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ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』

公開日: : 最終更新日:2014/02/24 オススメ書籍

ビル・ゲイツ氏が選ぶ「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」が昨年末何かと話題となったが、その中でイチオシされている本書『コンテナ物語』は確かに素晴らしく壮大な一冊。

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photo credit: Marcus Hansson via photopin cc

 

数年前に出版された本で、以前に紹介したとおり僕自身もとても面白く読んだビジネス・ノンフィクションである。
(参考:科学のモノサシ:度量衡の物語
(参考:荷物のイレモノ:コンテナ物語

 

さて、そんな本書であるが、だいたいコンテナなどという陽の当たらないアイテムが主役になるなんて思いもよらなかった。そういう意外性と同時に、世界的な物流の巨大さ、そこにビジネスチャンスを見る発想の大胆さ、そういうものがぎゅうぎゅうに詰まった第一級のノンフィクションなのである。それこそ「グローバル・スタンダード」という今では聞き飽きた言葉のまさに先駆けと言えるだろう。

 

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photo credit: dannybirchall via photopin cc

 

そんな「コンテナ革命」の衝撃は、コンテナ以前の世界を知っていなければ分からない。しかし、当時その大変化の真只中にいた松井証券社長・松井道夫の以下のインタビューからは、そのインパクトがいかに破壊的なものであったのか、現在でも十分過ぎるほどに伝わってくる。

(松井道夫)日本郵船に勤めていたときに、すさまじい自由化の洗礼を受けましたからね。海運はコンテナ船の登場で一変しました。これが登場するまで、海運は高等数学の世界でした。積荷は大きさや重量などすべて違うし、積み降ろし港も違うから、数学を駆使するのが腕の見せどころだった。ところがコンテナ船が登場し、そんな複雑な計算は不要になった。(中略)米国西海岸から日本への復航運賃はたちまち20分の1になったのです。

 

本書『コンテナ物語』は、箱を制し、規格を統一し、海を跨いで、ビジネスを仕上げた、そういう壮大な物語なのである。超おすすめの一冊。ビル・ゲイツ推薦のその他の書籍はまだ翻訳が出ていないものが多く、『コンテナ物語』以外で唯一邦訳があるのが、日本でもファンの多いジャレド・ダイヤモンドの最新作『昨日までの世界』。不朽の名作『銃・病原菌・鉄』と合わせて、人類の壮大な歴史をご堪能あれ。(参考:新著『昨日までの世界』のジャレド・ダイアモンドが薦めるこの一冊

 

 

 

もう一つ注目したいのが、ビル・ゲイツがやはりベスト書籍の一冊としてリストアップしている “Poor Numbers.” 先日の「ゲイツ財団と世界の貧困に関する3つの誤解」でも書いたように、ゲイツが並々ならぬ関心を持っているのが、開発途上国における各種データであり、昨年のゲイツ財団の年次書簡では、”Why Measurement Matters” と題して、明確な目標設定と正確な成果計測が必要不可欠と強調している。

 

しかし、そもそも開発途上国では、GDPのような基本データからしてきちんと取れていないのである。各種開発計画のすべての元となる基礎データが信頼できない場合どういう事態を招くのか、そしてそんな状況にどう対応すればよいのか、という一冊。今から読む。

 

One of the most urgent challenges in African economic development is to devise a strategy for improving statistical capacity. Reliable statistics, including estimates of economic growth rates and per-capita income, are basic to the operation of governments in developing countries and vital to nongovernmental organizations and other entities that provide financial aid to them. Rich countries and international financial institutions such as the World Bank allocate their development resources on the basis of such data. The paucity of accurate statistics is not merely a technical problem; it has a massive impact on the welfare of citizens in developing countries.

Where do these statistics originate? How accurate are they? Poor Numbers is the first analysis of the production and use of African economic development statistics. Morten Jerven’s research shows how the statistical capacities of sub-Saharan African economies have fallen into disarray. The numbers substantially misstate the actual state of affairs. As a result, scarce resources are misapplied. Development policy does not deliver the benefits expected. Policymakers’ attempts to improve the lot of the citizenry are frustrated. Donors have no accurate sense of the impact of the aid they supply. Jerven’s findings from sub-Saharan Africa have far-reaching implications for aid and development policy. As Jerven notes, the current catchphrase in the development community is “evidence-based policy,” and scholars are applying increasingly sophisticated econometric methods-but no statistical techniques can substitute for partial and unreliable data.

 

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