スポーツ業界にデータ革命の波|NHK新番組「スポーツデータ・コロシアム」が面白い
NHK-BS 新番組「スポーツ・データコロシアム」
先日NHK-BS1 で放送が始まった新番組「スポーツ・データコロシアム」をご覧になっただろうか?これが大変興味深い内容だったのである。
新番組「スポーツ データ・コロシアム」。大リーグで圧巻デビューを飾った前田健太投手。その全投球を、最先端のデータ技術で徹底解析する。変化球の切れ味、正確無比と言われるコントロールの秘密を解き明かす。サッカーは日本を代表する司令塔、ガンバ大阪の遠藤保仁選手と横浜F・マリノスの中村俊輔選手を特集。タイプの違う二人のプレーをデータ解析。ロングインタビューも交え、二人のプレーのすごさに迫る!
野球のデータ分析
この新番組「データ・コロシアム」の初回放送が焦点を当てたのは、人気スポーツの王道である野球とサッカーである。野球では前田健太のピッチングに注目し、精度抜群の投球術の秘密に迫る。データもこれまでのような数値だけを扱うのではなく、わずか数センチずらず絶妙のピッチングの軌跡を追いかけ、ビジュアル・データとして提示する。それはまるで、野球のデータ分析そのものの進化を見ているようであり、じつに興味深かった。

さて、そんな野球とデータの相性がよいのはご存知の通りだ。投手が投げる一球、打者の一打席、野手のワンプレイと、選手ひとりひとりのアクションを定義しやすい野球は、だからこそデータ分析にぴったりなのである。それを実にうまく活用したのが、映画化もされた名著『マネー・ボール』で描かれている1990年代末のオークランド・アスレチックスであり、より最近ではピッツバーグ・パイレーツの復活を追いかけた「ビッグデータ・ベースボール」である。
メジャーリーグで発展したセイバーメトリクスの手法だが、ここ数年で次第に日本プロ野球にも普及してきており、そのまさに中心にいるのが分析会社のデータスタジアムである。このように、ここで紹介した3冊はいずれも大変興味深く読める野球のデータ分析書としてぜひともおすすめしたい内容だ。
サッカーのデータ分析
「スポーツデータ・コロシアム」でもう一つ特集していたのがサッカーの司令塔の動きである。ガンバ大阪の遠藤保仁と横浜F・マリノスの中村俊輔といえば、日本を代表する司令塔であることに異論のある人はいないだろう。そんな彼らはどんな特徴をもった選手なのか?それを試合中の動きから読み解こうというのが、この初回放送での視点だったのである。とくに、ガンバとマリノスとの試合から、お互いがお互いをどう認識し、それをどうプレイに反映させているのか等々、じつに面白い分析と解説だった。

そんなサッカーは長らくデータとは無縁の世界にあった。それはサッカーの流れるようなパス回しや、フィールドを縦横無尽に走り回るプレイ、そして高度のあるサイドチェンジからスピードのある(または抑えた)シュートまで、その3次元的でダイナミックなアクションを定義することが難しかったためである。
野球と異なり連続的なプレイが魅力のサッカーは、だからこそデータ革命が始まるのが遅かった。それが今では米国メジャーリーグ式のデータマネジメントを採り入れる動きが盛んであり、それは以前に次のように書いてきた通りである。
- 英国プレミア・リーグと、リバプールのData-driven football
 - ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕
 - 欧州サッカー「データ革命」|スポーツを科学する最前線ドイツからの現地レポート
 
そして、これも「サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊」でも紹介したが、もしもサッカーにおけるデータ活用に関心があるのなら、次の3冊には絶対に目を通しておいて欲しいところだ。何しろサッカーのデータ革命はいままさに進行中のアツいトピックなのだから、ぜひ今からでも大注目して頂きたい。
その他スポーツのデータ分析
もちろんスポーツのデータ分析は、野球やサッカーにとどまらない。「スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析」でも紹介したように、いまやテニスにゴルフにバレーボールにて、数多くの監督そして選手が、データとにらめっこしながら戦略を練っているのである。じつにおもしろい時代になったものだと思う。

その中でもとくに興味深く読んだのが以下の2冊で描かれるゴルフとバレーボールの世界だ。ゴルフの世界にはいくつもの格言があるが果たしてそれはデータから実証できるものなのか?そんな疑問を持ったコロンビア大学ビジネススクールの教授が一般向けに書き下ろしたのがこの『ゴルフデータ革命』である。類書『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』はシカゴ大学ビジネススクール教授が著したものであるだけに、つくづくファイナンス理論の研究者はデータ好きなんだろうね。
もう一冊の『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』も大変におもしろい。全日本チームにデータ・アナリストが常勤し毎試合に帯同しているなんてご存知だっただろうか?それが本書の著者・渡辺啓太なのである。なんと、そもそもこうやってデータを集めているのかという地道な努力が分かる好著として本書も是非オススメしたい一冊だ。というように、NHKの新番組「スポーツ データ・コロシアム」を契機に、各スポーツ界で進むデータ革命の息吹を体感し、そしてその魅力を実感する人が今後どんどん増えていくことを期待したい。この分野がいまものすごく面白い。
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