録」「知ってても偉くないUSA語録」「マリファナも銃もバカもOKの国」の三冊を「炎上」「ネット犯罪」「SNS」などのジャンルごとに、再編集した特別版。Catfish(ネットで正体を隠して別人になりすましている人)、Troll(インターネット上の“釣り”)、Guccifer(グッチファー。謎のハッカー)など、広くて深いアメリカのネット世界を辛口批評と痛烈ギャグでメッタ切り! 抱腹絶倒のコラム33本を収録。

 

 

 

そして、この傑作シリーズのスピンオフ的な一冊となっているのが、この『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』である。米国というマッチョな男社会の中でのしあがってきたアメリカ女性たち。それは政治家であれ、女優であれ、ニュース・キャスターであれ、極めて多くの障害と妨害と戦ったきた結果として、今の地位を獲得するにいたった。そんな彼女たちの奮闘記は、男も女も、読むものを文字通り奮起する一冊となっている。

この本は15年間アメリカに暮らした私が「スゴい!」「カッコいい!」と感動した
アメリカ女性たち55人について書いたエッセイ集です。 ただ、ヒラリー・クリントンとかレディ・ガガとか、日本でも既によく知られている女性たちよりも、
「もっと日本の女性にも知って欲しい」と思った女性たちを多めにしました。
また、最初から恵まれている人よりも、多くの障害を乗り越えた人を多く取り上げました。 女性というだけでなく、人種、民族、貧困、身体障害、親によって絶望的に未来を阻まれたが、 逆にそれによって誰よりも強くなった人々です。

 

 

 

最後にもう一度繰り返しおススメしておきたいのが、この最新作『トランプがローリングストーンズでやってきた 言霊USA2016』である。トランプ大統領候補の話題に見られるように、町山のエッセイは実にタイムリーな時事ネタが豊富である。だからこそ今このタイミングで、最新のトピックを読んでおくべきなのである。ぜひとも町山語録をお楽しみ下さい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

介護士からプロ棋士へ、今泉健司四段「3度目の逆転人生」

Yahoo! ニュースにも掲載された記事「藤井聡太七段を撃破!介護士からプロ棋士へ、今泉健司四段『3

記事を読む

アメリカ大統領選挙まであと数日|敗者の演説で振り返るステーツマンシップ

ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの、泥仕合のまま迎えることとなりそうな米国大統領選挙。8年前

記事を読む

春の入学・進級・入社シーズンに絶対おすすめの国語辞典3選

3月は日本全国いたるところで卒業式が行われる。小学校を卒業して中学生になれば電車もバスも大人運賃だ。

記事を読む

Kindle電子書籍でエキサイティングに読もう、今あらためて宇宙論がおもしろい

僕は大栗博司『重力とは何か』を2年ほど前に読み、「この宇宙論はおもしろいよ!」と書いたのだが、その気

記事を読む

若き水中考古学者の海底探検記|ガラクタから宝物そして遺跡新発見

「水中考古学」なる学問分野をご存知だろうか? もちろん考古学なら知っている。それの水中版? もちろん

記事を読む

永世竜王・渡辺明の『勝負心』と、あきらめたらそこで試合終了だよ

渡辺明の新著『勝負心』を読み終えたところなのだが、これが実に面白かった。「羽生世代」に続く、将棋界の

記事を読む

ゲーマーとお金|さらなる有望産業 eスポーツビジネス

ご存知のとおり今回の東京五輪からは、スケートボードや、サーフィン、そしてスポーツクライミングといった

記事を読む

春の卒業・入学シーズンを前に国語辞典をしっかり選ぼう|やはりオススメの定番4冊

さていよいよ3月となり、入試の合格発表から卒業式・入学式の季節となった。素敵なサクラが咲くよう期待し

記事を読む

今年のノーベル経済学賞はアメリカの労働経済学者3名が共同受賞

今年のノーベル賞受賞者が発表されるなか、いよいよ経済学賞の受賞者が明らかとなった。それは、「『自然実

記事を読む

NHK-ETV特集 将棋電王戦:棋士vsコンピュータの激闘5番勝負

先週末に放送されたNHK-ETV特集の「棋士VS将棋ソフト 激闘5番勝負」をご覧になっただろうか?面

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑