今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」のリチャード・セイラーに
今年のノーベル経済学賞が発表され、行動経済学についての貢献が評価され、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞した。こちらのNHK記事等でも彼の業績が解説されているので、ぜひご覧頂きたい。

プリンストン大学の心理学者ダニエル・カーネマン教授が、行動経済学の分野を開拓したことで、2002年のノーベル経済学賞を受賞してから15年、ふたたび行動経済学が大きな賞を得たことになる。この分野は近年発展が著しい分野で、これまで以下のように紹介してきたように、一般向けの書籍も充実しているので、興味のある人はぜひいくつか読んでみるとよいと思う。
その中でも最もおすすめなのはもちろん、ダニエル・カーネマン自身による一冊『ファスト&スロー』だ。行動経済学における基本的なコンセプトがとても分かりやすく解説されているので、ぜひご一読いただきたい。
整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い? 30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか? はたしてあなたは合理的に正しい判断を行なっているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。
一方で今回のノーベル経済学賞を受賞したセイラー教授は、その研究成果と知見を、政策面で応用したことでも知られる。「ナッジ」として知られるこうした小さなアイデアが、ときに大きく人々の行動に変化を与え、その結果として公共政策に大きな貢献があったことは大変に興味深い。経済学の学術的な成果だけでなく、それが実際に世の中でどんなふうに使われているのかという点に関心があれば、ぜひこの分野の関連書を読んでみるとよいだろう。興味深い事例が満載で、より経済学の魅力に気づくことになるはずだ。
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