おすすめ新刊『できる研究者の論文作成メソッド』|書き上げるための実践ポイント
以前に「できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot」でもおススメしたように、ポール・シルヴィアの著書『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』は、大学院生・研究者にとって非常に役立つ一冊である。
「いかに論文を書くか」ではなく「いかに書き続けるか」という視点から、タイム・マネジメントの重要性を著者はとことん強調する。著者自身の研究分野は心理学ではあるが、どの専門にも当てはまるアドバイスが続き、極めて有益な内容だ。まだ読んでいないのなら、ぜひ今のうちに、早いうちに読んでおいた方が絶対によい書籍と言えるだろう。「2016年のベストセラー書籍トップ10冊」にランクインした一冊でもあり、イチオシのライティング書となっている。
全米で話題の「How to Write a Lot」待望の邦訳!いかにして多くの本や論文を執筆するかを軽快に解説。雑用に追われている研究者はもちろん、アカデミックポストを目指す大学院生も必読!人生が変わる。
【“訳者あとがき”より】
論文の書き方に関する指南書はこれまでも数多く出版されているが、本書が画期的なのは、いかにして論文執筆のモチベーションを上げ、精神的負担を軽くして論文執筆に取り組めるようにするかについて、メンタルな面を含めて冷静に分析し、その解決策を誰にでもわかるように明瞭に提示している点だろう。
そして、そんな本書にはじつは続編があるのである。原著では “Write It Up: Practical Strategies for Writing and Publishing Journal Articles” と題された一冊がそれであり、僕自身こちらもとても興味深く読んでいたものである。その内容は以前に「できる研究者の論文執筆術:Write It Up」で紹介した通りなのだが、本書が以下のようにようやく翻訳出版されたようなので、ぜひここで改めておススメしておきたい。
どうすれば「インパクトがある論文」を書けるのか。「本当に使える!」と大好評の『できる研究者の論文生産術』に続く第2弾!原稿の各種スタイルはもちろん、雑誌の選び方、共著論文執筆のヒント、投稿後の対応など実践ポイントを解説した。爽快でユーモア溢れるシルヴィア節は健在で、初めて英語論文を書く大学院生に有益この上ない!
【訳者あとがき】
本書は、2014年に出版されたポール・J・シルヴィア(Paul J. Silvia)『Write It Up: Practical Strategies for Writing and Publishing Journal Articles』の邦訳で、同じく2007年に出版された『How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing』(『できる研究者の論文生産術―どうすれば「たくさん」書けるのか』講談社(2015))の続編ということになる。重点が「ともかく書く」ことにある前書と、「インパクトがある論文を書く具体的手順」にある本書は、2冊で1冊ともいえる関係にあり、どちらを先に読んでも楽しめる。本書の目標は、《インパクトがある論文》を書くことだ。「論文はインパクトが大切だ。ただ発表すればよいというものではない」の一文(6ページ)に示される通りである。そして、そのための具体的な手順―豊富な執筆・査読経験に根ざした具体的なノウハウや匙(さじ)加減―がステップごとに伝授される。一般的手順にとどまらず、なぜ多くの研究者、特に初心者が、《インパクトがある論文》でなく《どんな論文でも出せればいい》という状態に陥ってしまうのかがユーモアを込めて明快に指摘されているので、執筆のモチベーションがあがり、精神的負担が軽くなる。このあたりは、心理学者の面目躍如たるものだろう。
本書の中で著者はより具体的に、論文を投稿するにあたってどのジャーナルを選び、どのようなスタイルで書くのか、そしてさらには論文の各章をどのようにまとめるのか、といった極めて実践的なアドバイスを読者におくる。こうした内容ももちろん、著者の専門分野である心理学に限定されることなく、より広く社会科学全般および自然科学においても通じる指摘と言えるだろう。
「インパクトがある論文」とは何か、いかにしてそのような論文を書き、そして書き続けるのか?そこに関心があるならば、本書はまさに必読の一冊と言ってよいだろう。タイム・マネジメントを扱った著者の前作『できる研究者の論文生産術』と合わせ、ぜひ読んでみてください。
また、その他の英語論文アカデミック・ライティングに関する書籍は、以下で紹介したものがイチオシなので、こちらもぜひ合わせてご参考ください。
- 英文ライティングここから始める必読テキスト4選
- よりモダンでクリアな英作文テキスト3選
- アカデミック・ライティングの決定版テキスト
- スタイルとフォーマットで学ぶアカデミック・ライティング
- 英文ライティングの新定番テキスト “The Sense of Style”
Amazon Campaign

関連記事
-
-
2015年ことしのベストセラー|紙書籍編
先日の「ベストセラー電子書籍編」に続き、今回は本ブログ経由でよく読まれた紙の書籍編を紹介しよう。以下
-
-
少年よ、大木を抱け。WOOD JOB!
本屋大賞を受賞した三浦しをん『舟を編む』で思わず国語辞典にはまってしまった僕が、その後辞書を一式揃え
-
-
サッカー日本代表W杯開幕戦:日本のサッカーを強くする25の視点
あと数時間で、日本対コートジボワール戦のキックオフ。おそらく今回も相当大勢の日本人が、このときばかり
-
-
2016年のベストセラー書籍トップ5冊【国語辞典編】
先日まとめた「2016年のベストセラー書籍トップ10冊【一般書籍】」および【英語編】に続き、本ブログ
-
-
2015年ことしのベストセラー|人気の国語辞典ランキング
「電子書籍編」および「紙書籍編」に続いて、今回は本ブログ経由でもっとも多く選ばれた国語辞典の紹介であ
-
-
学会@台北と、羽田空港-松山空港の圧倒的な便利さ
先日は、Asian Meeting of the Econometric Society にて研究報
-
-
天才・奇才のおうち時間|日本に残る最後の秘境・東京藝術大学生の華麗な日常
NHKで放送中の「金曜日のソロたちへ」という番組をご存知だろうか? これは、「ひとり暮らし拝見バラエ
-
-
イェール大学出版局 リトル・ヒストリー|若い読者のための「考古学史」のすすめ
以前にも紹介したことのある、「イェール大学出版局 リトル・ヒストリー」のシリーズ。いまのところ5冊が
-
-
好きなことだけを仕事にした、新潟県三条市の世界的アウトドアメーカー「スノーピーク」の経営
新潟県三条市に、あのアップルも見学に来る企業があるのをご存知だろうか?それがアウトドアブランドの「ス
-
-
将棋の子|奨励会年齢制限と脱サラ棋士のプロ編入という奇跡の実話
映画『泣き虫しょったんの奇跡』が公開されている。まだ観ていないのだが、もちろんこの実話はとてつもなく