*

食肉偽装とWOWOW連続ドラマW『震える牛』のリアル

公開日: : 最終更新日:2015/04/18 オススメ番組・映画・ドラマ, ニュース

中国の工場で発生した期限切れ鶏肉の事件だが、これは別に、同工場もしくは同国の衛生管理技術の水準が低かったことだけが原因で起こったわけではないのかも知れない。なにしろ2007年、日本国内で一大ニュースとなったミートホープ事件(Wikipedia)は今も我々の記憶に新しい。そして、この事件をモデルにしたと考えられる『震える牛』(相場英雄)は、こうした食肉偽装が加工会社だけでなく、大手スーパーそして警察までを含めた構造的な問題として引き起こされているという、あまりにも深い業界の闇を描いたフィクションだ。

 

 

そして、この原作のドラマ化がまたすごいのである。食の安全を疑い、その結果として食品メーカーや外食産業を敵に回すような描写が連続するこのドラマは、CMスポンサー頼みの民放では決して製作できない類のものだろう。視聴料収入で経営するWOWOWだからこその作品であり、ここ数年同社の連続ドラマWシリーズはこうした挑戦的なテーマに取り組んでおり、非常にクオリティが高い。最近ではTBSと共同でのドラマ製作も手がけているが、あれもTBS側がWOWOWのノウハウを学んでいるという側面が強いように思う。

 

そんな「大人の社会派ドラマ」として圧倒的な存在感のあるWOWOWが、『震える牛』をドラマ化したのがつい昨年のこと。既にDVD化もされているが、放送当時、毎週毎週の放送を首を長くして待っていたのを鮮明に思い出す。僕がWOWOWに今も月々3,000円ほどを支払って加入しているのは、ひとえにこの連続ドラマWシリーズがあるからに他ならない。お金を払ってまで見たいドラマ、しかも次の回が気になって仕方がない、そんなドラマを最近見たことがあるだろうか?もしないと言うのならば、今こそWOWOWを試聴してみて欲しい。

WOWOW

 

 

 

さて、今回の中国の事件報道では、腐って緑色になった鶏肉を見て、もうチキンナゲットは食べられない、そう感じた人も多いだろう。であるならば、本作品で古田新太が演じる食肉配合と新商品開発にかける狂気を見れば、吹石一恵が演じるジャーナリストがファーストフード店やファミリーレストランの食事を見て吐き気をもよおすのを、我々も追体験せざるを得ない。

 

本作品は、食の安全性という耳に心地よい掛け声が、もはや存在しないほどに構造的に毀損されてしまっているのではないだろうか、という絶望的な現実を見せつけてくるフィクションなのである。中国だけのことではないし、鶏肉だけの話でもない。食肉そして食品全体の安全性を考え直す今こそ、見ておきたいドラマだ。いまWOWOWがおもしろい。その他にも「ドラマW」シリーズには大人のための本格的社会派ドラマが多数存在する。ぜひとも「これまでのおすすめ作品」にて、過去の名作ラインナップをご覧頂きたい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

2019年ノーベル経済学賞は開発経済学者3氏と貧困解消に向けた実験的手法に決定

2019年のノーベル経済学賞受賞者が発表された。受賞者は、マサチューセッツ工科大(MIT)のバナジー

記事を読む

NHK「浦沢直樹の漫勉」シーズン3いよいよスタート|漫画家たちの魂を込めた執筆

「浦沢直樹の漫勉」に新たなシーズンがやってきた なんと、あのNHKの番組「浦沢直樹の漫勉」が、新た

記事を読む

若き冒険家のアメリカ|植村直己『青春を山に賭けて』

NHK-BS で放送されている「ザ・プロファイラー|夢と野望の人生」をご覧になっているだろうか?以前

記事を読む

将棋竜王戦ランキング戦決勝|杉本八段と藤井七段の師弟対決が素晴らしかった

前回、「藤井聡太七段が先勝|現役最強棋士・渡辺棋聖とのタイトル戦」でも書いたように、いま将棋がむちゃ

記事を読む

稀代の絵師・伊藤若冲の作品群が日本に里帰り

ここ数年、日本美術がもの凄いブームと言ってよいほどの盛り上がりを見せているのはご存知の通りだ。そして

記事を読む

TSUTAYA運営の市立図書館に続き、今度は学習塾ノウハウを公教育に導入:いま話題の佐賀県武雄市に行ってきた

佐賀県武雄市がまた新しい取り組みを始めたようだ。 (NHKニュース)佐賀県武雄市は、来年の春から公

記事を読む

世界大学ランキング最新版発表|英国オックスフォード大学が初のトップに

"Oxford Tops List of World’s Best Universities" とい

記事を読む

ミャンマーの歴史と地政学|アジアの超大国・中国とインドをつなぐ十字路

ミャンマーがいま政治的に揺れている。日本との歴史的関係も長いこの国は、僕自身も何度か訪れたことがある

記事を読む

論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち

先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている

記事を読む

armani

サッカーW杯:絶対に負けられないファッションブランドの闘い

先日の「絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い」では、

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑