歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識
現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世には二種類の男(自分かそれ以外)しか存在しないと豪語する、あのローランドをご存知だろうか? いや、僕は知らなかったんだけどね、すまん、この本を読むまでは。
ROLAND(ローランド)
1992年生まれ。大学を入学式の翌日で辞めて、18歳でホストデビュー。歌舞伎町で数々の最年少記録を更新し、2018年には月間6,000万円を売り上げ、所属店舗の最高記録を樹立。著書の執筆や多数のメディア出演もこなしながら、自身のホストクラブ「THE CLUB」の経営や、美容ブランドを新たに立ち上げる実業家としての顔を持つなど、超多忙な毎日を送る。
ちょっとウェブ検索すれば、例えば「会話のゴールデンタイムは3秒」 現代ホスト界の帝王・ローランドさまに学ぶコミュニケーションの心得【日常生活編】といったように、数多くの記事が執筆されており、現在の人気ぶりがうかがえる。それもよく分かるのだ、本書を読み終えたいまならば。なんといっても面白い、その語録も単にノリで言っているというよりはむしろ、その背景にある経験の重みと哲学の深さまでを感じさせるのだから。
そして恐らくは、このローランドという男、ものすごく根が真面目なのだと思う。高校時代サッカー部で毎日練習に没頭した生真面目さ。ホストになってから、酒も飲まず、女性客に借金させるようなこともなく、ただただひたすら、その時間を世界一楽しく過ごして欲しい、そういう思いで接客を続けてきた結果が、歴史を塗り替える記録と、多くの女性に与えた素敵な記憶なのである。
それに加え、本書の中でも語られる、父親への敬意と、双子の妹に対する愛情。あぁきっと、この人は素晴らしい家族に囲まれ、愛があふれる家庭の中で、すくすくと育ってきたのだろうと思わざるを得ない。そういう、育ちの良さが礎になって放たれるからこそ、彼の言葉は読む者の胸にしっかりと刺さるのだろう。ホストというイロモノ職業を、色眼鏡なしで見るためにも、この一冊はもっと多くの人に読まれてよい内容だろう。ぜひともおすすめしたい。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
若い読者のための経済学史と哲学史
米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴史や文学そして経済学といった学
-
-
論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち
先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている
-
-
華麗な舞台の裏にあるプロテニス選手の過酷な生活|ランキングシステムが生んだ世界的超格差社会
2018年の全豪オープンテニスがフェデラーの優勝で幕を閉じた。自身が持つ四大大会最多優勝記録を20勝
-
-
『科研費獲得の方法とコツ』は、科研費申請予定の研究者必携の一冊
研究者にとっての秋は、科学研究費助成事業(科研費)の締切が迫る時期でもある。今年は11月10日が最終
-
-
おすすめ新刊『できる研究者の論文作成メソッド』|書き上げるための実践ポイント
以前に「できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot」でもおススメしたように、ポー
-
-
夏休みに素敵な1冊を探そう|知的好奇心旺盛な10代のための読書地図
いまどき新聞なんてほとんど読まない、そんな人が増えてきた現代である。しかしながら、書評欄を楽しみに週
-
-
5月25日は「広辞苑の日」って知ってましたか?
「ことばは、自由だ。」というキャッチフレーズでも知られる、岩波書店の「広辞苑」は、国語辞典の代表格と
-
-
「伊藤若冲と京の美術」展を観に行ってきた:奇想の画家が発見された背景
相変わらずの伊藤若冲の人気ぶりと言えよう。先日は新潟県立万代島美術館まで「伊藤若冲と京の美術」展を観
-
-
『ヤバい統計学』とテーマパーク優先パスの価格付け
『ヤバい経済学』の大ヒット以来、『ヤバい社会学』、『ヤバい経営学』と続けてきたこのシリーズ。内容その
-
-
箱根駅伝「幻の区間賞」と関東学連チーム出場の是非
来年もまた正月から箱根駅伝にくぎ付けとなってしまう、そんな人も多くいることだろう。二日間に渡るこれだ
