永世竜王・渡辺明の『勝負心』は、羽生善治に対する尊敬と憧憬と畏怖
公開日:
:
最終更新日:2021/01/31
オススメ書籍
『知ってても偉くないUSA語録』と、『Born to Run~走るために生まれた』に続けて、現在のKindle本 夏休みセール(第4期)から最後にもう一冊、非常に面白く読んだ書籍を紹介したい。それが本書、プロ棋士・渡辺明の新著『勝負心』である。
この20年、将棋界は“羽生善治”という巨星を中心に回ってきました。今、その巨星に劣らない輝きを放っているのがこの男。史上4人目の中学生棋士としてプロデビューし、弱冠20歳で棋界最高位「竜王」に上り詰め、そのまま5連覇して「初代永世竜王」の称号を得た渡辺明さんです。1970年前後生まれの“羽生世代”に、一回り以上年少の渡辺さんが単身渡り合っている、という状況がもう10年ほど続いています。7割近い通算勝率を誇り、唯一、羽生善治と五分の星を残している彼の強さの秘訣はどこにあるのか? 「ゲンは担がない。将棋に運やツキは関係ない。すべて実力」と言い切る渡辺さんが、人間同士が対峙する将棋という勝負の厳しさ、奥深さ、そしてその一見ドライなスタイルの裏に隠し持った勝負を制するために必要な心構えを惜しみなく語り尽くします。
僕の読後感想は、「永世竜王・渡辺明の『勝負心』と、あきらめたらそこで試合終了だよ」に詳しく書いた通りだが、羽生善治以外のトップ棋士が胸の内を語ったものとして、とても興味深く読んだ一冊だ。羽生VS渡辺の世代間対立が強調されることも多いが、本書には、羽生に対する渡辺の尊敬・憧憬・そして畏怖が込められている。クールな現代っ子というイメージの渡辺だけでなく、非常に人間臭くそして人間好きの様子が本書から十二分に伝わってくる。将棋好きにはもちろん、勝負事が好きな人やプロフェッショナルの思考法に関心がある向きにも、絶対におすすめできる一冊だ。
Amazon Campaign
関連記事
-
アメリカ連邦最高裁、49年前の判断を覆す|今こそ憲法で読むアメリカ史
すでに日本においてもニュースや新聞を始めとする各種メディアで報道・解説されている通り、アメリカ連邦最
-
経済学と歴史学そして自然実験
2010年に出版されていた "Natural Experiments of History" がよう
-
野村克也の頭脳とデータ|戦後初の三冠王そして名監督としての実績と名声
日本のプロ野球界に燦然と輝く実績と名声。戦後初の三冠王の栄誉を手にした名キャッチャーにして、監督とし
-
【おすすめ英語テキスト】重要単語を因数分解|語源から根こそぎ完璧に理解する
現在開催中のKindle本ストア 9周年キャンペーン。本日はこの中から最大級におすすめしたい、この英
-
あの伝説の一戦「3連勝4連敗」から9年|羽生善治・永世七冠誕生
2017年12月5日、長い将棋の歴史に新たな偉業が刻まれた。羽生善治が竜王位を奪還し永世竜王となり、
-
ワールドカップ決勝へ|ラグビー名将エディー・ジョーンズの勝負哲学
ラグビー・ワールドカップが面白い。まったくもってニワカなんですが、ルールが分かるとラグビーってこんな
-
歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識
現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世には二種類の男(自分かそれ以外)
-
辺境ライター高野秀行の原点『ワセダ三畳青春記』の「野々村荘」こそ日本最後の秘境
「高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家」にも詳しく書いたように、辺境ライターこと高野秀
-
秘境・辺境探検家の高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家
世界の秘境・辺境探検家である高野秀行の作品はどれも類例のない傑作ノンフィクションばかりなのだが、本書
-
町山智浩の『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』と、ハズレのない現代米国社会批評シリーズ
「教科書に載っていないし、知ってても全く偉くもないUSA語録」でも紹介したように、町山智浩のエッセイ
Amazon Campaign
- PREV
- 人生で大切なことはブラック・ジャックに学んだ
- NEXT
- カブトムシと祭りと日本の夏