行動経済学者ダン・アリエリー|お金と感情と意思決定の白熱教室
公開日:
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最終更新日:2017/01/30
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本記事の目次
NHK『お金と感情と意思決定の白熱教室』再放送決定
先日放送されたNHK『数学ミステリー白熱教室』はとてもよくできた番組であり、最先端の数学理論が宇宙論ともつながってくるという、実にエキサイティングな内容だった。残念ながら見逃してしまった方は、再放送される機会をお待ち頂くか、エドワード・フレンケルの原著『数学の大統一に挑む』でお楽しみ下さい。
これだけ評判となった番組なので、たぶんそのうち再放送されることだろう。なにしろ、今日からは昨年放送された、あの『お金と感情と意思決定の白熱教室』が再放送されるのだから。講師はおなじみの人気行動経済学者ダン・アリエリー。
私たちは日々様々な意思決定を行っていて、その選択については、十分「合理的」に判断している“つもり”でいる。しかし人間が合理的な存在だというのは本当だろうか? なぜ、ダイエットを誓ったはずなのにデザートを見ると決意が揺らぐのか!? 不要なものまでバーゲンで買いあさってしまうのはなぜか!? 様々な実験やケーススタディーを通じて人間の不合理性を解き明かし、社会の様々な問題を人間の不合理性を使って解決する手法を学んでいく。
ダン・アリエリーの行動経済学「不合理三部作」
以前に「行動経済学者ダン・アリエリーの最新TEDトーク|How equal do we want the world to be? You’d be surprised」も紹介したように、TEDトークにもう何度も登場している人気のスピーカーでもある。彼の話が毎回ウケるのは、何といってもその研究トピックの面白さにある。人間のおもしろおかしく時に悲しい習性をこれでもかと見せつける彼の研究内容は、ベストセラーとなった以下の「不合理三部作」を読んでも、そしてプレゼンテーションを聞いても、いつも大変に興味深い。
ダニエル・カーネマンの必読書『ファスト&スロー』
そんな人気の行動経済学だが、おもしろ実験をトピック的に学ぶだけでなく、より体系的に勉強しようという際には、ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』がベストの一冊となるだろう。プリンストン大学の心理学者にして2002年のノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン。彼が盟友エイモス・トベルスキー(1996年没)とともに切り拓いたのが、この行動経済学という新しい分野だったのだ。だから、そのカーネマンの研究集大成である本書『ファスト&スロー』こそが、最高の入門書にして最高峰の一冊と言えよう。もちろん、彼自身によるTEDトークもぜひご覧ください。
リチャード・セイラーの Nudge と政策立案
もう一人の著名行動経済学者、それがリチャード・セイラーだ。「文庫で学ぶ行動経済学」の中でも紹介した著書『実践 行動経済学』は、政策への応用例が数多く解説され、ベストセラーとなった一冊だ。しかも、その後米国においても英国においても、こうした知見を実際の政策に活かそうという動きが出てきた。具体的には、米国においては “Social and Behavioral Sciences Team” (通称 Nudge Unit)が組成され、数々の実験をもとに政府業務の効率化が提案されている。彼らのその成果については、初めての Annual Report で詳しく解説されている。
一方で、米国にさきがけて Nudge Unit を立ち上げたのが英国だった。デイビッド・キャメロン首相が2010年に立ち上げた “Behavioural Insights Team” がその舞台だ。そしてこの Nudge Unit を率いる David Halpern が先日出版したのが本書 “Inside the Nudge Unit” である。サブタイトルにある “How small changes can make a big difference” が、まさにこの Nudge Unit の哲学を表している。一つ一つの改善は改革と呼べるほど大きなものではない。しかし、その積み重ねが大きな変化を起こすのであり、それはまさに Justin Wolfers が解説するように、グーグルが絶え間なく行っている A/B テストの繰り返しに似た指針なのである。行動経済学は政策との関わりをさらに深めながら、今後もっと面白くなっていく分野だろう。
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