日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日
いよいよこの書籍が文庫化されましたね。そう、2016年に出版され大きな話題となった一冊『最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常』のことである。漫画化もされ、読んだ方も多いかも知れないが、だがしかし、この未知なる世界を探検して回ったこの冒険談は、ぜひともさらに多数の読者に知ってもらいたい内容づくしなのである。
著者・二宮敦人は作家ではあれど、決してノンフィクション作家ではない。そんな彼がなぜ、東京藝術大学の学生生活を描写することになったかと言えば、それはずばり、藝大出身の奥様の思考や行動があまりにもぶっ飛んでユニークだったからである。しかも、それは奥様にとどまらず、その同級生たちはもっとスゴイ奴らばかりなのだ。アーティストとはこういうものなのか、やはり天才とは凡人には理解不能な存在なのだろうか、それともただ単なる・・・、というくらいに想像の斜め上のさらにその上をいく彼ら彼女らの考え方・生き方をぜひ本書で確かめて欲しい。これは実に貴重な、日本に残る最後の秘境に生きる希少生物たちの、克明な生態記録なのである。
やはり彼らは、只者ではなかった。入試倍率は東大のなんと約 3 倍。しかし卒業後は行方不明者多発との噂も流れる東京藝術大学。楽器のせいで体が歪んで一人前という器楽科のある音楽学部、四十時間ぶっ続けで絵を描いて幸せという日本画科のある美術学部。各学部学科生たちへのインタビューから見えてくるのはカオスか、桃源郷か? 天才たちの日常に迫る、前人未到、抱腹絶倒の藝大探訪記。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
生誕300年記念の伊藤若冲展に行こう
さて先日から東京都美術館で始まった「若冲展」。生誕300年を記念した大回顧展ということもあって、NH
-
-
正月の風物詩・箱根駅伝が今年もおもしろい
新年明けましておめでとうございます。新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、ステイホームの継続と静かな
-
-
最強のトイレがアメリカに上陸。一方の日本では「トイレとうんち」展が大人気
僕はトイレに並々ならぬ関心を持っている。本当に。だから、国連が「11月19日は世界トイレの日」と定め
-
-
アート界を震撼させた本物のニセモノ|贋作師ベルトラッチの数奇な人生
先日放送された NHK-BS 世界のドキュメンタリー「贋(がん)作師 ベルトラッチ ~超一級のニセモ
-
-
秘境・辺境探検家の高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家
世界の秘境・辺境探検家である高野秀行の作品はどれも類例のない傑作ノンフィクションばかりなのだが、本書
-
-
ミャンマーの歴史と地政学|アジアの超大国・中国とインドをつなぐ十字路
ミャンマーがいま政治的に揺れている。日本との歴史的関係も長いこの国は、僕自身も何度か訪れたことがある
-
-
赤瀬川原平『新解さんの謎』と『辞書になった男』:いま日本で最も売れている「新明解国語辞典」の誕生秘話
これまで何度か、各種おすすめ国語辞典のそれぞれの個性について書いてきたが、その中でも最も「個性的」な
-
-
いま囲碁がとんでもなく面白い:弱冠24歳の6冠井山裕太
先月のNHKプロフェッショナル「盤上の宇宙、独創の一手。囲碁棋士・井山裕太」を見た。あまりにも面白く
-
-
留学前に読んでおきたいこの6冊
先日書いた「留学前に。」の続き。留学前にできることは色々とあるだろうが、留学に対するイメージをよりク
-
-
30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方
中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深く読んだ。出版から2年で30万
