*

中学生プロ棋士・藤井聡太四段の新たな歴史的偉業

公開日: : 最終更新日:2017/06/28 オススメ書籍, ニュース

快進撃を続けていた若干14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が、ついに、なんと、歴代連勝記録の単独トップという大記録を達成した。

日本将棋連盟)6月26日(月)に行われた第30期竜王戦決勝トーナメント、増田康宏四段-藤井聡太四段戦は91手で藤井聡太四段が勝ちました。藤井聡太四段はこれでデビュー後負けなしの29連勝を達成し、歴代連勝記録の単独トップとなりました。関係者のコメントは下記の通りです。

 

以前に「奨励会三段リーグ|天才少年棋士からプロへの最後の関門」でも書いたように、プロ将棋士になるためには、まずは奨励会という養成機関に入門し、そこで幼き天才たちと勝負を繰り返し、そして一定年齢までに四段に昇格して初めてプロの棋士となれるのだ。その道のりは長く、中学生でプロ棋士となったのは、これまでに加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明の4人であり、この顔ぶれを見ればどれだけのトップ棋士しか達成していない偉業かはすぐに分かるというものだろう。

 

shougi_old_board

 

 

しかも、である。藤井聡太はこの四段昇格を14歳2か月で実現し、それまで加藤一二三が持っていた最年少記録を62年ぶりに塗り替えての偉業だったのだ。そして、藤井聡太にとってのプロデビュー戦が何の運命か、その加藤一二三であり、この初戦に勝利して以来まだ負けがないという、すさまじい快進撃なのである。

 

加えて、これまでの試合と対戦相手がまたドラマチックなのである。例えば先日対戦した東大生トップアマ・藤岡隼太。彼もまた幼いころから天才とうたわれた棋士だったが、奨励会入門後にはそれ以上の天才たちに囲まれ自身は伸び悩み、最終的にはプロ棋士への道を諦めているのである。東大入学後に今度はアマチュアとして再度将棋を始めた結果、これまでとは違う楽しさを見つけたという人物なのである。

 

またもう一人は、その前に対戦した瀬川晶司だ。彼もまた天才少年と評された若き棋士だったが、26歳までに余談に昇格するという奨励会の鉄の掟を満たすことができる、志半ばで奨励会を後にした経験があるのだ。しかし、その後アマチュアで活躍をつづけた結果、35歳にして特例にしてプロの世界への編入が認められた遅咲きの棋士なのである。

 

kuzushi shougi

 

 

今回の藤井聡太四段の快進撃は、その他大勢にとってはいかにも眩しい業績と言えるだろう。それに加えて、プロ誕生の眼前に立ちはだかる最後の難関「奨励会三段リーグ」をこれだけの速さで駆け抜けて突破したことは、その関門を前に挫折した多くの天才少年たちにとってみれば、あまりにも圧倒的だ。それだけの結果を残し、そして今後も残し続けていくであろう藤井四段の本当のすごさを知るためにも、その奨励会がどれだけ厳しい世界なのかを知っておいて欲しい。

 

本書『将棋の子』は、「史上最年少プロ棋士・藤井聡太の初勝利と『将棋の子』たち」の中でも紹介した一冊であり、幼き天才たち、若き異才たちが、日々鍛錬を重ね、勝負に明け暮れ、そしてプロになれるかどうかの最後の一戦まで戦い続け、そして敗れていった者たちの記録である。藤井聡太という類まれなるスターが誕生したいまだからこそ、その背景で夢破れ散っていった彼らの挑戦にも、ぜひ目を向けて欲しい。素晴らしい一冊として強くおすすめしたい。

奨励会……。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る”トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の1冊。第23回講談社ノンフィクション賞受賞作(講談社文庫)

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

three main dictionaries

国語辞典を選ぶならこの4冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波・誤用を正す明鏡

目的と用途に合わせてベストの国語辞典を見つけよう 卒業・入学シーズンを前に、そのお祝いとして国語辞

記事を読む

好きなことだけを仕事にした、新潟県三条市の世界的アウトドアメーカー「スノーピーク」の経営

新潟県三条市に、あのアップルも見学に来る企業があるのをご存知だろうか?それがアウトドアブランドの「ス

記事を読む

欧州サッカークラブ収益ランキング|マネーリーグ2023発表

今年もまたこの時期がやってきた。そう、 監査法人Deloitteが毎年発表している、サッカークラブ

記事を読む

日本人の氏名はなぜこんなにも多種多様にして複雑怪奇なのか?

日本人はなぜにこんなにも自分の名前や家族のルーツに興味津々なのだろうか? NHKの番組だけ取り上げて

記事を読む

日本人の9割が間違えちゃう英語表現と英語常識

以前にも紹介したキャサリン・A・クラフト著『日本人の9割が間違える英語表現100』は、面白く読めるエ

記事を読む

論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち

先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている

記事を読む

amazon student spring 2014 campaign

Amazon Student 会員数、第1位早稲田・第2位東大に続き、第3位に放送大学がランクイン

Amazon Student の春の新学期キャンペーンで、面白いランキングが掲載されていた。Amaz

記事を読む

華麗な舞台の裏にあるプロテニス選手の過酷な生活|ランキングシステムが生んだ世界的超格差社会

2018年の全豪オープンテニスがフェデラーの優勝で幕を閉じた。自身が持つ四大大会最多優勝記録を20勝

記事を読む

30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方

中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深く読んだ。出版から2年で30万

記事を読む

寝苦しい今夜も嫁を口説こうか|珠玉の芸人エッセイ3冊

以前にも何度かおすすめしてきたように、お笑い芸人が書くエッセイには、なかなかに読ませる面白いものが多

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑