*

いま囲碁がとんでもなく面白い:弱冠24歳の6冠井山裕太

公開日: : 最終更新日:2015/02/22 オススメ書籍, ニュース

先月のNHKプロフェッショナル「盤上の宇宙、独創の一手。囲碁棋士・井山裕太」を見た。あまりにも面白くて、今まで将棋しか齧ってこなかった自分を恥じたほどである。

(参考:南魚沼の名門老舗旅館「龍言」と将棋タイトル王座戦

 

将棋界では羽生善治が7大タイトルを全て制覇する快挙を成し遂げたが、いま囲碁界においてもその可能性が高まっているいるという。そんな前人未踏の偉業に挑戦しているのが、弱冠24歳にして既に史上初の6冠を独占する井山裕太。

 

japanese igophoto credit: Ken Reppart via photopin cc

 

井山裕太の囲碁人生の中で個人的に最も興味深かったのが、師匠・石井邦生の育成方法。小学生のときに石井の弟子となった井山だが、石井が採った育て方は従来のものとは全く異なる、それこそ型破りなものであり、一方で実に現代的であるとも言えるものだった。

 

第一に、住み込みではなく自宅から師匠のところへ通わせた。そして、インターネット囲碁を利用して、数多くの対局を通じて育てようと考えた。何よりも、ネットだと師匠のコワい顔が見えないだろうから(笑)、思い切った一手、伸び伸びとした碁を指すように指導した。これが素晴らしいではないか。

 

 

子供らしく元気な碁、恐れを知らない大胆な一手、そういったものをどんどん奨励し、ネット対局を重ねた。その無数の積み重ねがいま、井山が「盤上の宇宙」を築く基礎力となっているのは疑いようがない。囲碁の世界にこういう師匠もいるものかと、とても印象に残る師弟関係として写った。

 

これで一気に囲碁に関心を持ってしまった僕は、さっそくNHKで後日放送された井山の対局を見ることにした。しかも師匠である石井がその対局の解説を務めるというのだから、これはもう大変に楽しみにしていたのである。結果的には、序盤の劣勢を跳ね返した井山の勝利だったのだが、それ以上に印象に残ったのはやはりこの師匠・石井。井山の一手を解説するための解説者のはずなのに、「なぜ、この一手なんでしょうねえ」とか「私にも狙いがよく分かりません」等々、解説になっていないコメントが多数飛び出した。

 

しかし僕が言いたいのは、弟子を伸び伸びと育てたからこそ、いまその弟子が師匠にも理解不能な「独創の一手」を打ち続けているのだろうということ。この師匠にしてこの弟子あり、という愛情深い関係が見えたようで、テレビ対局を見ながら思わず心が暖かくなった。今後の井山の7冠への挑戦に、大きな期待と関心を与えてくれた、素晴らしい内容だったと思う。

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

華麗な舞台の裏にあるプロテニス選手の過酷な生活|ランキングシステムが生んだ世界的超格差社会

2018年の全豪オープンテニスがフェデラーの優勝で幕を閉じた。自身が持つ四大大会最多優勝記録を20勝

記事を読む

テニスプロはつらいよ|トッププレイヤー錦織圭とその他大勢の超格差社会

2014年の全米オープンテニスで日本人初のグランドスラム決勝進出を果たした錦織圭。その後の凱旋ツアー

記事を読む

誰も教えてくれない、科研費に採択されるコツを公開|研究費獲得に向けた戦略的視点

また今年も科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。今月から来月にかけては、日本にいる数多く

記事を読む

playground in a rural area

アメリカと日本と国際養子縁組

先日のTBSの番組「女児はなぜアメリカへ行ったのか?国際養子縁組を考える」を観た。 豊かな社会とは

記事を読む

今こそ再び学ぶ『英語の読み方』|読めるか読めないかそれが問題だ

英語学習に関する書籍というのは、それこそ書店に溢れていて、玉石混交でどれを選んだらいいのか分からない

記事を読む

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春はいつだって新しい旅立ちのときで

記事を読む

アメリカで最もお世話になったあの老夫婦がこの夏日本にやって来る

僕が米国留学で一番お世話になったのは、ひょっとすると大学院の指導教授ではなく、むしろアカデミックとは

記事を読む

ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』

ビル・ゲイツ氏が選ぶ「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」が昨年末何かと話題となったが、その中でイ

記事を読む

vermeer blue

アートは小説よりも奇なり:盗作と贋作の歴史、美術ノンフィクションが面白い

なんと、僕が好んで読む美術ノンフィクションの傑作が2冊も文庫版として再登場しているではないか。『ギャ

記事を読む

travel around the world

都市別外国人観光客ランキング:中国人観光客から今後はロシア人観光客へ

英国の市場調査会社ユーロモニターが発表した最新の都市別外国人観光客ランキング(日本版ウォール・ストリ

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑