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「幸せの国」ブータン王国を築いた国王のリーダーシップとマネジメント

公開日: : 最終更新日:2017/07/03 ニュース

「眞子さま、ブータンから帰国 」(日経新聞)等と各種ニュースで報道されたように、日本とブータンとの友好親善は歴史は浅くともその関係は深い。

(日経新聞)ブータンを訪れていた秋篠宮家の長女、眞子さまは8日朝、羽田空港着の民間機で帰国された。到着時には、報道陣からの「おかえりなさい」の声に会釈で応じ、笑顔を見せられた。今回の訪問は友好親善が目的で、滞在中はワンチュク国王夫妻や前国王らと面会、地元の人とも交流を深められた。

 

bhutan royal couple

 

 

とくに2011年の東日本大震災後には、海外著名人の多くが訪日を中止・延期したりする中、新婚のワンチュク国王夫妻が来日し、被災地を訪問し、そして国会でスピーチしたことは、まだ記憶に新しいと言えるだろう(参考:日経新聞「ブータン国王夫妻が来日 福島・相馬など訪問 」)。

 

そんな「幸せの国」ブータンを僕が訪れる機会を得たのが2014年だった。もう3年も前かと懐かしく思い出すが、ヒマラヤ山脈の麓に小さく佇むこの国は、外界と隔絶されたかのように特色ある文化をいまなお色濃く残し、それが訪れる者に鮮烈な印象を与える。世界が画一化しどの観光地を訪れても同じようなモノに囲まれる現代において、これほど異国体験ができる場所というのもそうそうないと断言できるほどに、ブータンは実にユニークな国なのである。

 

  1. ちょっとブータンまで行ってきた。
  2. ブータンではみんな王室と国王と王妃が大好き
  3. 西水美恵子著『国をつくるという仕事』が称賛する、ブータン国王のリーダーシップ
  4. ブータン仏教の聖地・タクツァン僧院に行ってきた
  5. ヒマラヤの山麓、ブータンの春、そしてツェチュ祭:世界で一番美しい瞬間

 

 

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そんなブータンを知るためにおすすめの3冊がこちらだ。まずは、西水美恵子の『国をつくるという仕事』だ。世界銀行副総裁を務め、世界各国のリーダーたちと議論を続けてきた著者が、その中でも極めて優れたリーダーだと深く尊敬するのが、ブータンの前国王だ。国民に慕われ敬われ、この国を治め続けた王が、若き息子に王位を継承すると発表した際には、国中が大きな衝撃に包まれたという。このような人物を生むのに国の大小は関係なく、そして世界は常にその人間性を見ているのだと分かる一冊でもある。ブータン以外の開発途上国の話も多いが、やはり本書の読みどころはこのブータンの前国王の知性と治世ではないかと思う。

【前・世界銀行副総裁が語る リーダーシップの真実】
貧困のない世界を夢見て・・・23年間の闘いから見えてきたもの

◆初めて訪れたエジプトの貧民街。少女ナディアが自分の腕のなかで息をひきとったとき、自分の人生が決定的に変わったーー。基本的な医療があれば救える病気で命を落とす子どもたち。想像を絶する貧困の一方で、富があふれる都会があり、貧しい人々の苦しみを気にもかけない政治がある・・・。衝撃と怒りで一睡もできなかった帰路、著者は貧困と闘う仕事に取り組むことを決意する。

世界銀行に入った著者は、南アジア各国、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュなど数多くの途上国を担当。貧困地域に自らホームステイして現場の問題を探り出し、安易に援助を行うのではなく、地元のリーダーを支援することで自律的な貧困脱却を促す。民衆を顧みない権力者には、「それでもあなたは政治家か」と怒り、一歩も引かずに闘い抜く。現場を軽視した施策は改め、ほんとうに必要な支援を追求する。

貧困や悪政と闘いつづけた23年間。それは、この世界を変えたいと願う、あらゆる職場のリーダーたちと共に歩んだ道のりだった。農民や村長、貧民街の女性たちや売春婦、学生、社会起業家、銀行家、ジャーナリスト、政治家、中央銀行総裁、将軍や国王に至るまでーー。本書は、「国づくり」の現場で出会った本物のリーダーたちの姿を情感込めて綴った回想記であり、今なお貧困や悪政の渦巻く世界を変えていくための、未来に向けたメッセージである。

 

 

 

guide and driver

 

 

つづいては一転ほんわかした雰囲気のエッセイ『ブータン、これでいいのだ』である。東大卒マッキンゼー勤務というバリバリの才女が、次のキャリアとして選んだのがブータン政府の初代首相フェローというポジションだった。そこから始まる笑いと驚きと半泣きの物語に、読む者もぐいっと引き込まれてしまう魅力が本書にはある。そんなオリジナルの物語をぜひ読んでみて欲しい。

クリーニングに出したセーターの袖は千切れているし、給湯器は壊れてお湯が噴出するし、仕事はまったく思い通りに運ばない。「幸せの国」と言われるブータンだけど、現実には社会問題も山積みです。それでも彼らは、「これでいいのだ」と図太くかまえ、胸を張って笑っている―初代首相フェローとしてブータン政府に勤務した著者が、日本人にも伝えたい彼らの“幸せ力”とは。

 

 

 

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最後に、われらが高野秀行(参考「秘境・辺境探検家の高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家」)ももちろんこのヒマラヤ山麓の王国を訪れている。しかし、彼が行くと同じ場所でもこんなに違った体験になるのかと、またしても面白可笑しく読んでしまった。

「雪男がいるんですよ」。現地研究者の言葉で迷わず著者はブータンへ飛んだ。政府公認のもと、生物資源探査と称して未確認生命体の取材をするうちに見えてきたのは、伝統的な知恵や信仰と最先端の環境・人権優先主義がミックスされた未来国家だった。世界でいちばん幸福と言われる国の秘密とは何か。そして目撃情報が多数寄せられる雪男の正体とはいったい―!?驚きと発見に満ちた辺境記。

 

 

とはいえ、この3冊目のおすすめはぶっ飛びすぎ過ぎてて読まなくてもいいので(笑)、まずはぜひとも上記2冊でブータンという国のユニークさに触れてもらえたらと思う。今後も引き続き皇室外交は続くであろうし、さらにブータンと日本との関係は深まっていくことを期待したい。

 

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