*

バッタの大群襲来|書籍『バッタを倒しにアフリカへ』が現実に

公開日: : 最終更新日:2019/12/27 オススメ書籍, ニュース

以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」でも書いたように、昨今にわかに昆虫ブームなのはご存知の通りだ。香川照之がハジけた解説をするNHK番組「昆虫すごいぜ!」がおもしろ楽しいだけでなく、そのご昆虫展へと広がりを見せたり、昆虫食に対する関心が急速に高まったりと(例えば、書籍『昆虫は美味い!』や、記事「渋谷パルコで虫ランチ」等)、ちょっと前と比べると、明らかに昆虫を巡る環境と認識が激変しているのだ。

 

さて、そんななか飛び込んできたのが、この緊急ニュースだ(ロイター「バッタの大群が襲来、ソマリアで数十年ぶり最悪の被害」)。

アフリカ東部のソマリアで21日、サバクトビバッタの大群による被害が拡大した。同国ではすでに、何万ヘクタールもの農地が被害を受けている。サバクトビバッタはすでに、国内の数万ヘクタールもの農地や放牧地を破壊。過去25年間で最悪の被害をもたらし、家族を養うための食料を、多くの人が失った。バッタの大発生はすでに、国連食糧農業機関(FAO)の予測を超えている。

 

 

 

そして、このニュースを聞いてまっさきに思い出したのが、サバクトビバッタの研究者として第一人者に間違いないであろうと思われる、通称「バッタ博士」の異名をとる、前野ウルド浩太郎氏である(ちなみに、なぜ「ウルド」なのかは、彼の会心の著書『バッタを倒しにアフリカへ』にその経緯が明らかにされている)。さて、本書は以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」で激オススメしたように、めちゃくちゃ面白いんです。その研究内容と波乱万丈のアプローチは、まさに手に汗握る傑作の物語であり、文中いや道中どうしても読んでいるこちらまで感動を抑えられない、そんなアツい研究者による一冊なのだ。今回、数十年ぶりにバッタの大群が大発生し、世界的にも問題となっている今こそ、絶対に読んで欲しい内容である。

 

「大学院を出て、ポスドクとして研究室にいた頃は、安定した職もなく、常に不安に苛まれていました。博識でもなく、誇れるような実績もない。友達と楽しく飲んでいても、トイレにたったときに研究の手を止めた罪悪感に襲われる日々でした。なので、一発逆転を狙おうと」

日本ではスーパーで売っているタコの産地として知られるモーリタニア。バッタ研究者だった前野さんは、思い立って一路モーリタニアへ。このたび、かの地で経験した一部始終を記した『バッタを倒しにアフリカへ』を出版した。

「サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えています。私はこのバッタの研究者なのに、人工的な研究室で飼育実験ばかりしており、野生の姿を見たことがなかった。自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました」

本書は、現地の言葉(フランス語)もわからずに飛び込んだ前野さんの冒険の記録でもある。

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
光文社 (2017-05-26)
売り上げランキング: 905

 

 

そして以下の一連の昆虫シリーズ本は、虫好きにはもちろんのこと、ちょっと怖いものを見てみたいムシ初心者の方にまで、ものすごくおすすめですよ。

 

昆虫はすごい (光文社新書)
光文社 (2014-09-12)
売り上げランキング: 15,766
昆虫はもっとすごい (光文社新書)
光文社 (2015-09-18)
売り上げランキング: 142,484
きらめく甲虫 (幻冬舎単行本)
幻冬舎 (2015-08-07)
売り上げランキング: 80,802
とんでもない甲虫 (幻冬舎単行本)
幻冬舎 (2019-07-10)
売り上げランキング: 130,682

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

most popular sport in the U.S. is NFL

アスリートとお金|有望産業としてのプロスポーツビジネス

いよいよ東京五輪が始まり、改めて注目されるのが今後のスポーツとお金の関係だ。とくにプロスポーツビジネ

記事を読む

2014年、本ブログでのベストセラー:Kindle版および書籍版

今年もいよいよ終わり。ということで、この一年間の本ブログ上でのベストセラーを発表しよう。Kindle

記事を読む

申請者必携のハンドブック『科研費獲得の方法とコツ』に最新第4版が登場|採択率を上げる書き方

今年もまた科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。多くの研究者が申請するこの科研費だが、も

記事を読む

あなたの知らない、世にも美しき数学者たちの日常

「日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日」でおすすめした、二宮敦人の『最

記事を読む

新中学生・高校生から新社会人にまでおすすめする国語辞典4選|辞書それぞれの個性を理解して選ぼう

中学生・高校生から新社会人まで必須アイテムとしての国語辞典 春から新たに中学校・高校・大学に入学す

記事を読む

「ヘンな論文」を書き続ける動機と勇気

高学歴の芸人と言えば? という問いに、ロザンの宇治原と応えるのではあまりにもフツー過ぎる。もう少しツ

記事を読む

今年のM-1優勝はミルクボーイ|松本人志はじめ審査員の採点と評価コメントにこそ大注目

2019年、令和最初のお笑い王座を決める M-1グランプリは、決勝初出場にして史上最高点を叩き出した

記事を読む

今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」のリチャード・セイラーに

今年のノーベル経済学賞が発表され、行動経済学についての貢献が評価され、シカゴ大学のリチャード・セイラ

記事を読む

japanese dictionaries 1

国語辞典業界最大の謎がいま明らかにされる|辞書になった男ケンボー先生と山田先生

近年まれにみるほどの傑作ノンフィクション『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』が、待望の文庫化・

記事を読む

文庫で学ぶ行動経済学

昨年は間違いなく統計学がブームとなった一年だった。「今年続けて読みたい統計学オススメ関連書と教科書1

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑