バッタの大群襲来|書籍『バッタを倒しにアフリカへ』が現実に
以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」でも書いたように、昨今にわかに昆虫ブームなのはご存知の通りだ。香川照之がハジけた解説をするNHK番組「昆虫すごいぜ!」がおもしろ楽しいだけでなく、そのご昆虫展へと広がりを見せたり、昆虫食に対する関心が急速に高まったりと(例えば、書籍『昆虫は美味い!』や、記事「渋谷パルコで虫ランチ」等)、ちょっと前と比べると、明らかに昆虫を巡る環境と認識が激変しているのだ。
さて、そんななか飛び込んできたのが、この緊急ニュースだ(ロイター「バッタの大群が襲来、ソマリアで数十年ぶり最悪の被害」)。
アフリカ東部のソマリアで21日、サバクトビバッタの大群による被害が拡大した。同国ではすでに、何万ヘクタールもの農地が被害を受けている。サバクトビバッタはすでに、国内の数万ヘクタールもの農地や放牧地を破壊。過去25年間で最悪の被害をもたらし、家族を養うための食料を、多くの人が失った。バッタの大発生はすでに、国連食糧農業機関(FAO)の予測を超えている。

そして、このニュースを聞いてまっさきに思い出したのが、サバクトビバッタの研究者として第一人者に間違いないであろうと思われる、通称「バッタ博士」の異名をとる、前野ウルド浩太郎氏である(ちなみに、なぜ「ウルド」なのかは、彼の会心の著書『バッタを倒しにアフリカへ』にその経緯が明らかにされている)。さて、本書は以前に「若き昆虫学者のアフリカ|いまこそ昆虫が面白い」で激オススメしたように、めちゃくちゃ面白いんです。その研究内容と波乱万丈のアプローチは、まさに手に汗握る傑作の物語であり、文中いや道中どうしても読んでいるこちらまで感動を抑えられない、そんなアツい研究者による一冊なのだ。今回、数十年ぶりにバッタの大群が大発生し、世界的にも問題となっている今こそ、絶対に読んで欲しい内容である。
「大学院を出て、ポスドクとして研究室にいた頃は、安定した職もなく、常に不安に苛まれていました。博識でもなく、誇れるような実績もない。友達と楽しく飲んでいても、トイレにたったときに研究の手を止めた罪悪感に襲われる日々でした。なので、一発逆転を狙おうと」
日本ではスーパーで売っているタコの産地として知られるモーリタニア。バッタ研究者だった前野さんは、思い立って一路モーリタニアへ。このたび、かの地で経験した一部始終を記した『バッタを倒しにアフリカへ』を出版した。
「サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えています。私はこのバッタの研究者なのに、人工的な研究室で飼育実験ばかりしており、野生の姿を見たことがなかった。自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました」
本書は、現地の言葉(フランス語)もわからずに飛び込んだ前野さんの冒険の記録でもある。
売り上げランキング: 905
そして以下の一連の昆虫シリーズ本は、虫好きにはもちろんのこと、ちょっと怖いものを見てみたいムシ初心者の方にまで、ものすごくおすすめですよ。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
世界を変えた密約と帳簿・会計の世界史
Amazon Kindle の「文春の翻訳本・政治経済編」キャンペーンでは、おすすめ書籍が期間限定で
-
-
国語辞典業界最大の謎がいま明らかにされる|辞書になった男ケンボー先生と山田先生
近年まれにみるほどの傑作ノンフィクション『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』が、待望の文庫化・
-
-
Kindle電子書籍で手軽に読む高野秀行の探検記シリーズは、フィクションかと思うほどの強烈ノンフィクション
高野秀行という作家はものすごく強烈な個性を放っている。「高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクショ
-
-
震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える
新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年10月に起こった中越地震に関して
-
-
アメリカ大統領選挙まであと数日|敗者の演説で振り返るステーツマンシップ
ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの、泥仕合のまま迎えることとなりそうな米国大統領選挙。8年前
-
-
英文法再入門|高校の先生がこの本を読んでいれば
中公新書の『英文法再入門』は、直接的なタイトルに見られるように、英語学習者向けに文法を学ぶポイントを
-
-
寝苦しい今夜も嫁を口説こうか|珠玉の芸人エッセイ3冊
以前にも何度かおすすめしてきたように、お笑い芸人が書くエッセイには、なかなかに読ませる面白いものが多
-
-
マラソンランナー大迫傑という生き方|東京五輪で引退する「愚か者」
オリンピック最終日に開催され、最も注目されるともいってよい種目が、男子マラソンである。そして今年の東
-
-
できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで
以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20
-
-
「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ
10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作となったこの映画、もちろん僕も見に





