デロイト・フットボール・マネーリーグ最新版:欧州サッカーチームの経営学
デロイトが最新のレポート “Football Money League 2015” を発表した。これは昨年もこの時期に「フットボールの経営学:欧州サッカー・マネーリーグ2014」で紹介したように、欧州サッカーチームの収入を総計および項目別に比較したもので、今どのチームがリッチなのか、そしてその収入源は何なのかが分かる、ユニークな視点からのチーム分析レポートなのである。
今年で18回目となる本レポートだが、毎年注目度は高く、この発表を元にした報道も既に多数なされている。例えば、Economist 紙では、“Football Wealth” と題して、最新の「リッチランキング」について紹介している。

今年もナンバーワン・金持ちチームは、スペインのレアル・マドリードだ。その事自体には今さら驚くことはないかも知れない。なにしろ現在あれだけの選手を集められるチームは他には存在しないのだから。しかし、そんなレアルの1位が10年連続となったと聞いて驚いた。他にもリッチチームが多々あるなか、10年もの間トップを維持し続けるレアルのクラブ経営に改めて凄みを感じざるを得ない。
一方でGuardian 紙では、“Manchester United tipped to overtake Real Madrid at top of money league” という記事で、マンチェスター・ユナイテッドの躍進を報じている。そしてもう一つは、これがユナイテッドという1チームのことではなく、プレミアリーグ全体としての傾向であるということ。以下の図が示すように、リッチランキング上位20チームには、プレミアリーグのチームが8つと最多であるほか、上位40チームにまで広げて考えると、なんとプレミアの全チームがランクインしているのである。

そんなプレミアリーグ全体の底上げにつながった要因は、”Their growth was partly fuelled by their commercial strategy of selling regional sponsorship categories around the world but also by the Premier League’s broadcasting deals that bring in £5.5bn over three years.” と書かれているように、新たなテレビ放映権の契約である。
一方で凋落が止まらないのが日本人選手の本田や長友がいるイタリアのセリアAだ。上の図ではトップ20に現在何とか4チームを送り込んでいるが、2001年時点ではトップ10のうち5チームがセリアAだったことを考えると、その落ち込みは激しい。こうした比較から見えるのは、リーグそのものの運営の巧拙である。先日は「米国一番人気アメリカン・フットボールの経営学:戦力均衡のリーグ運営」の中で、アメリカのスポーツではアメフトが最も巧みにリーグ運営をしていることを紹介した。同じ視点でヨーロッパサッカーを眺めてみると、いま間違いなく経営上手なのはプレミアリーグということになるのだ。
そんなプレミアのチームを含め、上位各チームの詳細は以下のスライドから確認できる。
また、ちょっとサイズが大きいが、以下のインフォグラフィックも眺めているだけでおもしろい。デロイトのウェブサイトでは、詳細なレポート本体(PDF版)も公開しているので、さらに関心がある人はぜひご覧ください。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
年収は「住むところ」で決まる: The New Geography of Jobs
"How Professional Salaries Vary Around the Country
-
-
錦織圭のウィンブルドンテニス2019|好調を維持したままベスト8進出
錦織圭が今年もウィンブルドンでベストエイト進出を決めた。しかも、これまでの試合で失ったセットは一つの
-
-
データとマネジメントとストラテジー|ドイツ・サッカー復活の道のり
昨年のサッカー・ワールドカップ。開催国ブラジルを7-1という大差で沈め、決勝でも強豪アルゼンチンを倒
-
-
欧州サッカー・チャンピオンズリーグはここからが面白い|WOWOWの超おすすめ目玉コンテンツ
コロナ禍にあっても少しずつこれまで同様のスポーツ大会が開催されるようになってきた。先月のテニス全豪オ
-
-
オリンピック女子選手とチームが大活躍
昨日8/6金曜日のオリンピック生中継を見ていた人は、何度も涙がこぼれ落ちそうになったのではないだろう
-
-
海をわたって不可能を可能に|大谷翔平メジャーリーグMVP
大谷翔平、満場一致で最高栄誉のMVPを獲得。投打の二刀流で大活躍のシーズンを見せた大谷、ほんとに漫画
-
-
オープンガバメント:ニューヨーク市消防庁のオープンデータ戦略
ニューヨーク市の消防庁が、データを使って建物検査を効率的に行っているというウォール・ストリート記事。
-
-
サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢
いよいよ開幕したサッカー・ワールドカップ。日本時間今朝の開幕戦ブラジル対クロアチアは、3-1のスコア
-
-
正月の風物詩・箱根駅伝が今年もおもしろい
新年明けましておめでとうございます。新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、ステイホームの継続と静かな
-
-
The 2015 Daily chart Advent calendar by The Economist
Economist 誌が毎年行っている恒例の "Daily chart Advent calenda


