*

[若きテクノロジストのアメリカ]宇宙を目指して海を渡る~MITで得た学び、NASA転職を決めた理由

公開日: : 最終更新日:2014/09/12 アメリカ, オススメ書籍

『宇宙を目指して海を渡る~MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』を読み終えた。少年の頃に天体に思いを馳せたその夢を叶えるため、東大からMITへPh.D.留学し、そしてついにNASA ジェット推進研究所に職を得るというストーリー。思わず漫画『宇宙兄弟』を読み返しちゃう、それくらい宇宙への憧れに満ちた一冊であり、清々しい読後感に包まれる。

 

 

本書の面白さは、まさにこの宇宙への夢にある。夢とはつまり渇望だ、そう著者が言うように、この渇きこそが著者のキャリアの根底にある。昨今のグローバル人材云々に対しても「僕にとってはどうでもいいことだ」と言えるのは、結局のところそこに夢があるのかという一点に尽きる。だからこそ、逆に言えば夢を持っていれば、「東大とハーバードのどちらが偉いなどという議論に何の意味もな」く、そして「日本で働くかアメリカで働くかということは、東京で働くか大阪で働くかということと本質的には何の差もない」のである。

 

medium_3299647283photo credit: Storm Crypt via photopin cc

 

 

本書では、アメリカの高等教育やMITの創造性について、そして博士課程を生き残る術についてもページを割く。そこには著者のリアルな経験と観察そして学びが大いに反映されており、米国留学に興味を持っている人にとってはとても面白く読めると同時に、極めて参考になる箇所であろう。しかし、僕個人にとっての最大の読みどころは第4章「国語力:伝えられなければどんな発見もないのと同じ」であった。この国語力は本章では「話す力」と「書く力」を合わせたものとして定義されるが、アメリカ人の、もしくはアメリカ教育が重視するこの国語力が、留学後に大きく価値観が変わったことの一つだと著者は述懐する。

 

アメリカでは高校生の頃からライティングの授業があり、大学学部生になってからはアカデミック・ライティングの技術を叩き込まれる。それくらい書くことが重要視され、またライティング・スキルは天賦の才能などではなく修得可能な技術(スキル)だと認識されており、その方法論も確立されているのである。アメリカ人は「舌先三寸」で話すのも書くのも上手いお調子者。確かにそういう面もあるが、この国語力というのはやはり極めて重要なものであり、それを理科系の著者が力説する点にとても興味を持った。社会科学系の学問でももちろんこの国語力は大事なものだ。何を伝えるべきかだけではなく、それをどう伝えるべきか。「伝えられなければどんな発見もないのと同じ」という著者の指摘は、どの分野の学生・研究者にも当てはまることなのである。オススメの一冊。

 

はじめに
プロローグ ~青き夢~
第1章  僕はなぜ海を渡ったか
第2章  競争:アメリカの学生が必死に勉強する理由
第3章  僕はいかにしてMITで自信を失い、再び取り戻したか
第4章  国語力:伝えられなければどんな発見もないのと同じ
第5章  僕はなぜMITを好きになったか
第6章  創造:革新を生む不真面目さ
第7章  僕はなぜ留学支援の活動を始めたか
第8章  人材:流出とグローバルのジレンマ
第9章  僕はなぜ旅をするのか
第10章  挑戦:スケジュールをこなす以上の人生を生きたければ
第11章  僕はいかにして宇宙への夢を見失い、それを取り戻したか
第12章  進路:夢と選択肢の根本的な違い
第13章  僕はいかにして伴侶を得たか
第14章  決断
第15章  僕はいかにしてNASA JPLに職を得たか
第16章  夢と死:宇宙開発の意義とは
エピローグ ~NASA JPLへの出発~
謝辞

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

Kindle電子書籍でわくわく読む、角川書店の初心者向け数学シリーズ

今年はますます電子書籍市場の拡大に拍車がかかりそうだ。「2018年には米国と英国で紙書籍を追い抜くか

記事を読む

Kindle電子書籍で手に汗握って読む、箱根駅伝をより面白くするこの3冊

いまや国民的イベントにまで人気が拡大した、正月の風物詩・箱根駅伝。僕も含めて毎年楽しみにしている人は

記事を読む

誰も教えてくれない、科研費に採択されるコツを公開|研究費獲得に向けた戦略的視点2018年版

今年も9月になり、科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。自然科学系の研究者にとってはもち

記事を読む

vermeer blue

アートは小説よりも奇なり:盗作と贋作の歴史、美術ノンフィクションが面白い

なんと、僕が好んで読む美術ノンフィクションの傑作が2冊も文庫版として再登場しているではないか。『ギャ

記事を読む

将棋の子|奨励会年齢制限と脱サラ棋士のプロ編入という奇跡の実話

映画『泣き虫しょったんの奇跡』が公開されている。まだ観ていないのだが、もちろんこの実話はとてつもなく

記事を読む

japanese dictionaries 1

学校で教えて欲しいおすすめ国語辞典の選び方・使い方・遊び方:複数の辞書を比較して使い分けよう

ベストセラーかつロングセラーの3冊の定番国語辞典 数多く存在する国語辞典の中から最初の一冊を選ぶな

記事を読む

中学生プロ棋士・藤井聡太四段の新たな歴史的偉業

快進撃を続けていた若干14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が、ついに、なんと、歴代連勝記録の単独トップとい

記事を読む

山に登るということ:登山と遭難とそして救助

2008年のマンガ大賞にも選ばれた、山岳漫画『岳』。いまさら言うまでもないが、これものすごく胸を打つ

記事を読む

『ゼロ・トゥ・ワン』のティールと米国社会の変容『綻びゆくアメリカ』

米国の著名投資家ピーター・ティールが著した『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』が、「今

記事を読む

若い読者のための経済学史と哲学史|本日限定セールがおすすめ

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴史や文学そして経済学といった学

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

若い読者のための経済学史と哲学史|本日限定セールがおすすめ

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴

「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ

10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作とな

日本美術展史上最大のフェルメール展ついに始まる|事前に読んでおきたいおすすめ5冊

さて、先週からいよいよ上野の森美術館で「フェルメール展」が始まった。現

2018年ノーベル経済学賞はノードハウスとローマーに|著書が半額セール中

今年のノーベル経済学賞が先日発表され、受賞者はイェール大学のウィリアム

japanese dictionaries 1
三省堂『辞書を編む人』が、今年の新語を募集中

時を経て社会は変容し、そして言葉も変遷する。いつの時代もワカモノの言葉

レギュラー化決定NHKの新番組「ろんぶ~ん」は最高のアカデミック・エンターテインメント

さて先週から始まったNHK-Eテレの新番組「ろんぶ~ん」をご覧になりま

植物はスゴい!と語る山田孝之がもっとスゴかった

先日放送されたNHK-Eテレの「植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之」

30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方

中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深

PAGE TOP ↑