*

法律改正、脳死判定、臓器移植、そしてコーディネーター

公開日: : 最終更新日:2014/12/12 ニュース

先日、「6歳未満女児の脳死判定、臓器提供へ:国内2例目」というニュースがあった。そして「心臓と肺を男児へ移植:6歳未満の脳死女児から摘出」と臓器移植が行われた。2010年施行の改正臓器移植法によって、15歳未満からの脳死臓器提供が可能となってからまだ数年しか経っていないように、日本においてこの分野はまだ非常に新しい。

 

自分の子供の臓器を提供する両親にとっては当然のこと、それはものすごく重い決断になる。今回のケースでは、「とても心の優しい子でした。臓器提供という形で病気に苦しむお子さんを助けることに、きっと賛同してくれると信じています」というコメントを発表しているが、そんな両親の側に立って必要な情報を提供し、彼らの最終意思を確認するのが、臓器移植コーディネーターという職業である。

 

coordinator

 (朝日新聞)

 

日本臓器移植ネットワークの公式ウェブサイトでもその職種や具体的な仕事ぶりが詳しく解説されているように、臓器移植法改正後さらに注目が集まった。だが、僕がこの仕事について知ったのは、WOWOWのドラマ『移植コーディネーター』がきっかけであった。

「子供の虐待問題」や「利権を狙う病院側の陰謀」など様々な問題が浮かび上がる臓器移植。2010年の臓器移植法改正という変化の中で、移植コーディネーターが様々な思惑に振り回されながらも国内初の6歳の心臓移植を成功させるまでを描いた社会派人間ドラマ。移植を待つ子供を持つ親の苦しみ、脳死の判定を受け入れる家族の苦しみ。両者の間を取り持つ移植コーディネーターの葛藤。キャストの迫真の演技に思わず涙が溢れる。

 

以前にも紹介したように、この連続ドラマWシリーズは「大人のための本格的社会派ドラマ」として成立するほどに、ものすごくクオリティが高い。今回の『移植コーディネーター』にしても、法改正後すぐの放送となるなど、WOWOWが新たな社会的課題を取り上げようという強い決意を伺わせる。今回国内で2つ目の実例があったという報道を踏まえ、とくに幼児の脳死判定と臓器移植の現状、そして臓器移植コーディネーターという仕事と彼らの立場や考え方を理解するためにも、いま再び視聴されてよいドラマではないかと思う。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

中学生プロ棋士・藤井聡太四段の新たな歴史的偉業

快進撃を続けていた若干14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が、ついに、なんと、歴代連勝記録の単独トップとい

記事を読む

バッタの大群襲来|書籍『バッタを倒しにアフリカへ』が現実に

以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」でも書いたように、昨今にわかに昆虫ブームなのは

記事を読む

サッカーチームの経済学|デロイト・フットボール・マネーリーグ2016年版

今年もまたこの時期がやってきた。そう、デロイト社によるレポート "Football Money Le

記事を読む

論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち

先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている

記事を読む

ミャンマーの歴史と地政学|アジアの超大国・中国とインドをつなぐ十字路

ミャンマーがいま政治的に揺れている。日本との歴史的関係も長いこの国は、僕自身も何度か訪れたことがある

記事を読む

japanese igo

2014年の囲碁賞金王・井山裕太|盤上の宇宙と独創の一手

囲碁の2014年獲得賞金ランキングが確定したというニュース(朝日新聞)。 2014年の囲碁棋士の賞

記事を読む

米国Amazon.com が公表する、アメリカとカナダの Most Well-Read Cities

毎年恒例となった、Amazon.com (および Amazon.ca)が発表する "Most Wel

記事を読む

将棋竜王戦ランキング戦決勝|杉本八段と藤井七段の師弟対決が素晴らしかった

前回、「藤井聡太七段が先勝|現役最強棋士・渡辺棋聖とのタイトル戦」でも書いたように、いま将棋がむちゃ

記事を読む

そして誰もいなくなった東京|中野正貴の TOKYO NOBODY の世界

緊急事態宣言が発令され、そして街から人が消えた。以下の写真は新宿駅南口、いつもならどの時間帯でも人混

記事を読む

キューバに行くなら今が最後のチャンス:アメリカ人観光客が殺到する前に

今年の「ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所」でも書いたように、今キューバが

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑