*

Kindle電子書籍で手軽に読む、勝負師たちの闘う頭脳と揺れない心

公開日: : 最終更新日:2016/07/13 Kindle, オススメ書籍

Amazon Kindle で電子書籍を出版している数多くの出版社の中でも、KADOKAWA は最も熱心な一社と言えるだろう。そのKADOKAWAが得意とするのが「勝負」本であり、これは同社出版書籍の一つの強みとなっている。具体的には以下のような本たちである。

 

最強名人・羽生善治の将棋論

なんといっても、まずは現代どころか史上最強の棋士・羽生善治によるこの二冊の名著。『決断力』と『大局観』。そんな名作もうとっくに読んでいるよ、という方にさらにオススメしたいのが、「闘う頭脳|将棋棋士・羽生善治VSチェス棋士ガルリ・カスパロフ」の中で紹介した『羽生善治 闘う頭脳』だ。これは羽生自身がこれまで語った自分、多数の評者がこれまで語った羽生を一冊にまとめたものとして、若き棋士・羽生善治の誕生と躍進、そして彼の登場によって将棋界そのものが一新されていった様を時系列で解説した好著。ぜひとも合わせて読んで欲しい。

 

 

その羽生善治の包囲網

KADOKAWAの素晴らしさは、その最強名人・羽生善治のみにフォーカスするのではなく、他の将棋棋士たちにも多くを語らせていることだろう。長い将棋の歴史の中で、中学生としてプロ棋士になったのは4人しか存在しない。羽生善治と、その前に加藤一二三と谷川浩司、そして羽生の後に渡辺明である。そんな4人が揃ってKADOKAWAで著書を出しているところに、同出版社の並々ならぬこだわりを感じるのである。その中でもとくに、加藤一二三はその「戦い続ける姿勢」を羽生が心底尊敬する一人であるからこそ、羽生の著書と合わせて読んで欲しい。

 

 

一方の谷川浩司は、若き羽生少年にとっての憧れの存在であり、また彼を倒して7大タイトル完全制覇を成し遂げたように、常に重要な局面において羽生と対峙してきた人物といえよう。また神戸出身の谷川が語る関西将棋の強さであるが、羽生との対比で忘れてはいけないのが夭逝した村山聖。関西の怪童として名を轟かせ、この先羽生と二人で将棋界を背負って立つと期待された村山だったが、幼い頃から患っていた腎臓病のため29歳という若さでなくなる。その村山の生き様と戦い様を記録した『聖の青春』も名作中の名作であり、ぜひとも読んで欲しい一冊。

 

 

そして羽生に続いて4人目の中学生プロ棋士となった渡辺明は、長いこと続いた「羽生世代」に世代交代を迫る最右翼というべき存在。現役棋士の中でも最も研究熱心と言われる渡辺は、2008年の竜王戦では羽生を相手に3連敗後の4連勝という偉業を成し遂げる。この一戦が羽生にとっても大きな敗戦であり、そこから学ぶべきものが多々あったことは、羽生自身が上記の著書『大局観』の中でも述懐している。また、「永世竜王・渡辺明の『勝負心』と、あきらめたらそこで試合終了だよ」の中でも詳しく紹介したように、渡辺自身も著書『勝負心』の中で、この竜王戦の激闘と、渡辺にとっての羽生という存在について思いの丈を語り尽くしているので、ぜひこれも合わせて読んで欲しいところだ。

 

その他、渡辺はコンピュータ将棋にも熱心に関わってきたし、また米長邦雄は今や全国的なイベントとなった電王戦の第一回に登場し、そして敗れたことでも名前を残した。しかしそれは決して汚名などではなく、日本将棋連盟会長として最後の仕事であり、そして将棋の新たな時代を開くもの、さらには新しい将棋ファンを呼び込む絶妙の一手として記録され記憶されるべきものであろう。米長自身の手による敗戦記『われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る』も素晴らしい傑作だ。

 

 

最強雀士・桜井章一の勝負心

ここまでこれだけ将棋について語ってきて、最後の最後で申し訳ないのだが、僕が個人的に一番気になって買ってしまったのが、実は雀士・桜井章一の次の二冊。まあ、将棋本は既に読んでいたという背景もあるのだが、初めてこの「雀鬼」桜井の著書を読んでみようと思ったのは、他ならぬ羽生善治自身が、桜井の勝負に対する考え方に大きな興味を持っていると知ったから。それは上記の『羽生善治 闘う頭脳』を読んで初めて知ったことであり、羽生がそこまで言うならと思ったのが、僕にとって初めてこの桜井の本を読もうと思ったきっかけだ。将棋と麻雀で違うことと相通づること、そんな相違を確かめるように今から読んでみたいと思う。

 

 

というように、今回は勝負師たちの勝負本に絞って紹介したみた。いずれも超おすすめの一冊です。

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

Kindle電子書籍で学ぶ、日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術

ドクター・ヴァンスの『日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術』がセール中。これまで僕も何度か書

記事を読む

【おすすめ英語テキスト】重要単語を因数分解|語源から根こそぎ完璧に理解する

現在開催中のKindle本ストア 9周年キャンペーン。本日はこの中から最大級におすすめしたい、この英

記事を読む

日本人の氏名はなぜこんなにも多種多様にして複雑怪奇なのか?

日本人はなぜにこんなにも自分の名前や家族のルーツに興味津々なのだろうか? NHKの番組だけ取り上げて

記事を読む

売れっ子プロデューサー川村元気の本気の「仕事。」論

川村元気。この名前をどこで聞いたか覚えていますか?大ヒット映画『電車男』のプロデューサーとして?ベス

記事を読む

アメリカで最もお世話になったあの老夫婦がこの夏日本にやって来る

僕が米国留学で一番お世話になったのは、ひょっとすると大学院の指導教授ではなく、むしろアカデミックとは

記事を読む

今年のクリスマスもまたアメリカ現代社会の象徴「メガチャーチ」を思い出す

今年もいよいよクリスマス。そしてこの時期、毎年のように思い出すのがアメリカのメガチャーチである。「現

記事を読む

「ヘンな論文」を書き続ける動機と勇気

高学歴の芸人と言えば? という問いに、ロザンの宇治原と応えるのではあまりにもフツー過ぎる。もう少しツ

記事を読む

できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで

以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20

記事を読む

歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識

現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世には二種類の男(自分かそれ以外)

記事を読む

【TEDトーク】国語辞典のすすめ:辞書編纂の面白さは、英語も日本語も同じ

先日のNHK-Eテレ「スーパープレゼンテーション」に、辞書編纂者のエリン・マッキーンが登場。そのトー

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑