*

英国プレミア・リーグと、リバプールのData-driven football

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 スポーツ, データ

今シーズンの英国サッカー「プレミア・リーグ」が、マンチェスター・シティの優勝で幕を閉じた。それを不思議がる人はもういないほどに、シティは変わり今や世界有数のリッチなクラブとなった。以前に「フットボールの経営学:欧州サッカー・マネーリーグ2014」で紹介したように、2014年度の収入総額では世界第6位という規模である。

 

liverpool football clubphoto credit: pat_makhoul via photopin cc

 

そんな今年のプレミア・リーグに関して、Economist の記事 “The booty-full game: In football, managers matter. But not as much as money does”。今シーズン優勝者のマンチェスター・シティと、僅かの差で惜しくも2位となったリバプールの間には、以下の図にも示されているように、チーム資金の使い方で大きな差がある。

 

City are the richest club in the league (they are owned by a Emirati billionaire). This affords them the best players, and they lavish the greatest amounts on pay, spending £330m ($550m) last year. Liverpool, who valiantly fought City to the wire, spent £100m less on remunerating their team.

 

money and performance in football

 

サッカーチーム運営にとって、いい選手を集めること、そしてそのために大金を投じることは今に始まったことではない。しかしながら、それだけの投資がリターンに見合っているかというのは、昔から議論されてきたことである。その観点で、今シーズン最も注目を集めたのは、マンチェスター・シティではなく、むしろ2位の成績を残したリバプールの方だろう。あれだけの資金差がありながら、サッカーの最終成績では僅差に詰め寄った。つまりそれだけ効率のよいマネジメントをしているということであり、いい選手を安く獲得しているということなのだ。米国野球大リーグを舞台にした名作『マネーボール』の、まさにサッカー版なのである。

 

New York Times では、”The Premier League Standings if Only Goals by English Players Counted” という記事の中で、イギリス人選手のみに限定したゴール数をランキングしており、とても興味深い。話がそれるが、こういうのを英国紙ではなく米国紙が話題にするのはちょっと珍しい気がする。下図、まずはマンチェスター・シティのゴール数。海外のスター選手を集めたチーム作りをしているため、イギリス人選手の活躍の場は少なく、必然的に “English goals only”  は少ないという結果だ。

 

ManchesterCity_outside

 

 

それに対してリバプールは、イギリス人選手を中心に据えたチーム作りをしており、その結果 “English goals only” のランキングでは第1位となる。

 

Liverpool_inside

 

liverpool gerrardphoto credit: Nigel Wilson via photopin cc

 

以前に書いたように、米国でも日本でも野球の世界ではデータの活用が一気に進んだ。その舞台裏を描いたのが『マネーボール』であり、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス』シリーズである。一方で、野球に比べるとデータ活用が遅れていたサッカー。しかしそこにいま、データで考えるサッカーという新しい潮流が生まれつつあるのだ。

  1. フットボールの統計学
  2. リバプールと Data-driven football
  3. マンチェスター・シティが公開した全データ:新たな時代の幕開け

 

その魁となったのが英国プレミア・リーグのリバプールなのだが、チーム運営にデータサイエンティストを招き、データ活用を進めてから数年を経て、ようやく今シーズンのリーグ第2位という成果につながったのである。即効で効果がでるような方策ではもちろんない。

 

しかし過去数年の経験を蓄積したいま、来シーズンのリバプールはもっと強くなるのではないだろうか。もちろんただ強いだけではない。市場で過小評価されている選手を集め、極めて効率のよい経営をする、それがマネーボールのサッカー版だ。これからも益々、リバプールから目が離せない。

 

またより一般的に、サッカーとデータという組み合わせでは、以下の2冊がおすすめ。経済学者がスポーツを面白おかしく、でも極めて真面目に研究した内容である。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

箱根駅伝「幻の区間賞」と関東学連チーム出場の是非

来年もまた正月から箱根駅伝にくぎ付けとなってしまう、そんな人も多くいることだろう。二日間に渡るこれだ

記事を読む

スポーツ業界にデータ革命の波|NHK新番組「スポーツデータ・コロシアム」が面白い

NHK-BS 新番組「スポーツ・データコロシアム」 先日NHK-BS1 で放送が始まった新番組「ス

記事を読む

メジャーリーグ新時代|アストロズ優勝が示す鮮やか過ぎるデータ革命

先日 NHK-BS で放送された「アストロズ革命~MLBデータ新時代~」がめちゃくちゃ面白かったのだ

記事を読む

football studium

フットボールの経営学:欧州サッカー・マネーリーグ2014

以前「フットボール・マネーリーグ2013」で紹介した、"Deloitte Football Mone

記事を読む

欧州サッカー「データ革命」|スポーツを科学する最前線ドイツからの現地レポート

先日書いた「錦織圭の全豪オープンテニスをデータ観戦しながら応援しよう|IBMのSLAMTRACKER

記事を読む

リンクトインのデータに見る、アメリカの新卒採用と転職行動

雑誌WIREDの記事「アップルやグーグル、フェイスブックはどの大学の卒業生を採用しているのか」で紹介

記事を読む

puma

スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析

スポーツ界に広がるデータ革命 これまで何度か書いてきたように、スポーツとデータというのはとても相性

記事を読む

テニス・グランドスラム優勝回数ランキング

【追記】「難敵アンディ・マレーをフルセットで倒した錦織が準決勝進出|データで見る2016年全米オープ

記事を読む

データで考える|史上最高の男子テニスプレイヤーは誰だ?

今年の全豪オープンテニスはジョコビッチの優勝で幕を閉じた。錦織にはもう少し上まで行って欲しかったが、

記事を読む

岡崎所属のレスターシティ奇跡の優勝と、これからのサッカー・データ革命

プレミアリーグ大番狂わせのレスターシティ優勝 ご存知のように、今年の英国プレミアリーグでは、岡崎が

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た

ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式

今年の科研費採択者におすすめ|研究関連事務を劇的に効率化するクラウドサービス

さて、先日は今年度の科学研究費助成事業(科研費)の採択者が発表された。

日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日

いよいよこの書籍が文庫化されましたね。そう、2016年に出版され大きな

春になり大人になったら辞書を買おう|これがいま日本で最も売れている国語辞典だ

さて今年も4月になり、進級・入学・入社とおめでたいイベントが相次いだ。

ブラックホールを初めて写真撮影|いまこそ宇宙論がおもしろい

さて先日は、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したという記者会見

japanese dictionaries 1
卒業・進級・入学のお祝いに|今も昔も定番の国語辞書をプレゼント

いよいよ春も近い。それはすなわち、卒業シーズンを迎え、そして進級・入学

NHK「最後の講義」物理学者・村山斉を見逃すな

先日のNHK「最後の講義」みうらじゅんが圧倒的に面白かったのは既にお伝

NHK「最後の講義:みうらじゅんの幸福論」が面白すぎた

2/2(土)に放送されたNHK「最後の講義」に登場した、みうらじゅん。

PAGE TOP ↑