サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢
いよいよ開幕したサッカー・ワールドカップ。日本時間今朝の開幕戦ブラジル対クロアチアは、3-1のスコアでブラジルの逆転勝ち。もちろん早朝から生中継見ましたよね?
さてさて、『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』でもお馴染みの統計家ネイト・シルバー等が運営する FiveThirtyEight では、いつもの通り、選挙戦やスポーツ試合と同じように、今回のワールドカップの優勝予想を行っている。開幕戦は88%の確率でブラジルの勝利と予測していただけに、ブラジル代表チームと同様にこちらもまずは上々の滑り出しといったところだろうか。
ちなみに、ここで用いられているSPI(Soccer Power Index)というのは、ネイト・シルバーが2010年に開発した指数であり、シルバー自身が “It’s Brazil’s World Cup to Lose” という直近の記事の中でも解説している。誰も疑っていないブラジルの一次リーグ首位突破を、95%と見込んでいる。
そして、このSPI指数を用いた最終的な優勝予想は、やはり圧倒的にブラジルでその確率は45.2%。その後にアルゼンチン、ドイツ、スペインが続いている。興味深いのは、下図のようにSPI予想と Online Sports Betting の Betfair の予想とを比べているところだ。
Betfair での予想一位もやはりブラジルであり、SPIほどではないが、優勝確率23.3%と出している。と同時に、その後に続く2位から4位までも、SPIと同じ順位予想となっている。ただ予想したタイミングからして、シルバーの予測がBetfair に影響を与えている、ということではないようであり、その他大勢も今回は意見が一致するところなのであろう。
ただ順位下位の方まで見てみると、SPIのアルゴリズムでは極めて低い確率が付けられているポルトガルやイタリアが、Betfair ではより高い確率(といっても低いのだが)となっているのも面白い。データで見れば可能性はほとんどないと考えられるこの2チームに対し、ファンがそれでも大きな期待を寄せていることが伺える。
また、Economist 誌では各社が発表しているそれぞれの優勝予想をまとめているが、これらをざっと見ても、大方の優勝予想はブラジル、2位はアルゼンチンと、これまたシルバーやBetfair と同じ結果になると見積もっているようだ。これだけ多くが同じような結果を予想するというのは、それだけ「固い」大会ということなのだろうが、もう少しチームが拮抗し、予想もばらけるような大会のほうが、試合を楽しむファンとしても、各方面の優勝予想を楽しむファンとしても、面白い大会と言えるのではないだろうか。
一方で、これだけ各方面で合致した予想を覆す結果が出るような場合には、それこそ大どんでん返しと言えるわけであり、そういう「世紀の奇跡」のようなことが起こるのかどうか、というのは、今回のような大会に特徴的な楽しみ方と言えるのかも知れない。そんな奇跡の快進撃が日本代表チームから生まれることを期待してみたい。
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