いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ
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最終更新日:2021/02/02
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さて、「2020年、本ブログで最も売れたこの1冊」でも紹介したように、昨年の一年間でもっとも売れたのがこちらの三省堂『新明解国語辞典』だったわけである。「日本でいちばん売れている国語辞典『新明解』に待望の最新第8版が登場」でも紹介したように、文字通り日本で一番売れている辞書が9年ぶりに全面改訂した最新第8版という注目度もあり、ますます売れている様子だ。
しかしながら、売れている辞書はもちろんこれだけではない。なにしろ本ブログでも、1位の新明解に次いでよく購入されたのが、こちらの岩波国語辞典だったのだ。この辞書も同様に、10年の歳月をかけた大幅改訂を終え、2019年に最新第8版が発売されたばかりであり、次の改訂にも同じく10年くらいかかることを考えると、やはり買うなら今、なのである。
そして、いま最も注目すべき辞書は、上記の新明解でも岩波でもなく、じつは大修館書店『明鏡国語辞典』ではないかと個人的に考えている。「日本語の誤用をとことんを考える『明鏡国語辞典』が10年ぶりに大刷新|新しい「問題な日本語」」でも紹介したように、この辞書も10年の時間をかけて大幅改訂を終え、2020年12月に最新版が発売されたばかりなのだ。僕はもちろんすぐに購入したのだけれども、本ブログ経由で購入された方も多く、やはり注目度の高さがうかがえる。
この明鏡国語辞典は、最新版でもまだ第3版ということからも、上記の新明解や岩波に比べると歴史が浅いことが分かるだろう。だからこそ後発として国語辞典業界に殴り込みをかけるには、とがった特徴のあるアピールポイントがどうしても必要だったのだ。そのための編纂方針が「間違った日本語をただす」ことであり、そこに編纂者・北原保雄の哲学があるのだ。詳しい特徴は、「日本語の誤用をとことんを考える『明鏡国語辞典』が10年ぶりに大刷新|新しい「問題な日本語」」で解説した通りであり、ぜひこの比較的新しい国語辞典が、いまでは日本でナンバーワンのシェアを築き上げた新明解などの先輩辞書に対しても負けないくらいの地位を獲得して欲しいと願っている。ちなみに北原保雄は、ベストセラーとなった『問題な日本語』シリーズの著者であるので、売れに売れ当時大きな話題となったこれらの書籍を読んで印象に残っている人も多いことだろう。そんな人にとっては、最新版がでたばかりの明鏡国語辞典こそが、国語辞典選びの最有力候補となるだろう。
このように、最新版の出版があいつぎ、大変賑やかになってきた国語辞典業界だが、上記の3冊はいずれも「小型」に分類されるものだ。それではより大きくの言葉を収録し、ひとつひとつより詳しい語釈と解説を加えた「中型」はどうなっているのか? じつのところ、その中型国語辞典の市場も、いま極めてアツいのである。例えば、誰もが知っている岩波書店の『広辞苑』。これが中型国語辞典の代表であり、やはり10年の期間を費やして大幅改訂に取り組み、その最新第7版が2018年に出版されたところだ。発売からまだ日が浅く、次の改訂までもまた10年かかることを考えても、広辞苑を手元に置いておくなら、やはり今がベストタイミングなのである。
さらには、もう一つの中型国語辞典である三省堂『大辞林』にいたっては、なんと13年もの歳月をかけて大刷新した最新第4版が、これも2019年に出版されたばかりなのである。もちろん僕はこれも揃えているが、次の改訂に要する長い長い年月を考慮すれば、やはり今くらいのうちに手元に置いておくのがよいだろう。
ここまで見てきたように、小型国語辞典だけでなく、中型国語辞典までもが、大幅な改訂をほどこした最新版がここ数年で相次いで出版され、がぜん国語辞典市場が盛り上がっているのである。しかしながら、数多くの国語辞典があり、それらの最新版があっても、どれを選んでよいか分からないという人おおいですよね? そんなときにこそ役立つ最良のガイドブックがこちら、辞書芸人を自称するサンキュータツオ氏による傑作にして名作の『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』である。多種多様な国語辞典のそれぞれの個性と特徴について、おもしろく分かりやすく丁寧に解説してくれて、自分にとってぴったりの辞書選びに最適のアドバイスとなっているのだ。こちらの書籍も本ブログ経由で大変おおく購入されており、どの国語辞典を買おうか迷った際の指針となっていれば幸いである。
こうして10年をかけた大幅改訂が終わり、各社がそれぞれ力をいれる国語辞典の最新版が出版されている現在は、まさに辞書選びのベストタイミングである。個人的なおすすめは、気になる辞書、ちょっとクセのある辞書など、2冊を買ってみることである。同じ言葉であっても、辞書が異なるとこんなにも解説の仕方が違うのか!という驚きは、複数の辞書を比較しても初めて実感できることなのだ。どうぞよい辞書ライフを!
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