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サッカー監督の戦術と采配|究極のファインプレー

7/6水曜にNHKで「サッカーの園〜究極のワンプレー〜ワンプレーに秘められた極意 サッカーの神髄に迫る!」が再放送される。サッカー好きの人には見逃せない番組で、これまでにもフリーキックや、スルーパス、ループシュート等々、数多くの「究極のワンプレー」が紹介されてきた。

 

 

しかし今回の放送はまさに異色。なにしろ今回だけは選手ではなく、監督に着目するのだから。そして、これがまた目の付け所がよかったのである。今の海外サッカーを見渡せばとくに、スタープレイヤーの存在と同時に、超一流の監督の手腕にもますます注目が集まっているのが分かるだろう。そう、一流の選手から超一流のプレイを引出せるのは、超超一流の監督だけなのだ。

監督の戦術や采配から「究極のワンプレー」を紐解く異色回。日本サッカーに変革をもたらしたオシム監督の仰天の練習法や「4点取られた5点取って勝つ」J1最多勝監督、西野朗の「超攻撃的」な選手交代とは?スタジオには松木安太郎が登場!スター揃いの当時のヴェルディをまとめ上げた「モチベーター」としての信念を語る。札幌のペトロヴィッチ監督が理想とする「ミシャ式」フォーメーションが生んだ理想のゴールとは?

 

という背景を踏まえてこの番組を見れば、より面白さが伝わってくるのではないだろうか。さて、個人的にはやはりこれまでの日本代表監督といえば、岡田監督とオシム監督が強烈に印象の残っている。まずは岡田監督と言えば、フランスW杯直前で、当時のスター選手・三浦カズをメンバーから外したことでよく知られる。当時のあの判断は日本社会で大紛糾するほどであり、岡田監督自身、家族の身の安全を懸念するほどだったと述懐している。しかし、彼はそれほどの胆力をもって決断することができる、稀有な人材だったとも言えるだろう。長期的なチーム作りと戦術策定から、短期的には試合の流れの中で見極める選手交代などなど、監督には当たり前だが決断の連続が求められる。しかし、誰もが適時に的確なジャッジを下せるわけではない。岡田監督にはその胆力があり、その裏には彼の信念があり、しかもそれをきちんと言葉で表現し選手に伝えるのに卓越した人であった。だからこそ、これまでの実績を自らの「メソッド」として体系化することができるのだ。

W杯2回指揮の名将による「サッカーの型」初公開!岡田武史の経験と知識を一冊に凝縮。

「日本人が世界で勝つための〈プレーモデル〉を作り、16歳までにそれを落とし込んで、あとは自由にするチームを作ってみたい」――2014年、私はFC今治のオーナーになりました。そして、自立した選手と自律したチームを作る〈型〉を選手に浸透させる方法論を〈岡田メソッド〉としてまとめたのです。

これまでは、「状況」での指導ばかりで、選手に対して、「どんなときに、どうプレーすることがいいのか」をうまく伝えられなかった。それが、「原則」での指導によって、簡単に意図が伝えられることがわかってきました。つまりプレーモデルの構築によって、指導者の成長を劇的に早められると思うようになったのです。(本文より)

 

 

そしてもう一人の名監督と言えば、NHK「サッカーの園」でも取り上げられていたように、オシム監督だ。いまなお、彼があのとき病に倒れなければ、当時の日本代表はどこまで強くなれたのだろうか、という幻を思い描く人も多い。そんなオシムの真骨頂は、「オシムの言葉」とも言われたように、独特の言葉づかいで、相手をときに迷わせ、ときに考えさせる、そんなメッセージの数々だった。そしてこれは彼の生まれとも無関係ではない。ユーゴスラヴィア紛争の真っただ中を生き抜き、旧ユーゴの最後の代表監督も務めたオシムだからこそ、深い含蓄のある言葉が出てくるのだろう。彼は日本代表選手に言った、もっと走れと。しかし彼はただ足が速いだけの選手を求めていたわけではない。彼は続けて言う、もっと考えろと。そんな禅問答とも思えるような独特の監督術が、あのときの日本には合っていたのかも知れない。だから僕もいつまでも夢見てしまう、彼が率いる日本代表がワールドカップで活躍する姿を見たかったと。2022年5月1日、80歳で亡くなる最後まで、彼は日本を愛し、日本代表サッカーの発展を願っていた。

「リスクを冒して攻める。その方がいい人生だと思いませんか?」「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」サッカー界のみならず、日本全土に影響を及ぼした言葉の数々。弱小チームを再生し、日本代表を率いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセージ。

 

 

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