心を打つ名言、心を挫く駄言|絶版を目指した出版「駄言辞典」がおもしろい
今年出版された「駄言辞典」をご存知ですか?こんな本、知らなくてよいのかも知れない。なぜなら、最初から絶版を目指して出版されたという、極めて稀有な書籍なのだから。そもそも「駄言」とは何か?それは思い込みによる発言で、とくに性別に基づくものが多い。相手の能力や個性を考えないステレオタイプな発言だが、言った当人には悪気がないことも多い。
そんな今もはびこる「駄言」に着目し、次のような視点でまとめたのが本書なのである。
「駄⾔」を⽣み出すのは、育ってきた環境や教育などによって植えつけられた古いステレオタイプです。どんな発⾔が「駄⾔」なのか。発⾔の何が問題なのか。世の中の常識や価値観が時代とともにどう変化しているのかを知ることで、無意識の思い込みをなくし、⼀⼈ひとりの⾃分らしさを尊重する社会に近づけていきたい。『#駄⾔辞典』が必要なくなり、絶版となる世の中にしたい。そんな思いを込めて、この本をつくりました。
それでは具体的には、どんな「駄言」があるのだろうか? 以下の具体的な実際の使用例をご覧頂きたい。
というように、「女なら~」「男だったら~」「母親なのに~」といった文脈で用いられることが多い、これらの駄言。今までまったく使用したことがないという人がどれだけいることだろうか。ついつい、うっかり、そんなフツーの感覚で、いまもフツーに使ってしまうこと、ありませんか? と痛切に問うてくるこの一冊、僕が手にしたときは既に三刷まで出版されるほど重版がかかり売れているようだ。それは、つまり、絶版に至るまでにははるか遠い道のりであり、われわれの世界から思い込みがなくなるのにどれほどの努力が必要なのかを皮肉にも物語っているのである。年末の反省と、年始の新たな思いを前に、ぜひ一度世の中のそして自らの駄言を振り返ってみてはどうだろうか。
「女性なのに仕事ができるね」「男なんだから黙って働けよ」「涙は女の武器だよな」「男だから多少厳しくしても大丈夫だろ」「ママなのに育休取らないの ? 」「男なのに育休取るの ? 」「就活は女性らしくスカートで」「良い奥さんになりそうだね」…聞いた、言われた、言ってしまった。無意識の思い込み。
心を打つ「名言」があるように、心をくじく「駄言」(だげん)もあります。駄言には無意識の思いこみ、特に、性別のステレオタイプによるものが多くみられます。これは、そんな滅びるべき駄言を集めた辞典です。
駄言を言う人が思いとどまり、駄言を言われた人が「それ駄言ですよ」と言える世の中にするために。すべての人が自分らしく生きられる世の中にするために。「絶版」を目指して、つくりました。
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