*

プロフェッショナルのコンテナ物語

公開日: : 最終更新日:2015/02/27 オススメ書籍, ビジネス・経営者

昨晩ひさしぶりにNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀 』を見た。「港のエース、ガンマンの絆」と題された、横浜港のクレーン運転士の物語だった。

日本の物流を支える港湾。その中でも横浜港南本牧ふ頭は、世界屈指の作業効率を誇る。港の作業員たちの尊敬を集めるのは、巨大ガントリークレーンの運転士・通称ガンマン。そのエースが上圷茂(47)だ。50メートルの高さから数十トンのコンテナを操り、正確に積み上げる速さは世界平均の1.5倍。驚異の効率を誇る。胸に秘め続けてきた1つの記憶。それを乗り越えるための葛藤を初めて明かした上圷。今年2月、歴史的な豪雪となったあの日に、港で繰り広げられた総力戦に密着!!

 

port containerphoto credit: williamcho via photopin cc

 

トレーラーによって続々と運び込まれるコンテナを、次々と処理していくそのスキルが、世界と比しても超効率的な日本の物流を支えている。しかも、貨物の積み降ろしにはセンチ単位の精度と秒単位の速度が求められている。「ガンマン」と称される所以だ。

 

しかし、この運転士は正確さや速さだけを求めて仕事をしているわけではない。その背景には、仕事中の事故で同僚を亡くしたという過去がある。だから彼は言う、早くて一人前、やさしくて一流だと。映像を見ていてもそう感じた、彼はコンテナを実に優しく扱っているのだ。

 

container boxesphoto credit: Thomas Hawk via photopin cc

 

この放送を見て思い出したのが、「ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』」でも紹介した、壮大なビジネスストーリー『コンテナ物語』(原題 “BOX”)だ。この本は、コンテナの発明すなわち「箱の規格化」が船舶貨物運賃を劇的に引き下げ、物流のグローバル化を加速させたことを活き活きと描いている。しかもそれが、一人の男が夢想したことに始まるのだから面白い。箱を制し、規格を統一し、海を跨いでビジネスを仕上げた、そういうとんでもなく大きな物語なのである。

 

そして、その物流を支えてるのが、もしくは物流の高度化を可能にしているのが、それこそただの「ハコ」なんかではなく、その箱を操る「港のガンマン」の技術であり優しさという文字通りのソフトなのだという思いを強くした。NHK「プロフェッショナル」では、これまでにも数々の職人を取り上げてきたが、日々の物流の縁の下の力持ち・港湾クレーン運転士というのは、普段表に出てこない職業であるだけに、とても興味深い着眼点だった。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

綻びゆくアメリカと繁栄から取り残された白人たち

2014年に翻訳出版された『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語』に今また注目が集まって

記事を読む

岡崎所属のレスターシティ奇跡の優勝と、これからのサッカー・データ革命

プレミアリーグ大番狂わせのレスターシティ優勝 ご存知のように、今年の英国プレミアリーグでは、岡崎が

記事を読む

誰も教えてくれない、科研費に採択されるコツを公開|研究費獲得に向けた戦略的視点

また今年も科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。今月から来月にかけては、日本にいる数多く

記事を読む

シンガポール建国50周年|エリート開発主義国家の光と影の200年

先日で建国50周年を迎えたシンガポール。Economist や、Wall Street Journa

記事を読む

クラフトビール業界ナンバーワン・ヤッホーブルーイング自慢のIPA「インドの青鬼」の苦みが最高に旨い

今年もまたビールが旨い季節がやって来た。もちろん、クラフトビール飲んでますよね?数年前から盛り上がり

記事を読む

サッカー日本代表W杯開幕戦:日本のサッカーを強くする25の視点

あと数時間で、日本対コートジボワール戦のキックオフ。おそらく今回も相当大勢の日本人が、このときばかり

記事を読む

ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』

ビル・ゲイツ氏が選ぶ「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」が昨年末何かと話題となったが、その中でイ

記事を読む

日本人の氏名はなぜこんなにも多種多様にして複雑怪奇なのか?

日本人はなぜにこんなにも自分の名前や家族のルーツに興味津々なのだろうか? NHKの番組だけ取り上げて

記事を読む

japanese dictionaries 1

学校で教えて欲しいおすすめ国語辞典の選び方・使い方・遊び方:複数の辞書を比較して使い分けよう

ベストセラーかつロングセラーの3冊の定番国語辞典 数多く存在する国語辞典の中から最初の一冊を選ぶな

記事を読む

欧州サッカー「データ革命」|スポーツを科学する最前線ドイツからの現地レポート

先日書いた「錦織圭の全豪オープンテニスをデータ観戦しながら応援しよう|IBMのSLAMTRACKER

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑