聖の青春|天才・羽生善治を追いつめた伝説の怪童・村山聖
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最終更新日:2016/09/24
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日本の将棋史上最高のプロ棋士・羽生善治の名前を知らぬ人は少ないだろう。だが、「東の羽生、西の村山」と並び称された、関西棋士・村山聖を知らない人は数多い。しかも、彼はすでに29歳で亡くなっており、だからこそ彼の実力はいまなお圧倒的な伝説として語り継がれているのである。
その村山聖の人生を見事なまでに描き切ったノンフィクションが、『聖の青春』である。これは以前、「奨励会三段リーグ|天才少年棋士からプロへの最後の関門」の中で紹介した大崎善生による一冊である。前著『将棋の子』では、奨励会に入門するも志半ばでプロ棋士への道を諦めた少年たちの後を追ったが、本作『聖の青春』では、その念願のプロ棋士となり、名人まだあと一歩のところまで辿り着いたものの、重病により早逝した天才棋士を描いている。
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。
この『聖の青春』が映画化され、今秋上映されるのである。しかも、村山聖を松山ケンイチが、そして羽生善治を東出昌大が演じ得ており、それが驚くほどに似ているのである。
弱冠29歳の若さで亡くなった実在の天才棋士・村山聖[さとし](1969~1998)――。難病と闘いながら将棋に全てを懸けた壮絶な生きざまを描く、感動のノンフィクション小説が待望の映画化。2000年に発表、各方面から絶賛された『聖の青春』は、専門誌「将棋世界」編集長時代に生前の村山聖と交流のあった作家・大崎善生の渾身のデビュー作。100年に1人の天才と言われる羽生善治と「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、そして羽生ら今も将棋界で活躍する仲間たちとの友情を通して描く。将棋界のバイブル的な一冊とも呼ばれる、号泣必至の大傑作だ。幼少期より腎臓の難病・ネフローゼを患い、入退院を繰り返した村山聖。入院中のある日、聖少年は父が何気なく勧めた将棋に心を奪われる。その日から彼は、将棋の最高峰・名人位を獲る夢を抱いて、将棋の道をまっしぐらに突き進み始める。羽生善治ら同世代の天才棋士たちとの死闘、自分を見守る師匠、そして父と母の深い愛情。自らの命を削りながら将棋を指し、病と闘いながら全力で駆け抜けた壮絶な一生。映画は聖が短い余命を覚悟し、「どう死ぬか、どう生きるか」に対峙した最期の4年間の姿にフォーカスして描く。
個人的にもこの映画化は非常に楽しみだし、多くの人に見てもらいたいと思う。とくに原作『聖の青春』は本当に素晴らしい人間描写のノンフィクションとなっているので、将棋ファンはもちろんだが、今回初めて村山の名前を聞いたという人も、ぜひ読んで頂きたい。傑作です。
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