プロフェッショナルのコンテナ物語
昨晩ひさしぶりにNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀 』を見た。「港のエース、ガンマンの絆」と題された、横浜港のクレーン運転士の物語だった。
日本の物流を支える港湾。その中でも横浜港南本牧ふ頭は、世界屈指の作業効率を誇る。港の作業員たちの尊敬を集めるのは、巨大ガントリークレーンの運転士・通称ガンマン。そのエースが上圷茂(47)だ。50メートルの高さから数十トンのコンテナを操り、正確に積み上げる速さは世界平均の1.5倍。驚異の効率を誇る。胸に秘め続けてきた1つの記憶。それを乗り越えるための葛藤を初めて明かした上圷。今年2月、歴史的な豪雪となったあの日に、港で繰り広げられた総力戦に密着!!
photo credit: williamcho via photopin cc
トレーラーによって続々と運び込まれるコンテナを、次々と処理していくそのスキルが、世界と比しても超効率的な日本の物流を支えている。しかも、貨物の積み降ろしにはセンチ単位の精度と秒単位の速度が求められている。「ガンマン」と称される所以だ。
しかし、この運転士は正確さや速さだけを求めて仕事をしているわけではない。その背景には、仕事中の事故で同僚を亡くしたという過去がある。だから彼は言う、早くて一人前、やさしくて一流だと。映像を見ていてもそう感じた、彼はコンテナを実に優しく扱っているのだ。
photo credit: Thomas Hawk via photopin cc
この放送を見て思い出したのが、「ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』」でも紹介した、壮大なビジネスストーリー『コンテナ物語』(原題 “BOX”)だ。この本は、コンテナの発明すなわち「箱の規格化」が船舶貨物運賃を劇的に引き下げ、物流のグローバル化を加速させたことを活き活きと描いている。しかもそれが、一人の男が夢想したことに始まるのだから面白い。箱を制し、規格を統一し、海を跨いでビジネスを仕上げた、そういうとんでもなく大きな物語なのである。
そして、その物流を支えてるのが、もしくは物流の高度化を可能にしているのが、それこそただの「ハコ」なんかではなく、その箱を操る「港のガンマン」の技術であり優しさという文字通りのソフトなのだという思いを強くした。NHK「プロフェッショナル」では、これまでにも数々の職人を取り上げてきたが、日々の物流の縁の下の力持ち・港湾クレーン運転士というのは、普段表に出てこない職業であるだけに、とても興味深い着眼点だった。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た
ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式ツイッターに写真つきで投稿した
-
-
【おすすめ英語テキスト】重要単語を因数分解|語源から根こそぎ完璧に理解する
現在開催中のKindle本ストア 9周年キャンペーン。本日はこの中から最大級におすすめしたい、この英
-
-
『ヤバい統計学』とテーマパーク優先パスの価格付け
『ヤバい経済学』の大ヒット以来、『ヤバい社会学』、『ヤバい経営学』と続けてきたこのシリーズ。内容その
-
-
ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング
冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの
-
-
春の卒業・入学シーズンを前に国語辞典をしっかり選ぼう|やはりオススメの定番4冊
さていよいよ3月となり、入試の合格発表から卒業式・入学式の季節となった。素敵なサクラが咲くよう期待し
-
-
春になり大人になったら辞書を買おう|これがいま日本で最も売れている国語辞典だ
さて今年も4月になり、進級・入学・入社とおめでたいイベントが相次いだ。中学生になったら電車も大人運賃
-
-
絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い
「絶対に負けられない戦い」に直面しているのは、もちろんサッカー選手だけではない。監督やスタッフ等もそ
-
-
国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?
僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる「作者の意図は?」といった問い
-
-
ゴリラ研究者にして京都大学新総長・山極寿一『「サル化」する人間社会』が、もんのすごく面白かった
現在シーズン2が放送中のNHKスペシャル「ホットスポット」。先月放送された第一回の「謎の類人猿の王国
-
-
クラウドソーシングの衝撃:世界最大手Freelancer.comの上場と業界再編
「クラウドソーシング・サービスの使い方: 世界最大の Freelancer.com が早くて安くて素