*

町山智浩の『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』と、ハズレのない現代米国社会批評シリーズ

公開日: : 最終更新日:2016/11/02 アメリカ, オススメ書籍

「教科書に載っていないし、知ってても全く偉くもないUSA語録」でも紹介したように、町山智浩のエッセイは大変に面白い。あまりにも読ませるものだから、最近の僕なぞは、本エッセイが連載されている「週刊文春」を見かけたら思わずこの部分だけ読んじゃうもんね。そんな週刊誌なんて今までぜんぜん読んだこともなかったというのに。町山のアメリカ社会を観察する視点はそれくらい鋭く可笑しいのである。イチオシです。

 

 

さて、この2冊で思わず町山ワールドにハマっちゃった、という人に次にお勧めしたいのがこの一冊『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』だ。

この本は15年間アメリカに暮らした私が「スゴい!」「カッコいい!」と感動したアメリカ女性たち55人について書いたエッセイ集です。ただ、ヒラリー・クリントンとかレディ・ガガとか、日本でも既によく知られている女性たちよりも、「もっと日本の女性にも知って欲しい」と思った女性たちを多めにしました。 また、最初から恵まれている人よりも、多くの障害を乗り越えた人を多く取り上げました。女性というだけでなく、人種、民族、貧困、身体障害、親によって絶望的に未来を阻まれたが、 逆にそれによって誰よりも強くなった人々です。

 

本書ではある程度は名の知られた女性から、それこそ全く無名の市井の一人まで、様々なバックグラウンドの女性たちが紹介されていく。「下ネタもいける、アメリカの黒柳徹子」とか「全盛期の勝間和代とみのもんたを足してパワーアップさせたような、ライフスタイルの教祖」といった、町山独特の形容が楽しめると同時に、「日系女性といえば礼儀正しくて大人しくて……というステレオタイプを徹底的に破壊したのが彼女のいちばんの功績」といった町山ならではの評価に思わずはっとする。その一つ一つが実に興味深いのだ。

 

町山が映画評論家だからこそ、テレビや映画関係者を数多く取り上げているのは確かだが、僕が「アンジェリーナ・ジョリーと乳がん予防とリスク観」で書いたこととは全く異なった見方を披露していたりと、大いに勉強になる。個人的にとくに興味を持って読んだのが、失業中の元教師が転じて名インタビュアーとなったテリー・グロース、大家も容赦なくぶった切る超辛口書評価ミチコ・カクタニ、未婚の母からハーバード出の政治家となったウェンディ・ディヴィス、小学校乱射事件を食い止めた帳簿係アントワネット・タフといった人たちの物語だ。

 

あぁアメリカらしいなと思う話から、あぁそんなアメリカもあるのかという驚きまで、様々な読み方ができる55人の人生譚だ。一つ一つのストーリーは短いが、そのどれもが味わい深い。Kindle書籍は今なら紙版の約半額とお値段も安く、ぜひこの機会にもう一度町山ワールドをご堪能あれ。

 

 

そして、さらに町山中毒になってしまった人たちには、ぜひその先まで爆進して欲しい。数々の町山作品の書名からも分かるように、町山のエッセイはどれもがアメリカ人の間抜けさを笑い、米国社会が含有する下品さを暴露し、それらの醜さをとことん指摘する。しかしそれは決して、日本がそして読者が賢く上品で美しいということでは全くない。そうではなく、気を緩めた瞬間や品のない話にこそ、その人や国の本性が如実に現れることを町山は知っており、それと同時に町山は、それを嗤っているお前こそが下品で下劣なんだよと読者に突きつけてくるのだ。そう、それこそが町山の狙いなのである。いや、知らないけどね。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

ワールドカップ決勝へ|ラグビー名将エディー・ジョーンズの勝負哲学

ラグビー・ワールドカップが面白い。まったくもってニワカなんですが、ルールが分かるとラグビーってこんな

記事を読む

2022年将棋賞金ランキング発表|藤井聡太5冠が1億円超で堂々の首位

将棋連盟から2022年の獲得賞金・対局料ベスト10が発表されましたね。毎年この時期の恒例であり、名

記事を読む

emotional highs and lows in facebook

『ヤバい予測学』とフェイスブックデータが示す感情の起伏

フェイスブックのデータ・サイエンティストたちは毎度興味深いデータを見せてくれる。それは「フェイスブッ

記事を読む

シンガポール建国50周年|エリート開発主義国家の光と影の200年

先日で建国50周年を迎えたシンガポール。Economist や、Wall Street Journa

記事を読む

科研費獲得の方法とコツ|戦略的な申請書執筆ノウハウ

さて、今年もまた科研費の応募締切が近づいてきた。採択された場合に翌年4月から経費使用ができるようにと

記事を読む

日本人の氏名はなぜこんなにも多種多様にして複雑怪奇なのか?

日本人はなぜにこんなにも自分の名前や家族のルーツに興味津々なのだろうか? NHKの番組だけ取り上げて

記事を読む

天才・奇才のおうち時間|日本に残る最後の秘境・東京藝術大学生の華麗な日常

NHKで放送中の「金曜日のソロたちへ」という番組をご存知だろうか? これは、「ひとり暮らし拝見バラエ

記事を読む

今年のクリスマスもまたアメリカ現代社会の象徴「メガチャーチ」を思い出す

今年もいよいよクリスマス。そしてこの時期、毎年のように思い出すのがアメリカのメガチャーチである。「現

記事を読む

闘う頭脳|将棋棋士・羽生善治VSチェス棋士ガルリ・カスパロフ

今年3月にNHKーETV特集で放送された「激突!東西の天才 将棋名人羽生善治 伝説のチェスチャンピオ

記事を読む

2020年の夏は2つのバンクシー展が開催

以前に「オークション落札のバンクシー作品をシュレッダーで刻むという現代アート」と紹介したように、常に

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑