100年目の国勢調査|本日の締切おわすれなく
現在実施中の国勢調査は、5年に一度実施される最も重要な統計調査である。日本国内に住んでいるすべての人と世帯が対象となり、人口や教育・就業状況など、ふだんの暮らしに関わる情報を集め、生活環境の改善や防災計画などに活かしていくものである。ただ、現代においてはなかなか回収率があがらず、5年前も低かったが、今年はさらに低下するのではないかと危惧され、政府も協力を呼び掛けているところだ(NHKニュース)。というわけで、まだ回答していない方々、本日までの締切どうぞお忘れなく!

日本で初めて国勢調査が実施されたのは1920(大正9)年のことだから、それから今年で100周年という記念となる年を迎えているのだが、そんな国勢調査について知るならこの一冊がおすすめ。
私たちの氏名,生年月,学歴,家族構成,仕事,家の広さ……5年に一度,私生活に関わる情報を書いて提出することが求められる国勢調査.このような調査は,いつ,どのような理由で始まったのか.この調査結果は私たちの生活に役立っているのか,個人情報保護重視の時代に将来どうなっていくのか.この一冊で分かります.
そして、もうひとつ関連しておすすめしたいのは、この『日本国勢図会』である。これは、より精度の高い統計を整備することを民間の立場から目指したものであり、長い歴史と伝統のある一冊だ。毎年更新されている他、日本であれば県別のデータを揃えたり、世界に目を向けた国勢など、極めて優れたラインナップなのである。また、小学生や中学生にも分かりやすく日本の現在をデータで丁寧にやさしく教えてくれる『日本のすがた』もおすすめだ。いずれも、社会科学関連の調査や研究に携わる人にとっては、常に手元そばに置いておくべきデータ集と言えるだろう。
『日本国勢図会(にほんこくせいずえ)』は、1927(昭和2)年に矢野恒太(やのつねた)(1866~1951、第一生命の創立者)が初版を発刊して以来、刊行を続けているロングセラーです。初版の序文では、「編者が若し教育家であって、幾人かの青年を預かったなら、本書に書いたことだけは何科の生徒にでも教えたいと思うことである。本書は講堂のない青年塾の一部である」と記して、矢野恒太の教育への熱い思いを伝えています。日本で初めて国勢調査が実施されたのは1920(大正9)年のことで、本書発刊時は統計が十分には整備されておらず、青少年が客観的な判断力を養うために統計の普及が求められていました。そうした時代に、本書は統計年鑑の一つとして版を重ね、現在に至っています。
本書は、官公庁など政府関係機関の公表資料と各種業界団体、シンクタンクが実施した調査研究資料をもとに、日本の社会・経済情勢を統計表・グラフを使ってわかりやすく解説したデータブックです。国土と気候、人口、労働、農業・農作物、各種産業、貿易、財政、金融、国民の生活など幅広いテーマで構成されています。統計表・グラフのほか、各章には解説文や用語の説明、トピックスを配し、理解が深まるよう工夫しました。また、経済のグローバル化を見据え、各章の重要なテーマについては世界各国との比較を試みています。巻末には、戦後からの流れがわかる主要長期統計、都道府県の比較ができる府県別統計を掲載しました。
矢野恒太の教育への思いからか、本書はこれまで教育界を中心に利用されてきました。いまでも社会科の教科書、参考書、問題集など学校教材で引用されており、毎年、中学・高校・大学の入試問題の出典元となっています。近年の学校教育では、データを読み取る力、説明する力が求められるようになり、本書の役割も高まってきました。教育現場のみならず、ビジネスの場、定年後の「学び直し」として、本書を活用していただく機会も増えています。
初版以来、本書の歩みも昭和、平成、令和の三時代にわたることとなりました。本書がわが国の現状を捉え、これからを考える一助となることを願っています。
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