グランドスラム初優勝を目指す錦織圭のテニスをデータ観戦しよう
さあ、いよいよ注目の一戦が始まるぞ。2017年の全豪オープンテニス4回戦で、錦織圭がロジャー・フェデラーと対戦する大一番。グランドスラム初優勝を目指す錦織にとって必ず倒さなくてはならない相手フェデラーは、幼い頃からのあこがれの存在でもある。しかし今や世界ランキングでは錦織の方が上をいく。フェデラーを倒し、世代交代をはっきりとさせ、そして彼に引退を決意させるくらいの心づもりで戦うのではないだろうか。それくらい目が離せない大勝負なのである。
さて、そんな名勝負の予感がするこの一戦をより面白く観戦するためのツールが、IBM が開発したデータ分析ソフトウェア SlamTracker なのである。以前に次のようにおすすめしたものでもあり、既に利用している人も多いことだろう。
- グランドスラム初優勝を目指す錦織圭の全仏オープンテニスを、SlamTracker でデータ分析しながら応援しよう
- 難敵アンディ・マレーをフルセットで倒した錦織が準決勝進出|データで見る全米オープンテニス
これは本当にすぐれもののツールなので、これからはテレビで試合観戦しながら、手元の iPad でデータをそのつど確認する、という楽しみ方がより広まっていくことだろう。さてそれでは、この SlamTracker を使って、これまでの錦織とフェデラーの勝ち上がり方を振り返ってみよう。まずは以下の一覧に、両者の3回戦までの成績がまとめられているので、ざっとご覧頂きたい。
この数字だけを見ても、フェデラーの好調さがうかがえる。例えば、初戦でフルセットにもつれこんだ錦織が、これまで合計108ゲームを戦ってきたのに対し、フェデラーはそれより10%少ない99ゲームで勝ち上がってきた。年齢からくる衰えをカバーするかのような、体力を温存する理想的なゲーム運びができていることを裏付けている。
それよりも注目すべきなのは、ウィナーの本数だ。錦織よりも10%少ないゲーム数にも関わらず、ウィナーは錦織よりも10%多いのだ。さらにエースの数は、錦織の18に対し44と圧倒しており、これまでのフェデラーの戦いぶりを観戦した人なら分かるように、まさに絶好調といった様子なのである。それが顕著だったのが、フェデラーの3回戦、第10シードのベルディハをたった1時間半で破った一戦だろう。以下のようにスポーツ各局各誌が絶賛したように、その圧倒的に美しい強さは、まさにフェデラーの全盛期を髣髴させるものだったのである。
米放送局「ESPN」電子版は「往年のフェデラーが戻ってきた、そして以前よりも良化した」と、フェデラーが見せた圧巻の戦いぶりを称賛。ベルディハ戦で見せたハーフボレーやバックハンドを「クラシカル」と表現し、「昔ながらの、猫のような素早さだった」と膝の手術から復活した35歳のプレーを称えている。
そんな完全復活したフェデラーに対し、錦織にとっては何が武器となるのだろうか?上の一覧表を見る限り、すぐには見当たらない。何しろ数字が上回っているように見える指標も、単純に錦織の方が戦ってきたゲーム数が多いことによるものだったりするのだから。そんななかにあっても、ファースト・サーブの確率と、リターンゲームを取った本数は、割合からみても錦織がフェデラーを上回っている。
実際にマイケル・チャンコーチも、対フェデラー戦を前に「まずはいい第1サーブを入れること」と語っており、そのサーブの出来が注目される。加えて、チャンコーチが「圭の特長の1つはリターンのよさ。いいリターンからポイントを取ってブレイクにつなげたい」とコメントするように、錦織が得意とするリターンゲームの成否が勝負の行方を左右することが予想される。そしてもう一つ(もしくは最大)の見どころとして、フェデラーの強烈な片手バックハンドと、錦織の負けず劣らず正確な両手バックハンドのラリーからも目が離せない。いずれにしろ両者にとって今後のキャリアを左右する大一番となることは間違いない。絶対に見逃せない一戦が、いま始まる。
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