絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い
「絶対に負けられない戦い」に直面しているのは、もちろんサッカー選手だけではない。監督やスタッフ等もそうなのだが、もっと言えば、ある意味最も熾烈な闘争をしているのが、世界のグローバルスポーツブランドではないだろうか。
上記のように産経新聞の記事にあるように、各ブランドのワールドカップにかける意気込みは選手と同等かそれ以上と言ってもよいだろう。近年ではナイキの進出が著しいが、伝統的にヨーロッパが中心のサッカー界においては、アディダスとプーマという、2つのドイツメーカーがビッグブランドであり続けた。また、日本においても、サッカーと言えばアディダスかプーマ、という認識が長く続いていたように思う。
photo credit: fave 🙂 via photopin cc
そんなアディダスとプーマだが、実は両社は元々は同じ会社だったのである。ご存知でした?「ユニクロとスポーツビジネスの舞台裏」で書いたように、なにしろドイツ人兄弟が仲違いした結果、別々のメーカーを立ち上げ、そのどちらもがグローバルブランドとなったという因縁の歴史があるのだ。だから今も、アディダス対プーマというのは、一般のサッカーファンには到底想像もできないほどの凄まじいライバル意識が剥き出しになり、選手・チーム・スポーツイベントの契約獲得、そしてファンの獲得合戦が繰り広げられているのである。
photo credit: Dawn Huczek via photopin cc
こうしたスポーツ界の裏事情を生々しく描いた『アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争』は現在絶版となっているのが残念であるが、大変に面白く読めるスポーツ(ブランド)ノンフィクション。その復刊とともに期待したいのがその続編。ナイキやミズノそしてユニクロといった新興ブランドも含め、そしてサッカー以外の競技も含めた現在のスポーツ界におけるブランド同士の熾烈な闘いについて、アップデートした内容をぜひ上梓して欲しいと願ってやまない。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
若き冒険家のアメリカ|植村直己『青春を山に賭けて』
NHK-BS で放送されている「ザ・プロファイラー|夢と野望の人生」をご覧になっているだろうか?以前
-
-
Wall Street Journal 125周年と、アメリカ現代史
ちょうど昨年、「フィナンシャル・タイムズ(FT)とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」で書い
-
-
法律改正、脳死判定、臓器移植、そしてコーディネーター
先日、「6歳未満女児の脳死判定、臓器提供へ:国内2例目」というニュースがあった。そして「心臓と肺を男
-
-
チェス界のモーツァルト、天才ボビー・フィッシャーの生涯が待望の文庫化
伝説的なチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの生涯を記録した傑作ノンフィクション『完全なるチェス』
-
-
多才で異能の人・任天堂岩田聡の言葉
任天堂の岩田聡社長が亡くなったという突然のニュース。ゲーム業界の第一人者であっただけに、国内外でも大
-
-
TSUTAYA運営の市立図書館に続き、今度は学習塾ノウハウを公教育に導入:いま話題の佐賀県武雄市に行ってきた
佐賀県武雄市がまた新しい取り組みを始めたようだ。 (NHKニュース)佐賀県武雄市は、来年の春から公
-
-
経済学と歴史学そして自然実験
2010年に出版されていた "Natural Experiments of History" がよう
-
-
東大医学部合格者の6割が通う進学塾|受験エリートと塾歴社会
先日、雑誌AERAの特集を読んだ。「東大理III合格者の6割が所属 受験エリートの“秘密結社”」とい
-
-
そして誰もいなくなった東京|中野正貴の TOKYO NOBODY の世界
緊急事態宣言が発令され、そして街から人が消えた。以下の写真は新宿駅南口、いつもならどの時間帯でも人混
-
-
ゴリラ研究者にして京都大学新総長・山極寿一『「サル化」する人間社会』が、もんのすごく面白かった
現在シーズン2が放送中のNHKスペシャル「ホットスポット」。先月放送された第一回の「謎の類人猿の王国