データとマネジメントとストラテジー|ドイツ・サッカー復活の道のり
公開日:
:
最終更新日:2016/07/11
スポーツ
昨年のサッカー・ワールドカップ。開催国ブラジルを7-1という大差で沈め、決勝でも強豪アルゼンチンを倒し、1990年イタリア大会以来じつに24年ぶり(当時は西ドイツ)の優勝トロフィーを持ち帰ったドイツ。その復活の背景には「ビッグ・データ」があり、ドイツ企業SAPが開発した Match Insights というデータ活用のシステムがあったというのは、以前に「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕」で書いた通りだ。
しかし、ドイツが今回ふたたび大国として結果を出すまでには、母国サッカーリーグと代表チーム運営で様々な改革がなされてきたというのが、以下の記事で書かれていることであり、とても興味深く読んだ。
- 日経新聞「パソコン監督たち、革新的戦術で独サッカー席巻」
- Economist “The making of a Fussballwunder”
上記記事にもあるように、データとPCを常に手元に置いておくのはもはや当たり前。それだけでなく、クラブチームにはアカデミー設立が要請され若手育成に力を入れてきたこと、過去の有名選手を代表監督に据えるのではなく無名でも監督能力が高いと考えられる人材を抜擢すること。その象徴が、そもそも指導者ライセンスを持っていなかったレーウを代表監督に招聘して達成した昨年のワールドカップ優勝である。
もちろんこうした改革の成果が出るまでには時間がかかり、ドイツの場合も10年を経てようやく高いレベルに再び立ち返ったところなのである。そうであるならば、まだその高みに立ったことがない日本は、そのレベルを目指すためにどのような大改革が必要なのか、という点でも参考になる論点の数々である。とくに代表監督に関しては、海外から招聘しては批判し解任するばかりではなく、どんな指導者を求め、そういう人物をどう探すか、そして将来の候補をどう養成していくのか検討が必要だろう。
以前に「サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊」でも紹介したように、現代サッカーにおいては、もはや精緻なデータのない試合戦術などは考えられない。しかし、国レベルでサッカーを強くしていくためには、何よりも母国リーグ強化のための総合的な仕組みが欠かせない。そういう全体の戦略とマネジメント、それを世界に強烈に印象づけたのが、2014年のワールドカップとドイツの優勝だったのではないだろうか。将来的には、この年を境に世界のサッカーが変わった、そう歴史に位置づけられるほどのインパクトを与えた大会だったのかも知れない。
Amazon Campaign
関連記事
-
アスリートとお金|有望産業としてのプロスポーツビジネス
いよいよ東京五輪が始まり、改めて注目されるのが今後のスポーツとお金の関係だ。とくにプロスポーツビジネ
-
欧州サッカー・マネーリーグ|今年も首位のバルセロナだけれども
毎年、この時期に楽しみなのが、「デロイトフットボールマネーリーグ」である。世界的な監査法人デロイトが
-
錦織圭と大坂なおみの全米オープンテニス2019
さて、いよいよ始まった今年の全米オープンテニス。錦織圭は、相手選手の途中棄権があったものの、初戦を無
-
錦織圭のウィンブルドンテニス2019|好調を維持したままベスト8進出
錦織圭が今年もウィンブルドンでベストエイト進出を決めた。しかも、これまでの試合で失ったセットは一つの
-
全仏オープンテニス2019|グランドスラム初制覇を目指す錦織圭の戦い
錦織圭、昨日のベスト16の試合では、雨天順延2日間に渡るフルセットの末に地元フランスのペールを破り、
-
サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢
いよいよ開幕したサッカー・ワールドカップ。日本時間今朝の開幕戦ブラジル対クロアチアは、3-1のスコア
-
箱根駅伝・青山学院の圧勝で見せつけた原晋監督のマネジメント能力
2022年の箱根駅伝も面白かったですね! レース自体は青山学院の記録づくめの圧勝という形で終わったた
-
錦織圭の死闘|全豪オープンテニスが面白い
今年の全豪オープンテニスがめちゃくちゃ盛り上がってますね。観ましたか、錦織の4回戦、5時間を超える壮
-
2023年第99回箱根駅伝・記憶に残るが記録に残らない激走|関東学連・新田颯の名勝負
今年の箱根駅伝は、駒沢大学の三冠達成にくわえ、古豪・中央大学の復活、そして東京国際大学ヴィンセントの
-
若き研究者フィギュアスケート町田樹のスポーツ文化論
2022年の冬季北京五輪の開幕も近づいてきた。ウィンタースポーツの代表例のひとつが、フィギュアスケー