日本語の誤用をとことんを考える『明鏡国語辞典』が10年ぶりに大刷新|新しい「問題な日本語」
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最終更新日:2020/12/23
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今年も国語辞典の話題が多かったが、最新のトピックとして最も注目すべきなのは、やはりこちら、『明鏡国語辞典』が10年ぶりの大改訂を終え、最新第3版が出版されたことだろう。もちろん僕もさっそくに購入しましたよ。
さて、今回の大改訂版には以下10の特色がある。しかしながら、特色1の紙面デザインや、特色2の新語収録は、他の国語辞典でも取り組んでいるものであり、この「明鏡ならでは」のものではない。この明鏡を他とは異なるユニークな国語辞典たらしめているのはやはり、特色3の「日本語の誤用」にめちゃくちゃ詳しい、ということである。
語彙を豊かに、語感を磨く、10大特色
特色1:探しやすく、読みやすい紙面デザイン
特色2:新語からビジネス用語、学習に役立つ語まで 最新の言葉を約3500語増補
特色3:誤用までわかる国語辞典 言葉の正しい使い方を解説
特色4:「恥ずかしくない大人の言葉遣い」をサポートする 「品格」欄
特色5:漢字の使い分けがわかる 「書き分け」欄
特色6:読み間違いをしないための 「読み分け」欄
特色7:日本文化の言葉・文学によく出てくる言葉を解説するコラム 「ことば比べ」「ことば探究」
特色8:話すときにも書くときにも使える 巻末付録「伝えるためのことば」
特色9:意味から使い方まで 新語・新用法がわかる
特色10:知りたい情報にたどり着ける 便利な索引
なにしろ、以下の詳細説明にもある通り、次のような用法はすべて誤用なんだけど、どこがどう間違っているか、きちんと指摘できますか?
- アニメ好きの血がうずく
- 今回だけは多めに見よう
- 恩恵にあやかる
- 部長から寸志を賜る
- 有利に立つ
- 捜査が佳境を迎えている
- 爪痕を残せるよう頑張りたい
こういう、ついつい自分でも普段使いしてしまいそうな、そして他人が使っていても気づかずスルーしてしまいがちな、そんな「日本語の誤用」がたっぷりと収録されているのが、この明鏡国語辞典なのである。だからこそ、他に別の国語辞典が手元にあったとしても、それでもなおこの明鏡も合わせて使いたい、その結果として自分の誤用が避けられるのであれば、やはり明鏡さまさまなのである。
それではなぜ、この明鏡国語辞典は、他の類書とはまったく異なったこうした特長を持つようになったのだろうか?それはひとえに、辞書編纂者の考え方によるものなのである。明鏡国語辞典の編纂は、日本の国語学者・言語学者である北原保雄が務めているのだが、彼の名前を以前に聞いたことがあるってひと、たくさんいますよね。そう、なにしろあのベストセラー『問題な日本語』の著者でもあるのだから。
へんな日本語にも理由(わけ)がある!「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」「こちら和風セットになります」「全然いい」などの“問題な日本語”を取りあげ、それがどのような理由で生まれてきたか、どのように使えばよいかを、日本語の達人、『明鏡国語辞典』の編者・編集委員がわかりやすく解説。一読して言葉の常識がわかる「使うのはどっち?」も収録。
このように、「問題な日本語」について考え続けてきたこの辞書編纂者だからこそ、明鏡国語辞典は非常にユニークで、だからこそ貴重で有用な唯一無二の国語辞典となりえたのである。学生はもちろん、研究者やビジネスパーソンや主婦にとっても、つまり日本語を使うすべての人々にとって、この国語辞典は、われわれが普段意識することのない「誤用」について真剣に考える意味でも、必要不可欠の一冊となるはずだ。はげしくおススメしますよ!!
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