ディエゴ・マラドーナのもう一つの伝説と、リオネル・メッシの新たな伝説
ワールドカップ準決勝第一試合でドイツがブラジルに大勝したのに続き、第二試合ではPK戦でアルゼンチンがオランダを退けた。決勝戦はドイツ対アルゼンチンという、欧州 vs 南米の伝統的な戦いとなった。ワールドカップ前は「サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢」に書いたように、ブラジルが圧倒的人気、それに次ぐのがアルゼンチンでありドイツであった。ブラジルの大敗は確かに衝撃的であり、多くの予想はこの時点で大きく外れたわけだが、この決勝戦の組み合わせも見応え十分なものになると期待している。
なにしろアルゼンチンは、あのディエゴ・マラドーナを擁して優勝した1986年メキシコ大会以来の戴冠まであと一試合というところまで来たわけだが、そのときの決勝の相手も(当時の西)ドイツであった。そしてまた翌1990年イタリア大会決勝でも相まみえ(その時は敗れ)た因縁の相手でもあるのだ。ドイツ対アルゼンチン、間違いなく面白くなるだろうし、その主役と期待されるのが、ディエゴ・マラドーナ以来のスーパースター、リオネル・メッシだ。
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メッシがマラドーナを超えたかどうか、というのはファンの間でも大いに盛り上がるところであろうが(例えばニューヨーク・タイムズ “Messi vs Maradona”)、そのためにはもう少しの時間を待たねばならない。一つ目はもちろん決勝戦のパフォーマンスであり、二つ目はマラドーナの「もう一つの伝説」にメッシがどこまで迫れるかにかかっている。そのもう一つの伝説を可視化したのが、もうお馴染みフェイスブックのデータサイエンス・チームだ。彼らはいつも面白いことやってくれるね。
そんな彼らが今回見せてくれたのが以下のグラフだ。これは「ディエゴ」と名付けられた新生児(アルゼンチン人男子)の比率を示しており、1986年のワールドカップ開催中に、この数が急上昇しているのがよく分かる(1.5%から5.5%へジャンプ)。もちろんこれはマラドーナの大活躍によるものであり、当時のアルゼンチン国民がそれだけ熱狂していた様子が伺える。ワールドカップ後にこの数値が急降下しているが、もしもあの「神の手」がなかったならば、マラドーナはクリーンな国民的ヒーローとしてもっと長く君臨し、今頃もっと多くの「ディエゴ」が誕生していたかも知れないね。
詳しい解説はフェイスブックチームが “Maradona’s (other) legacy” で以下のように書いている通りだ。
Diego Maradona’s heroics in the 1986 FIFA World Cup will no doubt live on in soccer history. His controversial Hand of God goal was the first strike heard around the world; if there had been a Facebook in 1986, no doubt we would have seen massive spikes in chatter around this event from both joyful Argentines and bitter Englishmen. (中略)Today, we investigate another realm in which Diego Maradona’s heroics live on nearly three decades later: in the thousands of Argentine boys named after him. The whole nation was swept up by Maradona leading the team to victory, and new parents were no exception: we find that at its peak, during the final stages of the world cup, one in every 18 boys born in Argentina owes their first name to the bombastic number ten from Buenos Aires.
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つまり、メッシがマラドーナを超えるかどうかというのは、(1)アルゼンチンが今大会で優勝するかどうか、(2)メッシに神の「足」が生まれるかどうか、そして(3)リオネルという名前がどれだけ男の子の赤ちゃんに付けられるか、にかかっているのである。一番大事なのはもちろん3番ですよ(フェイスブック的にはね)!
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