*

デロイト・フットボール・マネーリーグ最新版:欧州サッカーチームの経営学

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 スポーツ, データ

デロイトが最新のレポート “Football Money League 2015” を発表した。これは昨年もこの時期に「フットボールの経営学:欧州サッカー・マネーリーグ2014」で紹介したように、欧州サッカーチームの収入を総計および項目別に比較したもので、今どのチームがリッチなのか、そしてその収入源は何なのかが分かる、ユニークな視点からのチーム分析レポートなのである。

 

今年で18回目となる本レポートだが、毎年注目度は高く、この発表を元にした報道も既に多数なされている。例えば、Economist 紙では、“Football Wealth” と題して、最新の「リッチランキング」について紹介している。

 

Economist-money-league-2015

 

 

今年もナンバーワン・金持ちチームは、スペインのレアル・マドリードだ。その事自体には今さら驚くことはないかも知れない。なにしろ現在あれだけの選手を集められるチームは他には存在しないのだから。しかし、そんなレアルの1位が10年連続となったと聞いて驚いた。他にもリッチチームが多々あるなか、10年もの間トップを維持し続けるレアルのクラブ経営に改めて凄みを感じざるを得ない。

 

 

 

一方でGuardian 紙では、“Manchester United tipped to overtake Real Madrid at top of money league” という記事で、マンチェスター・ユナイテッドの躍進を報じている。そしてもう一つは、これがユナイテッドという1チームのことではなく、プレミアリーグ全体としての傾向であるということ。以下の図が示すように、リッチランキング上位20チームには、プレミアリーグのチームが8つと最多であるほか、上位40チームにまで広げて考えると、なんとプレミアの全チームがランクインしているのである。

 

Guardian-money-league-2015

 

 

そんなプレミアリーグ全体の底上げにつながった要因は、”Their growth was partly fuelled by their commercial strategy of selling regional sponsorship categories around the world but also by the Premier League’s broadcasting deals that bring in £5.5bn over three years.” と書かれているように、新たなテレビ放映権の契約である。

 

一方で凋落が止まらないのが日本人選手の本田や長友がいるイタリアのセリアAだ。上の図ではトップ20に現在何とか4チームを送り込んでいるが、2001年時点ではトップ10のうち5チームがセリアAだったことを考えると、その落ち込みは激しい。こうした比較から見えるのは、リーグそのものの運営の巧拙である。先日は「米国一番人気アメリカン・フットボールの経営学:戦力均衡のリーグ運営」の中で、アメリカのスポーツではアメフトが最も巧みにリーグ運営をしていることを紹介した。同じ視点でヨーロッパサッカーを眺めてみると、いま間違いなく経営上手なのはプレミアリーグということになるのだ。

 

そんなプレミアのチームを含め、上位各チームの詳細は以下のスライドから確認できる。


 

 

また、ちょっとサイズが大きいが、以下のインフォグラフィックも眺めているだけでおもしろい。デロイトのウェブサイトでは、詳細なレポート本体(PDF版)も公開しているので、さらに関心がある人はぜひご覧ください。

money-league-2015

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4戦を終えたばかりとはいえ現在負

記事を読む

グランドスラム初優勝を目指す錦織と大坂|データで観戦する全米オープンテニス

現在熱戦が繰り広げられている今年の全米オープンテニス、錦織圭と大坂なおみのそれぞれベスト8進出をかけ

記事を読む

us job map

年収は「住むところ」で決まる: The New Geography of Jobs

"How Professional Salaries Vary Around the Country

記事を読む

箱根駅伝・青山学院の圧勝で見せつけた原晋監督のマネジメント能力

2022年の箱根駅伝も面白かったですね! レース自体は青山学院の記録づくめの圧勝という形で終わったた

記事を読む

2020年全豪オープンテニス|ジョコビッチが逆転の粘り勝ちで連続優勝

実にシビレル試合だった。今年の全豪オープンテニス決勝戦である。ジョコビッチの相手は、若手実力派のドミ

記事を読む

今年も箱根駅伝の季節がやってきた

さて、今年もまた箱根駅伝の季節がやってきた。毎回手に汗握るドラマを見せてくれるこの大学スポーツは、始

記事を読む

東京オリンピック野球で導入された変則的決勝トーナメント

東京オリンピックの野球種目は、準々決勝でアメリカを倒し、準決勝で韓国を破った日本が、堂々の決勝進出を

記事を読む

ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング

冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの

記事を読む

fire department in New York

オープンガバメント:ニューヨーク市消防庁のオープンデータ戦略

ニューヨーク市の消防庁が、データを使って建物検査を効率的に行っているというウォール・ストリート記事。

記事を読む

ウィンブルドン決勝ジョコビッチの優勝をデータで振り返る

さて先日の「テニス・ウィンブルドン決勝|ビッグ・データを制するのは誰だ?」にも書いたように、僕は今年

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑