フェイスブックのパーソナルデータが明らかにする、米国スポーツチームのファン境界線はココだ。
これまで何度か書いてきたが、フェイスブックのデータサイエンスチームというのは、いつも興味深いデータを、さらに興味深く見せてくれる。例えば「フェイスブックから愛を込めて」や、「バレンタインの統計学と経済学」で紹介したように、男女関係の悲喜こもごもを面白おかしく分析できるのは、パーソナルデータを持っているフェイスブックならではの強みだ。
フェイスブックデータではないものの、「独身男女はドコにいる?データで見るデートガイド」では、米国センサス(国勢調査)の郵便番号データから都市および地区によって独身男女が住んでいる場所がどのように偏っているかを示しており、それはそれで大変に興味深かった。でも、国勢調査のデータを使って、地区レベルで視覚化できるデータというのは、年齢や性別といったあたりまでなんだろう。だからこそ、フェイスブックのパーソナルデータを用いて、ニューヨーク・タイムズ紙が先日見せてくれた以下のデータは、衝撃的な面白さとして受け止めた。これはもう・・・、ステキ過ぎるよね。
テーマはズバリ、米国大リーグのファンの境目はどこか?ニューヨーク・タイムズ紙上で詳しく紹介されているように、フェイスブックの個人データ(「いいね」)を利用して、各チームのファンが住んでいる場所を地図上で視覚化したものだ。
これの何が面白いって、そりゃあもう、今まで漠然としか認識されてこなかった境界線をはっきりと描いているところだ。例えばニューヨークの名門ヤンキースと、ボストンの強豪レッドソックス。その都市に住んでいれば地元のチームを応援するのが自然だ。じゃあ、ニューヨークとボストンの間に位置する町々の人たちは一体どちらを応援しているのよ?っていう疑問だ。それは、東京から西に向かって行った時、どこからエスカレーターの立ち位置が逆になるの?という素朴な疑問ととてもよく似ている。
で、その答えがくっきり見えるでしょ?下図が示すように、Yale 大学がある New Haven はヤンキースのテリトリーだし、コネチカット州の州都 Hartford も、ギリギリでヤンキース領なんだねー、っていうのが「見える」のがすごい。実に面白い。
それ以外でも、シカゴにおけるカブスとホワイトソックス、ロサンゼルスにおけるドジャースとエンゼルス等々、主要都市を二分するチームのファンの分布を明確に切り分けて視覚化している。この地図データを見たらいっそう地元対決の試合が盛り上がるかも知れないね。
で、予想通りというか、この地図は大変な反響を呼びそれに応える形でニューヨーク・タイムズ紙が続けて掲載したのが、今度はバスケットボールNBAのファン分布だった。
そしてこれがまた相当に面白いのである。ただ単に野球でやったことをバスケでもやってみました、っていうだけじゃないのだ。野球と同様にニューヨークとボストンの二都市で考えた場合、バスケットボールではニックスとセルティクスのどちらを応援するのか、という疑問なのだが、その答えは必ずしも野球の時と同じではない、というのがポイントだ。
以下の図が示すように、なんとなんと、大リーグのときはニューヨーク側のヤンキースを応援していた New Haven と Hartford にお住まいの人たちが、話がバスケになったとたん、今度はボストン側のセルティクスを応援しているじゃあないですか!
行政区分上の境界線と、スポーツファン心理に現れるような地元意識とが、必ずしも一致していないというのは実感としてもよく分かる。でもそれだけではなく、スポーツによってもそのボーダーラインが変わってくるというデータを、僕らは今まで見たことがあっただろうか。フェイスブックにはプライバシーの問題が常に付きまとうわけだが、一方で、どのスポーツチームを応援しているのかといった個々人のプライベートな情報が入手できるからこそ、このように興味深くデータを視覚化することもできるのだ。
そんなユニークなデータを、毎度ユニークな視点で目の前に見せてくれるのが、フェイスブックのデータサイエンスチームであり、そして今回のニューヨーク・タイムズ紙のデータサイエンティスト達だ。彼らのユニークな仕事ぶりには、今後もぜひ注目していきたい。
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