*

Kindle電子書籍でエキサイティングに読もう、今あらためて宇宙論がおもしろい

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 Kindle, オススメ書籍

僕は大栗博司『重力とは何か』を2年ほど前に読み、「この宇宙論はおもしろいよ!」と書いたのだが、その気持は今も全く変わらない。本書の最終章で著者が次のように書くように、新しいアイデアと、それを突き詰める研究者が、いまの宇宙物理学最前線をとてもエキサイティングなものとしている。門外漢にもやさしく語りかけるように説明してくれる本書は、そんな世界を垣間見るのに最適な入門書となっているのだ。

科学とはアイデアの自由市場なのです。力強いアイデア、美しいアイデアには自然と多くの研究者が集まり、そのようなアイデアを生み出す分野が発達していくのです

 

 

photo credit: Maia C via photopin cc

photo credit: Maia C via photopin cc

 

 

そして別の視点から素晴らしいなと思ったのが、この幻冬舎の新書シリーズが宇宙論を一気に展開したことだ。これまでは何となく「サイエンスものはブルーバックス」というイメージもあったかと思うが、大栗博司のもう一冊『強い力と弱い力』、そして村山斉の『宇宙は何でできているのか』と、矢継ぎ早に新書を投入してきたことは、幻冬舎の英断とも言えるのではないだろうか。ちなみに両氏はそのブルーバックスでも相次いで著書を発表しており、極めて精力的に一般読者向けの宇宙論解説を続けている。

 

僕は以下の2冊も読んだのだが、こんなにも宇宙の本をまとめてむさぼり読んだのは何年ぶりだろうか、というくらい新鮮で刺激ある読書体験となった。未読の方にはぜひとも合わせて、宇宙の謎とその面白さ、そして夢とロマンを感じ取ってもらいたい。

 

 

photo credit: MrGuilt via photopin cc

photo credit: MrGuilt via photopin cc

 

 

そして続いて僕が手にしたのが、青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』だった。「青木薫の『訳者あとがき』は、いつも読み応えがある」にも書いたように、数多くの傑作ノンフィクションの翻訳を手がけてきた青木薫が、初めて取り組んだ著作がこの一冊なのだ。好奇心旺盛な氏の関心がいま宇宙に向かっているということ、そして宇宙論に関する翻訳を手がけその興味がさらに深まっていったことが、本書執筆のきっかけになったという。そういう著者の思いを感じながら、これもまたとても面白く読んだのを思い出す。

 

 

そして、「若きテクノロジストのアメリカ」でも紹介した『宇宙を目指して海を渡る』も刺激的な一冊だ。少年の頃に抱いた天体への夢そのままに、東大卒業後にMIT博士課程に留学した著者の奮闘記である。宇宙に対する著者のロマンと同時に、アメリカの大学院で学び闘うさまは、藤原正彦『若き数学者のアメリカ』や、若き起業家・星一を描いた『明治・父・アメリカ』に匹敵する、手に汗握る物語だと言えるだろう。アメリカ留学に関心があるなら絶対に読んでおきたい一冊でもある。

 

 

そして最後に、宇宙飛行士選抜試験について。人気漫画『宇宙兄弟』の物語の初めで、主人公が宇宙飛行士になるための選抜試験を受けるエピソードがあるのを覚えている人も多いだろう。とくに、数日間を密室で過ごさせストレス耐性をチェックしたり、不測の事態にどう対応するかのリーダーシップやチームワークを見たりするのだが、本当にこんな試験をやってるの?と思わざるを得ないシーンが連続するのである。

 

しかし、まさにそれが実際に行われているのだというのが、以下の2冊のノンフィクションである。どんな人物を宇宙飛行士に選抜するのか、そして試験では何を評価しているのか等々、その舞台裏が様々に語られ実に興味深い。もしもさらに興味をもったならば、そのときのJAXAの募集要項や応募書類に目を通してみるのもいいかも知れない。次に募集があるのが何年後になるのか分からないが、それこそ『宇宙兄弟』と同じように、子供の頃に宇宙のその向こうに馳せた思いは、そう簡単に消せるものではないのだから。

参考:宇宙飛行士界に見る、30代から「伸びる人」

 

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

2015年ことしのベストセラー|電子書籍編

さて2015年も残りわずか。ということで今年も、本ブログ経由でよく読まれた本をランキングしてみよう(

記事を読む

史上最年少プロ棋士・藤井聡太の初勝利と『将棋の子』たち

史上最年少のプロ棋士が誕生したと話題となったのが2016年9月のこと。それから3か月が経ち、今度は若

記事を読む

大ヒット『英国一家、日本を食べる』がなんとNHKでアニメ化|初回放送が予想以上におもしろかった

ちょっと前に『英国一家、日本を食べる』という本が、その続編「ますます食べる」も含めて大きな話題となっ

記事を読む

Kindle電子書籍で手に汗握って読む、箱根駅伝をより面白くするこの3冊

いまや国民的イベントにまで人気が拡大した、正月の風物詩・箱根駅伝。僕も含めて毎年楽しみにしている人は

記事を読む

盗作と贋作のフェルメール|美術作品にまつわる犯罪史

先日NHK-BS で放送された「アナザーストーリーズ 運命の分岐点『フェルメール盗難事件 史上最大の

記事を読む

shinkansen

なぜ日本の新幹線は世界最高なのか?定刻発車と参勤交代

"Why Japan's high-speed trains are so good" というEco

記事を読む

町山智浩『知ってても偉くないUSA語録』は秀逸な現代アメリカ社会批評

映画評論家の町山智浩をご存知だろうか?そして、彼の秀逸な現代アメリカ観察記をご存知だろうか?そんな週

記事を読む

アメリカ大統領選挙まであと数日|敗者の演説で振り返るステーツマンシップ

ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの、泥仕合のまま迎えることとなりそうな米国大統領選挙。8年前

記事を読む

「伊藤若冲と京の美術」展を観に行ってきた:奇想の画家が発見された背景

相変わらずの伊藤若冲の人気ぶりと言えよう。先日は新潟県立万代島美術館まで「伊藤若冲と京の美術」展を観

記事を読む

寝苦しい今夜も嫁を口説こうか|珠玉の芸人エッセイ3冊

以前にも何度かおすすめしてきたように、お笑い芸人が書くエッセイには、なかなかに読ませる面白いものが多

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑