*

ディエゴ・マラドーナのもう一つの伝説と、リオネル・メッシの新たな伝説

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 スポーツ, データ

ワールドカップ準決勝第一試合でドイツがブラジルに大勝したのに続き、第二試合ではPK戦でアルゼンチンがオランダを退けた。決勝戦はドイツ対アルゼンチンという、欧州 vs 南米の伝統的な戦いとなった。ワールドカップ前は「サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢」に書いたように、ブラジルが圧倒的人気、それに次ぐのがアルゼンチンでありドイツであった。ブラジルの大敗は確かに衝撃的であり、多くの予想はこの時点で大きく外れたわけだが、この決勝戦の組み合わせも見応え十分なものになると期待している。

 

なにしろアルゼンチンは、あのディエゴ・マラドーナを擁して優勝した1986年メキシコ大会以来の戴冠まであと一試合というところまで来たわけだが、そのときの決勝の相手も(当時の西)ドイツであった。そしてまた翌1990年イタリア大会決勝でも相まみえ(その時は敗れ)た因縁の相手でもあるのだ。ドイツ対アルゼンチン、間違いなく面白くなるだろうし、その主役と期待されるのが、ディエゴ・マラドーナ以来のスーパースター、リオネル・メッシだ。

 

medium_5027359331photo credit: mat- via photopin cc

 

メッシがマラドーナを超えたかどうか、というのはファンの間でも大いに盛り上がるところであろうが(例えばニューヨーク・タイムズ “Messi vs Maradona”)、そのためにはもう少しの時間を待たねばならない。一つ目はもちろん決勝戦のパフォーマンスであり、二つ目はマラドーナの「もう一つの伝説」にメッシがどこまで迫れるかにかかっている。そのもう一つの伝説を可視化したのが、もうお馴染みフェイスブックのデータサイエンス・チームだ。彼らはいつも面白いことやってくれるね。

 

そんな彼らが今回見せてくれたのが以下のグラフだ。これは「ディエゴ」と名付けられた新生児(アルゼンチン人男子)の比率を示しており、1986年のワールドカップ開催中に、この数が急上昇しているのがよく分かる(1.5%から5.5%へジャンプ)。もちろんこれはマラドーナの大活躍によるものであり、当時のアルゼンチン国民がそれだけ熱狂していた様子が伺える。ワールドカップ後にこの数値が急降下しているが、もしもあの「神の手」がなかったならば、マラドーナはクリーンな国民的ヒーローとしてもっと長く君臨し、今頃もっと多くの「ディエゴ」が誕生していたかも知れないね。

 

diego-name

 

詳しい解説はフェイスブックチームが “Maradona’s (other) legacy” で以下のように書いている通りだ。

Diego Maradona’s heroics in the 1986 FIFA World Cup will no doubt live on in soccer history. His controversial Hand of God goal was the first strike heard around the world; if there had been a Facebook in 1986, no doubt we would have seen massive spikes in chatter around this event from both joyful Argentines and bitter Englishmen. (中略)Today, we investigate another realm in which Diego Maradona’s heroics live on nearly three decades later: in the thousands of Argentine boys named after him. The whole nation was swept up by Maradona leading the team to victory, and new parents were no exception: we find that at its peak, during the final stages of the world cup, one in every 18 boys born in Argentina owes their first name to the bombastic number ten from Buenos Aires.

 

 

Argentina v Nigeria: Group B - 2010 FIFA World Cupphoto credit: Articularnos.com via photopin cc

 

つまり、メッシがマラドーナを超えるかどうかというのは、(1)アルゼンチンが今大会で優勝するかどうか、(2)メッシに神の「足」が生まれるかどうか、そして(3)リオネルという名前がどれだけ男の子の赤ちゃんに付けられるか、にかかっているのである。一番大事なのはもちろん3番ですよ(フェイスブック的にはね)!

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

ウィンブルドン決勝ジョコビッチの優勝をデータで振り返る

さて先日の「テニス・ウィンブルドン決勝|ビッグ・データを制するのは誰だ?」にも書いたように、僕は今年

記事を読む

ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕

ドイツ優勝で幕を閉じたサッカー・ワールドカップ。7-1という大差でブラジルを撃破した準決勝の試合に象

記事を読む

米国Amazon.com が公表する、アメリカとカナダの Most Well-Read Cities

毎年恒例となった、Amazon.com (および Amazon.ca)が発表する "Most Wel

記事を読む

スポーツ業界にデータ革命の波|NHK新番組「スポーツデータ・コロシアム」が面白い

NHK-BS 新番組「スポーツ・データコロシアム」 先日NHK-BS1 で放送が始まった新番組「ス

記事を読む

今年も箱根駅伝の季節がやってきた

さて、今年もまた箱根駅伝の季節がやってきた。毎回手に汗握るドラマを見せてくれるこの大学スポーツは、始

記事を読む

テニス・ウィンブルドン決勝|ビッグ・データを制するのは誰だ?

いよいよ今年のテニス・ウィンブルドンも大詰め。女子シングルスでは、第1シードのセリーナ・ウィリアムズ

記事を読む

データで考える|史上最高の男子テニスプレイヤーは誰だ?

今年の全豪オープンテニスはジョコビッチの優勝で幕を閉じた。錦織にはもう少し上まで行って欲しかったが、

記事を読む

relationship on facebook

フェイスブックから愛を込めて|Data love と love data

「バレンタインの統計学と経済学」で書いたように、Facebook Data Science チームは

記事を読む

The 2015 Daily chart Advent calendar by The Economist

Economist 誌が毎年行っている恒例の "Daily chart Advent calenda

記事を読む

全米オープンテニス|錦織がフルセットを制して準決勝進出

日本時間早朝の全米オープンテニス生中継を観戦したみなさま、お疲れ様でした。錦織がやってくれましたね。

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑