*

米国一番人気アメリカン・フットボールの経営学:戦力均衡のリーグ運営

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 アメリカ, スポーツ, データ

アメリカで最も人気のあるスポーツと言えば、アメフト(NFL)がナンバーワンなのである。野球(MLB)・バスケ(NBA)・アイスホッケー(NHL)を加えて、一般的に四大スポーツと呼ばれることも多いが、アメフトはそのなかでもぶっちぎりのトップ人気なのだ。

 

most popular sport in the U.S. is NFL

(USA Today)

 

そんなアメフトのナンバーワン・チームを選ぶのが、先日行われたスーパーボウルである。ペイトリオッツとシーホークスが対峙した今年の試合は、終盤までもつれる大熱戦となったこともあって、スーパーボウル史上最高の49.7%という視聴率を叩きだした。今年はいつも以上に多くのアメリカ人が、テレビの前のソファに陣取って、ピザやチキンウィングを片手に、バドワイザーかペプシをもう片手に、この試合に熱い声援を送ったことだろう。

 

そんな全米が固唾を呑んで注視する化物コンテンツだからこそ、毎年場外で話題になるのがそのテレビCMの高額ぶりだ。と同時に、どの企業のCMがインパクトがあったのか、そのクオリティの議論が盛んになされるのも毎年この時期の風物詩となっている。

 

そんなテレビ周りの話もおもしろいには面白いのだけれども、僕が個人的に興味をもっているのが、アメフト(NFL)のリーグ運営手法である。なにしろNFLは世界で最も成功したスポーツリーグと賞賛されているのだから。具体的には、「レベニューシェアリング」、「サラリーキャップ」、「ウェーバー制ドラフト」という3つのシステムを中心にすえ、各チームの戦力均衡を図っている。

 

photo credit:  via photopin (license)

photo credit: via photopin (license)

 

この戦力均衡というのがリーグ運営にとっては絶対に欠かせない考えとなる。つまり、チーム運営であればそのチームが勝つことを考えるだけでいい。しかし、多数のチームをまとめたリーグを運営するためには、どのチームにとっても勝つチャンスがあり、もっと言えばどのチームのファンにとっても応援する甲斐がある、そんなチームを揃えることが、リーグ繁栄の条件となってくるのだ。

 

だからNFLでは、例えば資金力豊富なチームが有力選手をかき集めないような仕組みが、そして新人獲得に対しても強豪チームが後回しとなるような仕掛けが用意されており、それによって各チームの戦力に差が付き過ぎないような配慮がされているのである。「世界で最も成功したスポーツビジネス:アメフトNFLとスーパーボウル」に詳しく書いたように、実に様々なシステムが用意され、その結果として極めて健全なリーグ運営となっているということだ。

 

翻って日本のスポーツ業界を振り返ってみれば、ちょっと前には野球のセ・パ両リーグを1リーグに統合するという話が急に持ち上がったり、サッカーJリーグではそのスケジュールが通年だったり前後期だったり安定しない。さらにはバスケットに至っては、2つのリーグがこれまで別々に運営されてきた結果、国際試合への出場停止というペナルティを受けている。そんなゴタゴタのないリーグ運営と、その結果としてのエキサイティングな試合をファンは待っているのである。その意味でも、今年のスーパーボウルとNFLのリーグ運営に学べることも多いと思うのである。個人的にはアメフトのルールと試合の面白さがまだよく分からんのだけれども。

 

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

world cup winner prediction

サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢

いよいよ開幕したサッカー・ワールドカップ。日本時間今朝の開幕戦ブラジル対クロアチアは、3-1のスコア

記事を読む

米国大統領選挙2020を前に|憲法でふりかえるアメリカ近現代史

コロナ禍もあって史上もっとも盛り上がらないと言われている今年のアメリカ大統領選挙だが、副大統領候補が

記事を読む

もう一度聞きたい、アメリカの大学卒業式スピーチ5選

アメリカの卒業式シーズンは5月だが、日本でいえば今がまさに大学卒業のピーク・シーズンである。だからこ

記事を読む

most popular sport in the U.S. is NFL

世界で最も成功したスポーツビジネス:アメフトNFLとスーパーボウル

米国で最も盛り上がるスポーツイベントと言えば、アメフトのスーパーボウル。個人的にはいまだにアメフトの

記事を読む

今年も箱根駅伝の季節がやってきた

さて、今年もまた箱根駅伝の季節がやってきた。毎回手に汗握るドラマを見せてくれるこの大学スポーツは、始

記事を読む

打倒青山学院|来年の箱根駅伝をもっと面白くするこの5冊

青山学院の5連覇がかかる来年の箱根駅伝、僕もまた正月の2日間テレビの前に釘づけとなってしまうことだろ

記事を読む

町山智浩『知ってても偉くないUSA語録』は秀逸な現代アメリカ社会批評

映画評論家の町山智浩をご存知だろうか?そして、彼の秀逸な現代アメリカ観察記をご存知だろうか?そんな週

記事を読む

メジャーリーグ新時代|アストロズ優勝が示す鮮やか過ぎるデータ革命

先日 NHK-BS で放送された「アストロズ革命~MLBデータ新時代~」がめちゃくちゃ面白かったのだ

記事を読む

お正月に見た映画『スラムダンク』にやっぱり涙と鼻水が止まらない

今年の正月には、あの伝説的人気漫画『スラムダンク』が映画化された『The First Slam Du

記事を読む

takoyaki

米国人一家と英国一家が美味しい日本を食べ尽くす

ちょっぴり巷で評判の『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』を読んでみたら、これが思いの外おもしろか

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑