Kindle電子書籍でエキサイティングに読もう、今あらためて宇宙論がおもしろい
僕は大栗博司『重力とは何か』を2年ほど前に読み、「この宇宙論はおもしろいよ!」と書いたのだが、その気持は今も全く変わらない。本書の最終章で著者が次のように書くように、新しいアイデアと、それを突き詰める研究者が、いまの宇宙物理学最前線をとてもエキサイティングなものとしている。門外漢にもやさしく語りかけるように説明してくれる本書は、そんな世界を垣間見るのに最適な入門書となっているのだ。
科学とはアイデアの自由市場なのです。力強いアイデア、美しいアイデアには自然と多くの研究者が集まり、そのようなアイデアを生み出す分野が発達していくのです
そして別の視点から素晴らしいなと思ったのが、この幻冬舎の新書シリーズが宇宙論を一気に展開したことだ。これまでは何となく「サイエンスものはブルーバックス」というイメージもあったかと思うが、大栗博司のもう一冊『強い力と弱い力』、そして村山斉の『宇宙は何でできているのか』と、矢継ぎ早に新書を投入してきたことは、幻冬舎の英断とも言えるのではないだろうか。ちなみに両氏はそのブルーバックスでも相次いで著書を発表しており、極めて精力的に一般読者向けの宇宙論解説を続けている。
僕は以下の2冊も読んだのだが、こんなにも宇宙の本をまとめてむさぼり読んだのは何年ぶりだろうか、というくらい新鮮で刺激ある読書体験となった。未読の方にはぜひとも合わせて、宇宙の謎とその面白さ、そして夢とロマンを感じ取ってもらいたい。
そして続いて僕が手にしたのが、青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』だった。「青木薫の『訳者あとがき』は、いつも読み応えがある」にも書いたように、数多くの傑作ノンフィクションの翻訳を手がけてきた青木薫が、初めて取り組んだ著作がこの一冊なのだ。好奇心旺盛な氏の関心がいま宇宙に向かっているということ、そして宇宙論に関する翻訳を手がけその興味がさらに深まっていったことが、本書執筆のきっかけになったという。そういう著者の思いを感じながら、これもまたとても面白く読んだのを思い出す。
そして、「若きテクノロジストのアメリカ」でも紹介した『宇宙を目指して海を渡る』も刺激的な一冊だ。少年の頃に抱いた天体への夢そのままに、東大卒業後にMIT博士課程に留学した著者の奮闘記である。宇宙に対する著者のロマンと同時に、アメリカの大学院で学び闘うさまは、藤原正彦『若き数学者のアメリカ』や、若き起業家・星一を描いた『明治・父・アメリカ』に匹敵する、手に汗握る物語だと言えるだろう。アメリカ留学に関心があるなら絶対に読んでおきたい一冊でもある。
そして最後に、宇宙飛行士選抜試験について。人気漫画『宇宙兄弟』の物語の初めで、主人公が宇宙飛行士になるための選抜試験を受けるエピソードがあるのを覚えている人も多いだろう。とくに、数日間を密室で過ごさせストレス耐性をチェックしたり、不測の事態にどう対応するかのリーダーシップやチームワークを見たりするのだが、本当にこんな試験をやってるの?と思わざるを得ないシーンが連続するのである。
しかし、まさにそれが実際に行われているのだというのが、以下の2冊のノンフィクションである。どんな人物を宇宙飛行士に選抜するのか、そして試験では何を評価しているのか等々、その舞台裏が様々に語られ実に興味深い。もしもさらに興味をもったならば、そのときのJAXAの募集要項や応募書類に目を通してみるのもいいかも知れない。次に募集があるのが何年後になるのか分からないが、それこそ『宇宙兄弟』と同じように、子供の頃に宇宙のその向こうに馳せた思いは、そう簡単に消せるものではないのだから。
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