生誕300年記念の伊藤若冲展に行こう
さて先日から東京都美術館で始まった「若冲展」。生誕300年を記念した大回顧展ということもあって、NHKが地上波・BS合わせて相次いで特集を組むなど、注目度は極めて高く、早くも入場者数が10万人を突破したとのことである。

覚えている人も多いだろうが、2000年の京都での展示会で爆発的なブームを巻き起こした天才絵師・伊藤若冲。2006年には東京で、そして2012年には米国ワシントンDCのナショナル・ギャラリーでの展示会が、さらにその人気を加速させた。僕もこれまで何度も若冲展には足を運んできたが、今回のような大規模回顧展ならば、やはり大行列を覚悟しても行くしかあるまい。
とくに今回の「若冲展」は一ヶ月間のみの開催ということもあり、今年の大型連休にはさらに多くの人が押し寄せることだろう。それでも、やはりこの目で見ておきたいと大勢に思わせるのが、この伊藤若冲という絵師の色鮮やかな魅力なのだろう。

そんな若冲を特集した雑誌は書籍は、今やそれこそ山とあるので、身近な本屋で手にとって好きな一冊を選べばよいと思う。だけどそれと合わせてぜひ読んで欲しいのが、日本の美術史に長い間埋もれたままとなっていたこの伊藤若冲を再発見・再評価した美術史家・辻惟雄の著書である。
とくに、最新の『奇想の発見』では、いかにして若冲という絵師に出会ったのか、その作品が当時いかに無造作に扱われていたのかといったエピソードが豊富で大変に興味深い。それと同時に注目すべきは、世界一の若冲コレクターであるジョー・プライスの存在を知り、接点を持ち、そして交流を深めたプロセスであろう。
若冲・蕭白を見出した辻センセイの愉快でトホホなハミ出し人生。ギロリと眼を剝く曾我蕭白の雲龍図、岩佐又兵衛の血みどろ絵巻、そして大ブームを巻き起こした伊藤若冲の白い象――。花鳥風月を優雅に愛でる日本美術史の片隅ですっかりキワモノ扱いされていた「奇特な」画家たちを発掘し、ニッポンの美に禍々しき愉楽を与えた立役者。その自由な精神を育んだ生涯を綴る、初めての自伝。
この『奇想の発見』は、辻の前著作である『奇想の系譜』そして『奇想の図譜』に連なる一冊であり、そしてキワモノ扱いされていた美術作品に囲まれた辻のシアワセなアート人生を振り返ったものなのだ。ぜひとも今回の若冲展に行く前に、いや行列に並ぶ時間を使ってでも、ご一読頂きたい内容なのである。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
クラフトビール業界ナンバーワン・ヤッホーブルーイング自慢のIPA「インドの青鬼」の苦みが最高に旨い
今年もまたビールが旨い季節がやって来た。もちろん、クラフトビール飲んでますよね?数年前から盛り上がり
-
-
さらに充実した国語辞典を|中型の岩波『広辞苑』と三省堂『大辞林』が大幅改訂
さて、卒業・入学のシーズンがやってきた。そして、そんな季節の定番の贈り物といえば、もちろん国語辞典で
-
-
日本のクラフトビール革命|ヤッホーブルーイング自慢のIPA「インドの青鬼」がクセになるほど美味い!
日本でも始まったクラフトビール革命 この夏、日本ではますますクラフトビールを飲む人が増えているよう
-
-
3年に一度のアートの祭典|越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」は今週末まで
「今年の夏は「大地の芸術祭」越後妻有アートトリエンナーレへようこそ!」でも紹介したように、今年は三年
-
-
キューバに行くなら今が最後のチャンス:アメリカ人観光客が殺到する前に
今年の「ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所」でも書いたように、今キューバが
-
-
[TEDトーク]教科書になるプレゼン|吃音のミュージシャンが語る私の言葉
NHK Eテレで放送されている「スーパープレゼンテーション」をご覧になっている人も多いことだろう。そ
-
-
将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた
最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、毎度新聞やニュース等でも大々的
-
-
食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週
さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーンも、いよいよ今週末3月19日で
-
-
稀代の絵師・伊藤若冲の作品群が日本に里帰り
ここ数年、日本美術がもの凄いブームと言ってよいほどの盛り上がりを見せているのはご存知の通りだ。そして
-
-
吉田類の酒場放浪記と世界入りにくい居酒屋
いまや「月9」と言えば、吉田類の「酒場放浪記」なのである。間違ってもフジテレビのドラマ、とか言っちゃ

