*

少年よ、大木を抱け。WOOD JOB!

公開日: : 最終更新日:2016/12/26 オススメ書籍

本屋大賞を受賞した三浦しをん『舟を編む』で思わず国語辞典にはまってしまった僕が、その後辞書を一式揃えてみて、それぞれの個性を楽しんでいるというのは、以前書いたとおりだ。

 

  1. 学校で教えて欲しい国語辞典の選び方・使い方・遊び方:複数の辞書を使い分けろ
  2. 国語辞典を選ぶならこの3冊:ケンボー先生の三国・山田先生の明解・オーソドックスな岩国
  3. サンキュータツオが薦める明鏡国語辞典:「問題な日本語」に対する答え

 

 

その著者・三浦しをんは、いくつかの雑誌インタビューで話しているように、「仕事」と「働く人」に並々ならぬ関心を持って小説を書いているという。だからこそ、辞書編纂のような誰もが重要だと分かっていても、その具体的な仕事ぶりについて知っている人が少ないような職種に惹かれるという。

 

forest

photo credit: 私の森.jp

 

そんな著者が、『舟を編む』以前に発表していた作品『神去なあなあ日常』が映画化され、ちょうど先週から公開されているところだ。その名も、WOOD JOB! だ。これ面白い。もちろん映画はまだ観ていないのだが、原作が大変にイイ味出しているのだ。まさか、携帯電話も使えないような山奥の村で林業に携わる仕事師たちを主人公に据えるとはね。それこそグッジョブ。

 

movie wood job

 

物静かに話が進んでいくインドアの『舟を編む』に対し、映画の原作『神去なあなあ日常』はまさに動そしてアウトドアと、極めて好対照をなしている。そしてそれは、作者のアプローチの幅広さの証でもある。いずれにしろ、この『神去なあなあ日常』には、日本の田舎の林業が抱える厳しい現状や狭いコミュニティならではの息苦しさとともに、そこに生きる人たちの可笑しく愛しい暮らしぶりが、それこそ作者の愛情が目いっぱいにそそがれて描写されているのである。

 

『舟を編む』で三浦しをんを知った人にはぜひ本作で三浦作品のまったく別の魅力を、そうでなければ本作そして今回の映画から、三浦作品を知るっていうのもありだろう。映画公開に合わせ、現在キンドル版がシリーズ2作ともに大幅セール中。この機会にぜひ一読をおすすめしたい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

ワールドカップ決勝へ|ラグビー名将エディー・ジョーンズの勝負哲学

ラグビー・ワールドカップが面白い。まったくもってニワカなんですが、ルールが分かるとラグビーってこんな

記事を読む

山に登るということ:登山と遭難とそして救助

2008年のマンガ大賞にも選ばれた、山岳漫画『岳』。いまさら言うまでもないが、これものすごく胸を打つ

記事を読む

これは経費で落ちません|経理部が見つめる人間模様

NHKで現在放送中のドラマ「これは経費で落ちません!」が面白い。多部未華子が演じるアラサー独身女子・

記事を読む

takoyaki

米国人一家と英国一家が美味しい日本を食べ尽くす

ちょっぴり巷で評判の『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』を読んでみたら、これが思いの外おもしろか

記事を読む

タイトル戦相次ぐ藤井聡太の夏|今こそ将棋が熱く面白い

プロ棋士・藤井2冠の夏がやってきた。昨年はタイトル棋聖と王位を獲得し、その初防衛戦が始まっているのだ

記事を読む

新中学生・高校生から新社会人にまでおすすめする国語辞典4選|辞書それぞれの個性を理解して選ぼう

中学生・高校生から新社会人まで必須アイテムとしての国語辞典 春から新たに中学校・高校・大学に入学す

記事を読む

NHK短編ドラマ・星新一の不思議な不思議な世界

7/4月曜から始まるNHKの短編ドラマは大注目だ。なにしろ、あのショートショートの傑作をこれまで千編

記事を読む

マッサン・ブームに乗っかって、ウィスキー「余市」を飲んでみた:今まで飲まず嫌いでごめんなさい

ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝と、その妻リタをモデルとしたNHKの朝ドラ「マッサン」が面白い。い

記事を読む

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる「作者の意図は?」といった問い

記事を読む

行動経済学者ダン・アリエリーの最新TEDトーク|How equal do we want the world to be? You’d be surprised

行動経済学者ダン・アリエリーが、TEDトークに登場。これで合計5回目となる彼のトークは、経済学者とし

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑