*

30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方

公開日: : 最終更新日:2018/10/02 Kindle, オススメ書籍, 英語

中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深く読んだ。出版から2年で30万部を売り上げたベストセラーとのことだが、読んでなるほど納得、大変勉強になった。

 

まず著者の略歴と、本書執筆の動機が極めてクリアでリアルなのがいい。本書の著者・中山裕木子氏は、企業で技術分野の日英翻訳に従事するというキャリアを歩んできた。その後、特許事務所でさらに細かい特許明細書の日英翻訳に携わるなか、英語のテクニカル・ライティングを学び、特許申請のような極めて難解な内容であったとしても、平易で明快な英語で書類を書かなければ、その中身が相手にきちんと伝わらないことを痛感する。そうした経験が、本書『英語は3語で伝わります』執筆の大きな原動力となっているのだ。

 

この「3語」とは、主語・動詞・目的語の3つであり、日本人が中学生で学ぶアノ「SVO」である。まさかこんなところで再びSVOにお目にかかるなんて!などと思ってはいけない。なにしろ、動詞を制するものが英語を制するといってもいいくらい重要なのが、この動詞なのだから。例えば、メイン例題として掲げられているように、”My job is an English teacher.” というのも文法的にはもちろんOKなんだけど、だったら “I teach English.” って言えばいいじゃない、というのが本書のメッセージなのだ。確かに全くその通りであり、同じ内容が伝わるのであれば、語数は少ない方がよい。

 

その意味でも、本書で最も重要なパートは、間違いなく「第2章:「3語の英語」は動詞が決め手」と言えるだろう。「動詞の使い方をほんの少し変えるだけで、一気に伝わる英語になります。」と説明されているように、動詞のバリエーションが広がるだけで、ぐっと英語の表現力が増し、だからこそそんな「パワフル英単語」をいくつも用意しておこうというのが、以前に書いた以下のようなエントリでも伝えたかったことだ。

 

そして、そんなパワフル英単語(とくに動詞)の使い方をみっちりと教えてくれるのが、以下の3冊である。Kindle版は現在のセールで大変お買い得となっているが、この3冊で紹介される、そんなパワフル英単語に置き換えるだけで、英語の表現がぐっと力強く説得的になるのだ。もちろん先程書いたように、動詞を使うことによって文章に必要な単語数を減らせるというメリットもある。ぜひこうしたシリーズで、動詞の重要性を再確認してみて欲しい。

 

 

 

というように、中山裕木子著『会話もメールも英語は3語で伝わります』は、実にキャッチーなタイトルを付けているが、その内容は実に誠実で真面目である。日本語をそのまま英語に直訳したようなぎこちない文章ではなく、平易で明快な表現を目指すのであれば、なおさら英語の動詞、とくにパワフル動詞に注目してみて欲しい。そういう基本的な視点を思い起こさせてくれるという点でも、本書は実に優れた一冊であり、大ベストセラーとなっているのもうなずける。英語初心者というよりは、もう一歩上の、次のステップの英語表現力を目指している人にこそ、読まれるべき内容と言えるだろう。おすすめです。

タイトルの「3語」とは、学校で英語を少しでも学んでいれば見覚えがあるだろう、「主語・動詞・目的語」(SVO)のこと。たとえば、「私は新製品の企画を行っています」という文章を「I am making a plan for new products.」と訳しても、文法的には間違いではない。だが本書がすすめるのは、「I plan new products.」と訳す発想だ。文法的な正しさ、内容の正確さは同じ。しかし、よりシンプルで伝わりやすい。英語を母語としない人が迷いがちな、冠詞や前置詞といった要素も文章から減らせている。極めて明快かつ実践的なロジック。こうした内容が、英語学習の初心者から、文法偏重の詰め込み教育で身につけた知識の一歩先を目指す人まで、幅広い層に支持され、ヒット作の多い英語学習書の中でも頭ひとつ抜けた売れ行きを見せている。

「著者はもともとTOEICで950点くらいのスコアをお持ちだったそうなのですが、就職してみると自分の英語がまったく仕事では通用せず、その後、特許翻訳という特殊な業務に携わるようになってさらに苦労されたそうなんですね。そうした中で、難しかった英文がSVOを使うと簡単になる経験をされた。本書の内容は、とてもきちんとしたバックボーンを持った人が、苦しみの中で編み出した方法論なんです」(担当編集者の中村明博さん)

タイトル詐欺のような本も多いジャンルだが、本書は別物と見て間違いない。

評者:前田 久(週刊文春 2017.06.08号掲載)

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

アカデミックライティングにおすすめの英語辞典|コロケーションとシソーラスも一緒に学ぶ

Oxford Learner's Dictionary of Academic English がお

記事を読む

今年度から科研費の締切が早まる|公募スケジュールの前倒しに注意

現在、科学研究費助成事業(科研費)の主な種目については、前年の9月に公募を開始し、翌年4月1日付けで

記事を読む

将棋の子|奨励会年齢制限と脱サラ棋士のプロ編入という奇跡の実話

映画『泣き虫しょったんの奇跡』が公開されている。まだ観ていないのだが、もちろんこの実話はとてつもなく

記事を読む

ゴリラ研究者にして京都大学新総長・山極寿一『「サル化」する人間社会』が、もんのすごく面白かった

現在シーズン2が放送中のNHKスペシャル「ホットスポット」。先月放送された第一回の「謎の類人猿の王国

記事を読む

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」でも紹介していたように、 宇宙

記事を読む

若き天才たちの下北沢青春物語|90年代東京のお笑いがスゴイ

これは、めちゃくちゃ面白い! まだ1月なのに、早くも2022年のベスト・ブック・オブ・ザイヤーに選出

記事を読む

2022年将棋賞金ランキング発表|藤井聡太5冠が1億円超で堂々の首位

将棋連盟から2022年の獲得賞金・対局料ベスト10が発表されましたね。毎年この時期の恒例であり、名

記事を読む

新中学生・高校生から新社会人にまでおすすめする国語辞典4選|辞書それぞれの個性を理解して選ぼう

中学生・高校生から新社会人まで必須アイテムとしての国語辞典 春から新たに中学校・高校・大学に入学す

記事を読む

寝苦しい今夜も嫁を口説こうか|珠玉の芸人エッセイ3冊

以前にも何度かおすすめしてきたように、お笑い芸人が書くエッセイには、なかなかに読ませる面白いものが多

記事を読む

今からでも遅くない「行動経済学がわかるフェア」

「今年のノーベル経済学賞は『行動経済学』のリチャード・セイラーに」でも書いたように、2017年の受賞

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑