*

プロテニスプレイヤーの憂鬱|男女格差と上下格差の歴史と現状

公開日: : 最終更新日:2022/07/03 スポーツ, データ

ウィンブルドンテニスで今年も熱戦を繰り広げられるなか、Financial Times の記事 “Don’t blame market forces for female tennis stars being short-changed” を興味深く読んだ。それによると、ウィンブルドンでは2007年からは男女の賞金が同額に設定されているということだ。これは他のプロスポーツを見渡せば、まだまだ珍しい男女差なし、ということになるだろう。例えば、サッカー日本代表をみたって、男子サムライブルーはいつも女子なでしこよりも好待遇であり、結果がでないときにはとくにそれが批判されてきたわけである。

 

一方のテニスにおいては、ウィンブルドンを含めた四大グランドスラムですべてが男女同額になっているのだが、そこに至るまでには長い長い歴史がある。ちなみにグランドスラムのうち最も最初に同額設定となったのが、1973年の全米オープンなので、ウィンブルドンはそれに比べて随分と遅れてからの対応となった、といえる。こうした歴史については日経新聞の記事「全米テニス、高額優勝賞金 男女同額へ奮闘の歴史」に端的にまとめられているので、興味がある方はぜひご覧頂きたい。

 

一方で、先のFT誌の記事が指摘するのは、グランドスラムでは同額となっている一方で、他の一般テニストーナメントではむしろ男女賞金格差が拡大傾向にあるということだ。グランドスラム以外では、男女ともに3セットマッチなのだから、「男子は5セット戦うから」という言い訳は通じない。また、男子の試合の方が視聴者数が多くビジネスの規模が違うという指摘にも、必ずしも同意する者ばかりではないというのは、日経新聞の記事でも指摘されている通りだ。

 

そして関連して僕が思い出すのが、プロテニスというのは、男女ともにトッププレイヤーと下位選手の格差があまりにも大き過ぎ、絶望するほどの断絶がある世界だということだ。そんなことなんとなく知っていたような気もしていたが、本書『テニスプロはつらいよ』を読むと、いやほんと読んでいるだけで胃が痛くなるほど辛さが伝わってくるのである。だって、日本人男子プロテニスプレイヤーと聞かれて、錦織以外の名前を挙げられる人どれくらいいますか? もちろんどの世界もプロは厳しいというのは当たり前のことだ。それでもなお、若い頃からテニス漬けの青春時代を過ごし夢を追い続けてきた若者にとって、もう少しココロ休まる時間があってもよいのでは、というのは甘いのかしら。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

puma

サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊

データ革命が加速する世界最先端の現代サッカー 「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカ

記事を読む

ラグビー新リーグ開幕|注目は経営のプロが率いる「静岡ブルーレヴズ」

日本ラグビーのリーグ戦が新たに「リーグワン」として生まれ変わり、2022年1月8日に開幕戦を迎えた(

記事を読む

ウィンブルドン決勝ジョコビッチの優勝をデータで振り返る

さて先日の「テニス・ウィンブルドン決勝|ビッグ・データを制するのは誰だ?」にも書いたように、僕は今年

記事を読む

japanese igo

日本囲碁マネーリーグ|賞金ランク首位・国民栄誉賞の井山裕太

さてさて、1-2月にかけては毎年、それまでの一年間の各種ランキングが発表されることが多い。僕自身が毎

記事を読む

全米オープンテニスを Slam Tracker でデータ観戦しよう

いよいよ全米オープンテニスが始まった。それと同時に錦織圭の初戦敗退。大変残念だけれども、それだけグラ

記事を読む

ワールドカップで大番狂わせを狙え|サッカー監督の世界級チームマネジメントの極意

2022年という年は、やはりサッカー・ワールドカップでの日本代表の活躍が強烈な印象として残っている人

記事を読む

フェイスブック・データでみるバレンタインデー|世界中が愛を込めて

いつの間にかバレンタインじゃないですか、諸兄の皆様方、心の準備はOK? さて、昨年のこの時期にも「バ

記事を読む

emotional highs and lows in facebook

『ヤバい予測学』とフェイスブックデータが示す感情の起伏

フェイスブックのデータ・サイエンティストたちは毎度興味深いデータを見せてくれる。それは「フェイスブッ

記事を読む

グランドスラム初優勝を目指す錦織と大坂|データで観戦する全米オープンテニス

現在熱戦が繰り広げられている今年の全米オープンテニス、錦織圭と大坂なおみのそれぞれベスト8進出をかけ

記事を読む

ワールドカップ決勝へ|ラグビー名将エディー・ジョーンズの勝負哲学

ラグビー・ワールドカップが面白い。まったくもってニワカなんですが、ルールが分かるとラグビーってこんな

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑