留学前に読んでおきたいこの6冊
先日書いた「留学前に。」の続き。留学前にできることは色々とあるだろうが、留学に対するイメージをよりクリアにしておくというのは、海を渡った後でとても役立つことなのではないかと思う。
詳しくは以前に「アメリカ留学ココロ構え」で書いたとおりなのだが、以下で紹介する6冊はもう決定版と言ってもいいほどの名作だと個人的には思っている。留学直前の人はもちろん、検討中の人にとっても、明暗それぞれの側面から留学のイメージを膨らませてくれる内容だ。
photo credit: FulgentKlutz via photopin cc
若き数学者のアメリカ
もう何度も紹介してきたからこれ以上言うことはない。若々しさと躍動感に満ち溢れた傑作の武者修行エッセイ。本ブログのタイトルおよび留学中の「若き経済学者のアメリカ」は、もちろん本書に大きく影響されたものだ。
明治・父・アメリカ
本書ももう何度も紹介してきたからこれ以上言うことはない。情熱と行動の若き起業家・星一がコロンビア大学修士課程で統計学を学び、その後星製薬を設立して日本の数々の病気と戦っていく。星薬科大学に現在もその名を残し、そしてショートショート作家にして本書の著者・星新一の父である。
人生越境ゲーム~私の履歴書
アメリカ経済学留学記なら、本書ほど面白いものはない。学生運動の時代に日本で戦った著者が、今度は場所を変えアメリカ・アカデミアの世界で戦う。米国経済学界における闘争の様について語るくだりは実に生々しい迫力に満ちている。
MITメディアラボ教授、石井裕
研究者にとって「オリジナルであることが命」。徹底的に「なぜ?」という問いを発して研究の本質に迫り、アメリカ競争社会で対等と見てもらうために他の研究者の「2倍働き、3倍の成果」を出してきた。屈辱感がその原動力となっていると語る。
遙かなるケンブリッジ~一数学者のイギリス
独身時代にアメリカに学んだ「若き数学者」が、大人になって今度はイギリスに滞在する機会を得る。日本人に対する差別から自分だけでなく家族をどう守るか、著者は正面から立ち向かう。
留学
以前に「留学しないという決断」でも書いたように、留学に伴うマイナス面に対しても、事前にイメージを持つことは大事だと思う。その点では、遠藤周作の『留学』ほど適した一冊はない。一躍フランスに渡ったものの、人間関係に悩み、研究に頓挫し、精神を衰弱させていく。時代は古いがその本質は現在でも変わっていないように思う。なにしろ今も、「留学&辛い」で検索する人がものすごく多いのだから。
私小説
最後にもう一冊おまけで紹介。水村美苗の『私小説』は、アメリカ暮らしが長くなり過ぎたがゆえの孤独を描いている。日本近代文学と日本語という言語を唯一つの拠り所としてきた「私」の心の底からの叫び声でもあるようだ。個人的には、同じ著者による『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』の方を面白く読んだ。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
現代アメリカ社会の象徴:メガチャーチの誕生と新たなコミュニティの創造
毎年クリスマスを迎えるたびに思い出すことがある。それは若い頃の甘酸っぱいデートの記憶、ではもちろんな
-
-
博士号だけでは不十分!研究者として生き残るために
先日懐かしく読み返した Economist 誌の記事 "Doctoral degrees: The
-
-
稲垣栄洋の植物論と生き物の死にざま
稲垣栄洋の植物論は大変におもしろい。例えば、『雑草はなぜそこに生えているのか』であれば、そもそも書名
-
-
今年度から科研費の締切が早まる|公募スケジュールの前倒しに注意
現在、科学研究費助成事業(科研費)の主な種目については、前年の9月に公募を開始し、翌年4月1日付けで
-
-
「貧困不良少年」が経済学のスターになった!
という東洋経済オンラインの記事。取り上げているのはハーバード大学経済学部教授のローランド・フライヤー
-
-
Kindle電子書籍でわくわく読む、角川書店の初心者向け数学シリーズ
今年はますます電子書籍市場の拡大に拍車がかかりそうだ。「2018年には米国と英国で紙書籍を追い抜くか
-
-
申請者必携のハンドブック『科研費獲得の方法とコツ』に最新第4版が登場|採択率を上げる書き方
今年もまた科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。多くの研究者が申請するこの科研費だが、も
-
-
プレゼンを準備する前に繰り返し読みたいおすすめの一冊『TED TALKS』
話題の一冊『TED TALKS』を読んだ。ご存知いまや圧倒的なプレゼンスを獲得したTEDカンファレン
-
-
シンガポール建国50周年|エリート開発主義国家の光と影の200年
先日で建国50周年を迎えたシンガポール。Economist や、Wall Street Journa
-
-
イェール大学出版局 リトル・ヒストリー|若い読者のための「文学史」のすすめ
以前にも「イェール大学出版局『リトル・ヒストリー』は初学者に優しい各学問分野の歴史解説」で紹介したよ
Amazon Campaign
- PREV
- プロフェッショナルのコンテナ物語
- NEXT
- 南魚沼は今が桜満開