年収は「住むところ」で決まる: The New Geography of Jobs
“How Professional Salaries Vary Around the Country” というウォール・ストリート・ジャーナルの記事。”If money is your object, where you live can matter a lot more than what profession you choose.” というのが記事のメインメッセージだ。下の表が示すように、同じ職業であってもどの地域に住んでいるかによって年収は4倍以上差がつくことがある。
これはカリフォルニア大学バークレー校の労働経済学者エンリコ・モレッティの近著 “The New Geography of Jobs” (邦訳『年収は「住むところ」で決まる』)の主張と同じだ。本書では、米国センサスの320地域800万人以上の労働者データを分析し、ボストンやサンフランシスコ等の頭脳集積都市と、デトロイトを始めとする伝統的製造業都市との間の格差が、過去30年の間に急速に広がってきたことを示している。
そして、頭脳集積都市に住むからといって必ずしも「頭脳」職に就く必要はなく、それ以外の “non-innovation jobs” であっても、他都市の同職種と比べて高い賃金を得ていることを明らかにする。だからこそ、住む場所が大事、ということなのだ。
photo credit: davidrossharris via photopin cc
そんな都市の優位性によりフォーカスを当てて議論したのが、ハーバード大学の都市経済学者エドワード・グレイザーの “Triumph of the City”(邦訳『都市は人類最高の発明である』)だ。都市の高密度こそが仕事の生産性を高め、生活クオリティを上げ、そして環境にも優しいと主張する。アメリカには人種や宗教そして政治と様々な断絶があるが、その中でも今急速に分断が進んでいるのが、この都市間の格差なのかも知れない。
Amazon Campaign
関連記事
-
全米オープンテニスを Slam Tracker でデータ観戦しよう
いよいよ全米オープンテニスが始まった。それと同時に錦織圭の初戦敗退。大変残念だけれども、それだけグラ
-
経済学Ph.D.のアカデミック・ジョブマーケット|AEA年次総会がシカゴで閉幕
1月の最初の週末、日本ではまだお正月気分が残っている頃に開催されるのが The American E
-
スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析
スポーツ界に広がるデータ革命 これまで何度か書いてきたように、スポーツとデータというのはとても相性
-
米国トランプ次期大統領が決まった今こそ読みたい現代アメリカ社会批評
アメリカ大統領選挙の結果、ヒラリー・クリントンが破れ、ドナルド・トランプが次期大統領に決まった、とい
-
アメリカ地方自治体の分断:富裕層による独立運動
先日のNHKクローズアップ現代を興味深く視た。「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」
-
データと恋愛とバレンタインデー
バレンタインデーの週末、みなさまいかがお過ごし予定でしょうか?昨年「バレンタインの統計学と経済学」で
-
『ヤバい予測学』とフェイスブックデータが示す感情の起伏
フェイスブックのデータ・サイエンティストたちは毎度興味深いデータを見せてくれる。それは「フェイスブッ
-
【おすすめ書籍】ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす恋愛ビッグデータの残酷な現実
アメリカでベストセラーとなった一冊 "Dataclysm" がようやく翻訳出版された。これは人気出会
-
錦織圭の全豪オープンテニスをデータ観戦しながら応援しよう|IBMのSLAMTRACKERが面白い
現代において、スポーツ選手がデータ活用するのはもはや当たり前と言えよう。そしてそれはもちろん監督やコ
-
サッカーワールドカップ優勝予想対決:アルゴリズム vs 市場 vs その他大勢
いよいよ開幕したサッカー・ワールドカップ。日本時間今朝の開幕戦ブラジル対クロアチアは、3-1のスコア