錦織圭の全豪オープンテニス準々決勝|対ジョコビッチ戦の敗戦をデータで振り返る
先日「錦織圭の全豪オープンテニスをデータ観戦しながら応援しよう|IBMのSLAMTRACKERが面白い」と書いたところだったが、ご存知のように錦織は残念ながら準々決勝のジョコビッチ戦で完敗となり、今年の全豪オープンを去ることとなった。
さてそれではこの試合も、IBMのSLAMTRACKERのデータをまずは見てみよう。下図に示されているのが試合概要のデータだ。試合を見ていた人ならお分かりだろうが、錦織はあまりにも多くのアンフォースと・エラーを記録してしまった。その数じつに54。ジョコビッチの27も決して少なくはないが、それの2倍のエラーをしては勝機を得られるはずもない。
しかし、結果としては錦織の完敗だったとはいえ、上のデータをよくよく見てみると、必ずしも全てでジョコビッチのパフォーマンスが上回っていたわけではないことがよく分かる。例えばエースの数も、ファーストサーブの確率も、ウィナーの数も、そして僅かとはいえネットでのポイント獲得率も錦織の方が上回っているのである。
それでも内容面では圧倒的にジョコビッチが上だったというのは、試合を見ていたなら誰しもすぐに実感できることだろう。その意味では、テニスというのはこうした単純なデータだけでは、選手のパフォーマンスを数値化することがまだまだ困難なスポーツなのかも知れない。
例えば、場面によって1ポイントの重みが全く異なってくることなど多々あるし、またここでそのショットを決めてきたか、というインパクも大きく変わってくるものだろう。具体的には、ジョコビッチが何度か決めてセカンド・サーブでのサービス・エース。あの場面、あのタイミングで、あの場所に、あのサーブかよ!というのは、相手を挫くには十分過ぎるほどのダメージを与えるものであり、それは単なる1ポイントと評価することは難しいだろう。もちろん、それがテニスの面白さであり、データ・テニスの今後の発展可能性でもあるのだが。
そうしたデータ・テニスのとくに試合予測の困難さを裏付けるのもまた、このIBMのSLAMTRACKERならではないだろうか。今回の錦織対ジョコビッチ戦において、それぞれの選手が勝つためのキー要因を3つずつ挙げ、それがどれだけ達成されたかを示しているのが以下の図である。
ご覧のように、これだけを見ると錦織もよく検討しており、うまくすれば買っていたのではないかと思わせそうだが、試合内容はこの予測とは全く異なる完敗だったわけである。というように、テニスの試合を、そして各選手のパフォーマンスをどのように数値化するか、そしてそれをもとにどう試合結果を予想するか、それはこれからの大きな課題として聳えており、だからこそ多くのデータ・サイエンティストがこぞって参戦する、テニス場外の熱い戦いと言えるのではないだろうか。ぜひ今後ともこのテニスにおける「データ革命」に注目していきたい。
参考
Amazon Campaign
関連記事
-
メジャーリーグ新時代|アストロズ優勝が示す鮮やか過ぎるデータ革命
先日 NHK-BS で放送された「アストロズ革命~MLBデータ新時代~」がめちゃくちゃ面白かったのだ
-
ゾクゾクするほどコワい人間のココロ|「怖い絵展」にもう行きましたか?
アートファン待望の「怖い絵展」が、いよいよ上野の森美術館で始まった。既にご覧になった方もいるだろうが
-
今年も箱根駅伝の季節がやってきた
さて、今年もまた箱根駅伝の季節がやってきた。毎回手に汗握るドラマを見せてくれるこの大学スポーツは、始
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2016年版
さて今年もこのシーズンがやってきましたね。ニューヨーク・タイムズ紙が発表する「今年絶対に行きたい世界
-
マイクロソフト製ワイヤレス・キーボード Sculpt Ergonomic がスゴイ:手首が疲れないおすすめのデザイン
前回「ScanSnapがスゴイ」で書いたように、僕が最近購入した研究室アイテムのうち、ベストは富士通
-
2023年ニューヨークタイムズ紙が選ぶ世界で行くべき52ヶ所
毎年恒例、ニューヨークタイムズ紙が選ぶ、今年訪れたい世界の都市52ヶ所。2023年のリストはこちらの
-
今年からは確定申告にクラウド会計を導入しよう|面倒な手続きも超簡単に
さて、今年もまた確定申告の時期がやってきましたね。大学教員も含めたわれわれサラリーマンには無縁の手続
-
全仏オープンテニス2019|グランドスラム初制覇を目指す錦織圭の戦い
錦織圭、昨日のベスト16の試合では、雨天順延2日間に渡るフルセットの末に地元フランスのペールを破り、
-
2020年全豪オープンテニス|ジョコビッチが逆転の粘り勝ちで連続優勝
実にシビレル試合だった。今年の全豪オープンテニス決勝戦である。ジョコビッチの相手は、若手実力派のドミ
-
フェイスブックのパーソナルデータが明らかにする、米国スポーツチームのファン境界線はココだ。
これまで何度か書いてきたが、フェイスブックのデータサイエンスチームというのは、いつも興味深いデータを