国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?
僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる「作者の意図は?」といった問いが。だいたい、なんでお前(問題作成者)が勝手に作者の気持ちを代弁してんねん!? という反発に始まり、設定された「正解」だって、それ作者に許可とったんかい!?という怒りも含め、もうなにからなにまで、相性が合わないんである、あの設問形式に。
長いことそう思っていたんだけど、ついに納得いく理由を見つけたよ!それがこの岸田奈美「難関中学の入試問題の原作者になったけど設問が解けない理由を考えて、編集者にたどり着いた」だ。受験界最難関の筑波大学附属駒場中学校 の入試で自分のエッセイが採用された岸田奈美が、その問いに答えたところ見事に全滅し、なぜこんなことが起きたのを探る実体験が生々しく響く。
しかし、いつものとおり軽妙洒脱に書かれた岸田奈美のこのエントリだが、ここには実に深い教訓が隠されていると思う。とくに今回の結論と言ってよい、「そうか。国語の問題で本当に問われているのは、作者の意図なんかではないのだ。編集者の視点だ。」というメッセージは、こうした国語の問いにまさに向き合う受験生たちこそが知っておくべきことであり、恐らくはほとんどが知らない事実なのではないだろうか。だって、そんなん、僕が受験生だったあの昔に教えて欲しかったわ~、というものなのだから。
いずれにしろ、相変わらず岸田奈美の文章はおもしろい。明るく軽くユーモアに溢れ、それでいて真面目な話題や重たいテーマも自由自在に扱える。さらには、こんなにも気持ちの良い(ときどきライトな大阪弁が入る)文章というのもなかなかないように思う。前にもおすすめしたけど、改めて声を大にして言いたい、僕は岸田奈美の奔放でヤンチャで愛情に満ちた文章が大好きなんだよ!
Amazon Campaign

関連記事
-
-
英国一家、最後に日本を食べる&お正月スペシャル
コアな人気を博していたNHK深夜アニメ「英国一家、日本を食べる」。ベストセラーとなった原作も素晴らし
-
-
大人になったら国語辞典|ことし成人式を迎える人への最高の贈り物
コロナ感染の再拡大による、全国で成人式の中止や延期が発表されるなど、大変厳しい新年を迎えている。本来
-
-
超ヤバい経済学者のゼロベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる
『ヤバい経済学』が世界中で大ベストセラーとなったばかりか、その続編『超ヤバい経済学』もヒットさせた売
-
-
寝苦しい今夜も嫁を口説こうか|珠玉の芸人エッセイ3冊
以前にも何度かおすすめしてきたように、お笑い芸人が書くエッセイには、なかなかに読ませる面白いものが多
-
-
ゲーマーとお金|さらなる有望産業 eスポーツビジネス
ご存知のとおり今回の東京五輪からは、スケートボードや、サーフィン、そしてスポーツクライミングといった
-
-
西水美恵子著『国をつくるという仕事』が称賛する、ブータン国王のリーダーシップ
ブータン訪問記の続き。 ちょっとブータンまで行ってきた。 ブータンではみんな王室と国王と
-
-
ワールドカップで大番狂わせを狙え|サッカー監督の世界級チームマネジメントの極意
2022年という年は、やはりサッカー・ワールドカップでの日本代表の活躍が強烈な印象として残っている人
-
-
NHK「浦沢直樹の漫勉」がおもしろい|シーズン1東村アキコ編
NHKでこの秋放送されていた「浦沢直樹の漫勉」という番組をご覧になっただろうか?これがものすごく面白
-
-
できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで
以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20
-
-
今年度から科研費の締切が早まる|公募スケジュールの前倒しに注意
現在、科学研究費助成事業(科研費)の主な種目については、前年の9月に公募を開始し、翌年4月1日付けで