Kindle電子書籍で手軽に読む高野秀行の探検記シリーズは、フィクションかと思うほどの強烈ノンフィクション
高野秀行という作家はものすごく強烈な個性を放っている。「高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家」でも書いたように、僕もうっかり彼の毒気にやられてしまい、今ではすっかりその虜となってしまった。そんな彼の一連の壮絶な探検放浪記を、いまではKindle電子書籍で手軽に読むことができる。まだ読んだことがない人は、ぜひこの機会に読んで欲しいし、クセになるほどの彼の経験と文章を味わってもらいたい。

credit: carlaarena via FindCC
彼の最新作『恋するソマリア』がKindle化されたばかりだが、これは『謎の独立国家ソマリランド』で、この未知なる国を紹介した著作の続編という位置づけである。
高野の数多くの著作の中からまず最初に僕がオススメしたいのがこの『イスラム飲酒紀行』だ。宗教上、酒を飲むことが厳格に禁止されているイスラムの国々を訪れ、地元民の、地元民による、地元民のための地酒を飲むっていう、ものすごい企みである。そのアイデアとセンスが抜群なのはもちろんのこと、体を張ってときには命がけで酒を飲みに行くその姿勢がすさまじい。冒頭に描かれているように、まさに「吾輩は酒飲みである、休肝日はまだない」なのである。超オススメの一冊。
続けてお薦めしたいのが、こちらの『アヘン王国潜入記』である。これは「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれる、タイ、ラオス、ミャンマーの三カ国の国境に広がる麻薬地帯を著者が訪れ、小さな村に長期滞在して自ら麻薬栽培に精を出す、というマジですか!?」っていう試み。上記のイスラム飲酒紀行に負けず劣らず、怖いものなし、というか怖いもの見たさのアタックであり、さすが早稲田大学探検部だともはや畏敬の眼差しで著者を見つめてしまう、そんな内容となっている。
そういうワセダ探検部OBであり著者が、長かった学生時代を綴ったエッセイがこちらの『ワセダ三畳青春記』。暑苦しいほどにアツく激しい学生時代を過ごした著者が述懐するあの頃は、読んでいても切なくホロリとなる。「辺境ライター高野秀行の原点『ワセダ三畳青春記』の「野々村荘」こそ日本最後の秘境」でも紹介したが、いつもの探検記とはまた異なるテイストで読ませる一冊。
続けて『未来国家ブータン』。幸せの国ブータン。このちょっぴり不思議な国を、僕も昨年旅する機会があったのだが(参考「ブータン仏教の聖地・タクツァン僧院に行ってきた」)。高野秀行がこの国をたずねると、こんなにも違った景色として描かれるのか、という驚愕の旅行記。だってフツウ、この国に雪男なんか探しに行かないでしょ・・・。

credit: permanently scatterbrained via FindCC
そんな風にして、すっかり高野秀行ファンとなってしまっていた僕が、最近購入したのが以下の3作品。まだ読んでなかったんだよね~、と今から読むのが楽しみです。上記であげたものも含め、高野秀行という探検作家をぜひとも知って欲しいと思う次第だ。ハマるよ、間違いなく。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
イェール大学出版局 リトル・ヒストリー|若い読者のための「文学史」のすすめ
以前にも「イェール大学出版局『リトル・ヒストリー』は初学者に優しい各学問分野の歴史解説」で紹介したよ
-
-
卒業・進級・入学のお祝いに|今も昔も定番の国語辞書をプレゼント
いよいよ春も近い。それはすなわち、卒業シーズンを迎え、そして進級・入学・入社といった新たな始まりを意
-
-
言葉にできない、そんな夜。|その気持ち、言葉のプロならどう表現する?
気持ちが揺れ動いたあの瞬間。表現したいのにボキャブラリーが追いつかない!言葉のプロの脳内を通したら、
-
-
【おすすめ経営書】ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか
話題の経営書『ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか』を、とても興味深く読んだ。著者はピータ
-
-
英国一家、最後に日本を食べる&お正月スペシャル
コアな人気を博していたNHK深夜アニメ「英国一家、日本を食べる」。ベストセラーとなった原作も素晴らし
-
-
『ヤバい統計学』著者による新作『ナンバーセンス』で知る、アメリカ大学ランキングの舞台裏
以前に「テーマパーク優先パスの価格付け」でも紹介したように、カイザー・ファング著『ヤバい統計学』は、
-
-
日本将棋マネーリーグ|今年も賞金ランク首位は豊島将之竜王、藤井二冠は?
先日は毎年恒例の「欧州サッカー・マネーリーグ」が発表され、今年もスペインのFCバルセロナが収入ランキ
-
-
辞書は時代を映す「かがみ」|新語に強い三省堂国語辞典が8年ぶりの全面改訂
いよいよ登場、国語辞典の大本命、三省堂国語辞典(通称サンコク)の最新第8版! 創刊当初より、辞書とは
-
-
華麗な舞台の裏にあるプロテニス選手の過酷な生活|ランキングシステムが生んだ世界的超格差社会
2018年の全豪オープンテニスがフェデラーの優勝で幕を閉じた。自身が持つ四大大会最多優勝記録を20勝
-
-
ここで今こそ学ぶ倫理です。
1/16土曜からNHKで放送が始まるドラマ『ここは今から倫理です。』は2021年大注目の一作と言える