ちょっとブータンまで行ってきた。
公開日:
:
最終更新日:2016/12/26
海外
久しぶりの更新となってしまったが、先日までブータンに行っていたのである。中国とインドに挟まれた人口約70万人の小国ブータン。ヒマラヤ山麓に位置し、世界で唯一チベット仏教を国教とする国。そして、世界で一番幸せな国を宣言する国でもある。
2011年には大震災後の日本を、結婚したばかりの若き国王と王妃が訪れた。福島の被災地を訪問し、国会でスピーチを行い、日本でもプチ・ブータンブームが起こったらしい。らしいというのは、当時僕はアメリカに留学中であり、その報道に触れる機会がほとんどなかったから。
だから今回僕がブータンを訪れることになっても、この国のことを知っている人が意外に多くいて(僕は今回を機にブータン本をいろいろ読んで知ることが多かった)、既に訪れたことがある人や、これから訪れてみたいという人も多くいた。
そんなブータン王国へは、国営航空会社のドゥック・エアーで向かった。「ドゥック」とはブータンの国旗に描かれた雷竜を意味し、機内で配られたナプキンの刺繍までが何だかカッコよく見える。
当日は天気にも恵まれ、飛行機の外には、雲の上にヒマラヤの峰々が顔を出していた。こうした高い山に囲まれた内陸国のブータンは、長い間外の世界から隔離されてきた。それゆえに、地上最後の秘境シャングリラと呼ばれ続けた場所でもある。この素晴らしい眺望に、ついにこの地にやってきたのだと興奮は高まる。
そして到着、ブータン王国の玄関パロ空港。この空港も標高の高い場所に建設されており、機体は山肌をかすめるようにして離着陸せざるを得ない世界有数の難所。パイロットの腕を信じるしかないのだが、なかなかスリリングな着陸だった。また、山の天気は変わりやすいため発着の遅延は日常茶飯である他、朝から午後早い時間までしか空港は使われていない。
そしてこれが、機体に描かれたブータン王国のシンボル「雷竜」だ! どうだこのヒマラヤの青空に映えるカッコよさ!
乗客はみな興奮気味にブータンの大地に降り立ち、この機体写真を何枚も撮っている。こんなに愛されている航空会社もそうないと思う。また、空港の建物群が放つ異世界の雰囲気に飲み込まれ、ただただ立ち尽くす、そんな人も多かった。到着してからなかなか入国審査の手続きに向かわない人たちっていうのも、この空港ならではの光景なのではないだろうか。
空港正面では若き国王と王妃の巨大写真が出迎えてくれる。後々知ることになるのだが、ブータンでは町中の至る所に国王の写真が飾ってあり、どんだけ王室ラブなのかと思ってしまう。本当に愛されている王室なのだ。
そして入国手続を済ませ、空港の外に出た僕を待っていたのがこの二人。ガイドのドゥルジ君と、運転手のハシィ君だ。
ご存じの方もいるだろうが、ブータンでは現在も海外からの旅行者にいくつもの制約が課せられている。その最たるものが公定料金の存在であり、滞在一日につき米ドルで$250が課せられている。そしてこの金額に、ガイドと運転手代、ホテル宿泊料、そして一日三度の食事まで必要な物がすべて含まれている。だから現在のところ、格安旅行でブータンを訪れるというわけにはいかず、どうしても一定金額がかかってくる。だが、それが人口70万人の小国ブータンにとっては、抱えられないほどの旅行者の増加を防ぐことに繋がっているのもまた事実である。
そんなブータンを訪問する前に僕が読んでいったのが以下の書籍。長いこと謎に満ちた国であったブータンも、国王と王妃の来日に伴って関心も高まり、最近では日本人旅行者も増えているようだ。関連書も多く出版されるようになってきて、この国の独特の文化や歴史を前もって知ることができた。
ブータン、これでいいのだ
マッキンゼーのコンサルタントが、ブータンの首相直轄組織で公務員として働いた経験をもとにしたエッセイ。著者が友達になったブータンの若者を題材に、彼ら彼女らの価値観を描き出した好著。僕も思わず、ガイドのドゥルジ君や、運転手のハシィ君に、同じようなことを聞いてみた。ブータンに関心があるなら、まずはおすすめしたい一冊。
幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔
ブータン王妃(前国王の妻)が紹介するブータンの特徴と魅力。自然や歴史に固有のものが多いブータンについて、王妃が自ら語ってものとして貴重な一冊。プライベートについても話しており、この国と国民から愛され続ける王室を理解する一助となる。
ブータンに魅せられて
ブータン国立図書館に勤務したというユニークな経験を持った著者による一冊。チベット仏教研究者として、様々な困難の末にブータンで働く機会を得た喜びが伝わってくる内容。それと同時に赴任者ならでは、研究者ならではの観察眼で、ブータンという国の個性を描き出した好著。
ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか
2012年出版の本書は、現在の国王と王妃を中心に、ブータンの王室とその歴史を振り返る。2011年に実現した国王&王妃の来日にもページを割いており、最新のブータンを知るという点で役立つ一冊。
というわけで、このブータンという国に僕もすっかり魅せられて帰ってきたのだが、その魅力については今後より詳しく紹介していきたいと思う。ブータン、いいぞ!
Amazon Campaign
関連記事
-
キューバに行くなら今が最後のチャンス:アメリカ人観光客が殺到する前に
今年の「ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所」でも書いたように、今キューバが
-
海外で研究者になる|知られざる就職活動その舞台裏
日本人が数多く海外留学していることに比べると、海外で就職する例はまだまだ少ないと言えるだろう。とくに
-
ブータンではみんな王室と国王と王妃が大好き
というわけで「ちょっとブータンまで行ってきた。」の続き。ブータンは王国であり、現在は若き国王と王妃が
-
中央アジア訪問記:遊牧民の末裔キルギス
先日の安倍首相の中央アジア歴訪に続き、今度は米国ケリー国務長官が中央アジア五か国を訪問している(NH
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2015年版
昨年「ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所」で書いたように、同紙では毎年1月
-
ヒマラヤの山麓、ブータンの春、そしてツェチュ祭:世界で一番美しい瞬間
NHK-BSの番組「世界で一番美しい瞬間(とき)」。先日特集されたのが「満月の夜 祈りのとき ブータ
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2016年版
さて今年もこのシーズンがやってきましたね。ニューヨーク・タイムズ紙が発表する「今年絶対に行きたい世界
-
ブータン仏教の聖地・タクツァン僧院に行ってきた
ブータン訪問記の続き。 ちょっとブータンまで行ってきた。 ブータンではみんな王室と国王と
-
西水美恵子著『国をつくるという仕事』が称賛する、ブータン国王のリーダーシップ
ブータン訪問記の続き。 ちょっとブータンまで行ってきた。 ブータンではみんな王室と国王と
-
中央アジア訪問記:シルクロードの要衝ウズベキスタン
報道の通り、先週から安倍首相がモンゴルおよび中央アジア5ヶ国を訪問している(NHKニュース)。しかし
Amazon Campaign
- PREV
- ニューヨーク・タイムズと朝食を
- NEXT
- 科研費採択のお知らせ届く