*

ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング

公開日: : オススメ書籍, スポーツ

冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの大学日本一を決める全国大学選手権決勝戦が先日行われ、帝京大学と東海大学という二年連続の顔合わせは、またしても帝京大学が勝利を納め、しかも大逆転勝ちで史上最多の8連覇を達成した(NHKニュース)。

 

rugby-78193_640

 

 

そこで改めて思い返したのが、2015年のラグビー・ワールドカップである。南アフリカという圧倒的な強者を相手に、ラグビー後進国の日本がまさかのジャイアント・キリングを演じたあの一戦のことだ(参考「Number なぜ巨人・南アを日本の小兵が倒せた?ラグビーW杯の“80分間すべて奇襲”!」)。それまで過去7度開催されたワールドカップにすべて出場しながらも1勝しか挙げることができていなかった日本代表には、ある種の負け根性が蔓延していた。そんな意識を根底から変革し、「勝つチーム」として生まれ変わらせたのが、この南アフリカ戦を指揮していたエディー・ジョーンズ監督である。

 

僕自身それまでラグビーに対してあまり関心をもっていなかったのだが、このワールドカップを機に、とくにエディー・ジョーンズ監督その人への興味がわき、関連書をいくつか読んでみたのだが、その中でもとくに以下の『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話』が素晴らしい内容だったのだ。そして本書の中でジョーンズ監督は、日本の大学ラグビーの問題点をいくつか指摘しつつも、その中で唯一他大学を凌駕する優れた体制で取り組んでいるのが、今回まさに前人未到の8連覇を達成した帝京大学だと述べていたのである。

 

 

ラグビー日本代表を勝利に導く名将の哲学。ラグビーワールドカップで敗北を繰り返すなど、弱かったラグビー日本代表は、なぜ世界の強豪国にも勝てるようになったのか。オーストラリア代表コーチとしてチームをワールドカップ準優勝に導いた世界的名将が組織と個人を育てるための哲学を語り尽くす!

 

 

だからこそ今、本書を思い出し読み返してみたのだが、この本の素晴らしさは、それが決してラグビーという個別スポーツの監督にとどまるものではない、ということだろう。つまり、選手ひとりひとりから最高のパフォーマンスを引き出しつつ、組織をたばね、そして勝利するという目標に向かい、監督は何をなすべきなのかについて語っており、それは駅伝だろうと、サッカーだろうと、野球だろうと、そしてもちろん、会社や大学といった組織運営にまで示唆に富む内容なのである。

 

本書の中で言及されている他、巻末には「指導者が読んでおくべき15冊」がまとめられているのだが、それがまた素晴らしいのである。なにしろそこには、米国メジャーリーグの球団運営を一新させた『マネー・ボール』や、現代サッカーを変革しつつある『サッカー データ革命』がリストアップされており、ジョーンズ監督が並々ならぬ関心をもって他のスポーツからノウハウを吸収しているのが伺える。加えてマーケティングを始めとするビジネス書も紹介されるなど、普通の監督とは一味も二味も違う、ジョーンズ監督ならではの感性を感じ取ることができるだろう。

 

rugby-573458_640

 

 

ちなみに、その『マネー・ボール』も『サッカー データ革命』も、以前に「スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析」でイチオシした名著であり、ジョーンズ監督にはぜひ今後はそのラグビー版を執筆して欲しいと願っている。ジョーンズ監督が語るように、スポーツチームのマネジメントとは、サイエンスとアートの融合であり、だからこそスポーツは監督の力によってチームが大きく変わり、それゆえに見るものを驚かせ楽しませ続けるのであろう。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

錦織圭のウィンブルドンテニス2019|好調を維持したままベスト8進出

錦織圭が今年もウィンブルドンでベストエイト進出を決めた。しかも、これまでの試合で失ったセットは一つの

記事を読む

売れっ子プロデューサー川村元気の本気の「仕事。」論

川村元気。この名前をどこで聞いたか覚えていますか?大ヒット映画『電車男』のプロデューサーとして?ベス

記事を読む

ビル・ゲイツが2013年のNo.1書籍に選んだ『コンテナ物語』

ビル・ゲイツ氏が選ぶ「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」が昨年末何かと話題となったが、その中でイ

記事を読む

conditional probability

今からでも遅くない|しっかり学ぶ統計学おすすめ教科書と関連書15選

今こそしっかり統計学を学ぼう 以前に「統計学が最強の学問である、という愛と幻想」で書いたように、こ

記事を読む

心を打つ名言、心を挫く駄言|絶版を目指した出版「駄言辞典」がおもしろい

今年出版された「駄言辞典」をご存知ですか?こんな本、知らなくてよいのかも知れない。なぜなら、最初から

記事を読む

【再掲】今年の3月14日は世紀に一度のパイの日だった

すでにご存知の通り、3月14日といえばホワイトデー、ではなくて「パイの日」と答えるのが大正解である。

記事を読む

リチャード・マシスン『縮みゆく男』と、名医ブラックジャックにも治せない病

普段は僕自身読むことも少なく、おすすめする機会もほとんどないフィクションの分野。だけどこれだけは紹介

記事を読む

中学生プロ棋士・藤井聡太四段の新たな歴史的偉業

快進撃を続けていた若干14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が、ついに、なんと、歴代連勝記録の単独トップとい

記事を読む

テニスプロはつらいよ|トッププレイヤー錦織圭とその他大勢の超格差社会

2014年の全米オープンテニスで日本人初のグランドスラム決勝進出を果たした錦織圭。その後の凱旋ツアー

記事を読む

東京五輪と同時開催していた「数学オリンピック」でも日本代表がゴールドメダル|この漫画がスゴい

東京オリンピックが閉会した。日本代表選手が獲得したメダルの数や色に一喜一憂するのは当然かも知れないが

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑