*

現代アメリカ社会の象徴:メガチャーチの誕生と新たなコミュニティの創造

公開日: : アメリカ

毎年クリスマスを迎えるたびに思い出すことがある。それは若い頃の甘酸っぱいデートの記憶、ではもちろんない。そうではなく、僕がいつも思い起こすのが、アメリカのメガチャーチだ。僕がこの現代アメリカ社会を象徴する巨大教会について初めて知ったのは、「アメリカン・コミュニティ」の中で紹介した渡辺靖著『アメリカン・コミュニティ:国家と個人が交差する場所』であった。

 

強固な外壁に囲まれたロス郊外の超高級住宅街、保守主義の牙城・アリゾナの巨大教会、ディズニーが創ったフロリダの町など、9つの地域を丹念に調査。多様性を象徴し、内側から社会を支えるコミュニティこそが、アメリカをより深く理解するための鍵である。なぜこの国はダイナミックに変化し続けられるのか。真の力の源泉とは何か―。

 

現代米国社会を象徴する9つのコミュニティを訪問しその現状を紹介した本書の中でも、最も強烈に僕の印象に残ったのが、保守主義の砦・巨大教会(メガチャーチ)だったのである。過去にはクローズアップ現代「巨大教会が政治を動かす~アメリカからの報告~」でも特集され、宗教と政治が密接につながった姿が衝撃を与えた、あの巨大教会群のことである。

 

photo credit: Flickmor via photopin cc

photo credit: Flickmor via photopin cc

 

 

だから、2008年夏に僕がアメリカで留学を始めた際に誓ったことの一つに、必ずこの巨大教会とやらを見てやろう、そしてその何がアメリカ的なのかを探ってみたい、ということだったのである。そして僕はその翌2009年のクリスマスに、そんなメガチャーチの一つを訪れる機会を得た。これは本当に幸運だったと思う。僕にはまさにそのメガチャーチに通う米国人のクリスチャンの友人がおり、彼ら家族に連れられてクリスマスの集いに出席することができたのだ。

 

このことを大学のアメリカ人友人に話すと、まず間違いなく驚かれた。それは、なぜ日本人の僕が、アメリカでも特異な目で見られているメガチャーチなんかを訪れる機会があったのかという驚きである。なにしろ普通に留学生活を送っている限り、同級生も教授も国際色ゆたかでリベラルであるからこそ、宗教的保守のメガチャーチとの接点など生じようがないのである。

 

しかし、僕が大学とは全く関係ない古いアメリカ人友人と一緒に、実際にメガチャーチを訪れて感じたのは、そこがアメリカの一つの平均像だということだ。学歴が飛び抜けて高いわけではないが低いわけでもない。郊外で生まれ育ちそして働き、近隣の大都市や海外への関心は乏しい。白人が大多数を占めており、僕が訪れた当日、間違いなく僕は教会内での異物であった。新興住宅街の新住民がそろって同じ教会に通い、ご近所付き合いを大事にする。それと同時に、新しい住宅地が開発されれば熱心に勧誘し、新たな信者を連れてきた人には教会側からプレゼントが用意される。

 

このように、従来の教会や伝統的な宗教に対する我々の考え方とは大きく異なるシステムとサービスを、実に現代的なビジネス・マーケティング的志向で構築したのが、このメガチャーチとその裾野に広がる新たなコミュニティなのである。そしてもう一つ注目したいのが、このメガチャーチの隆盛が、「『ゼロ・トゥ・ワン』のティールと米国社会の変容」で書いた『綻びゆくアメリカ』と同時期に進行している点である。

 

以下のレポートが、僕がまさに自分の目で見てきた現代アメリカの一つの象徴である。ぜひまた、その後の成長拡大ぶりをみに、僕自身このメガチャーチを再訪したいと思っている。

 

  1. メガチャーチの衝撃
  2. 神をも消費するアメリカ
  3. メガチャーチ信者の特性
  4. 日本とアメリカに見る郊外
  5. 日本の正月とチャーチの未来
  6. メガチャーチのメガ化が止まらない

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

sandberg-barnard

もう一度聞きたい、アメリカの大学卒業式スピーチ5選

アメリカの5月は卒業式のシーズン。そして米国大学の卒業式と言えば、著名人によるスピーチ(Commen

記事を読む

medium_12154391735

人はなぜ走るのか?を問う『Born to Run~走るために生まれた』は、米国ランナーのバイブル

米国で異例のベストセラーとなり、何度目かのランニング・ブームを引き起こした一冊『Born to Ru

記事を読む

medium_6840269621

NHK戦争特番:日本とアメリカとその狭間で

毎年夏が来る度にテレビ各局、新聞各誌が特集する太平洋戦争と終戦。その中でも個人的に強烈に印象に残って

記事を読む

2014-06-08 11.03.21

愉しく美味しく走ろう!南魚沼グルメマラソンを応援してきた

本日のKindleセール商品は、『ウルトラマラソンマン 46時間ノンストップで320kmを走り抜いた

記事を読む

travel suitcase

留学前に読んでおきたいこの6冊

先日書いた「留学前に。」の続き。留学前にできることは色々とあるだろうが、留学に対するイメージをよりク

記事を読む

playground in a rural area

アメリカと日本と国際養子縁組

先日のTBSの番組「女児はなぜアメリカへ行ったのか?国際養子縁組を考える」を観た。 豊かな社会とは

記事を読む

Manzanar_old

アメリカ日系人強制収容所跡地を尋ねた米国西海岸縦断の旅

アメリカ生活の中で、僕はずいぶんと色々な所を旅したように思う。もちろん広大なアメリカ全土を歩くことな

記事を読む

Dow-Jones-WSJ125-2

Wall Street Journal 125周年と、アメリカ現代史

ちょうど昨年、「フィナンシャル・タイムズ(FT)とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」で書い

記事を読む

summerhouse1s

アメリカで最もお世話になったあの老夫婦がこの夏日本にやって来る

僕が米国留学で一番お世話になったのは、ひょっとすると大学院の指導教授ではなく、むしろアカデミックとは

記事を読む

519irztjoil

アメリカ大統領選挙まであと数日|敗者の演説で振り返るステーツマンシップ

ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの、泥仕合のまま迎えることとなりそうな米国大統領選挙。8年前

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

photo credit: Studio V2 via photopin (license)
英語論文の書き方・直し方|英文校正校閲にはクラウドソーシングがおすすめ

英語アカデミックライティングに必携の英語辞典 「アカデミックライティ

writing a research paper
英語論文の書き方:スタイルとフォーマットで学ぶアカデミック・ライティング

3回連続で紹介したおすすめ英語ライティングテキスト、の続き。

matterhorn-968_640
【Kindleセール】冒険家・植村直己『青春を山に賭けて』は『若き数学者のアメリカ』と並ぶ名作青春記 in アメリカ

今月の Kindle 月替わりセールに、植村直己『青春を山に賭けて』が

6550520_64aeb7bd3c
英語をイメージと塊で捉える『英会話イメージリンク習得法』

『英会話イメージリンク習得法』のKindle版が、現在なんと90%オフ

sandberg-barnard
もう一度聞きたい、アメリカの大学卒業式スピーチ5選

アメリカの5月は卒業式のシーズン。そして米国大学の卒業式と言えば、著名

paper editing
英語論文の書き方:アカデミック・ライティングの決定版テキスト

僕が学生の論文を指導するにあたって、まずは徹底的に読み込むようアドバイ

medium_4455328823
スコット・ジュレク『EAT & RUN』は、世界各地を走り尽くし、食べ尽くし、そして語り尽くした名著

ベストセラー『EAT & RUN 100マイルを走る僕の旅』は

three main dictionaries
国語辞典を選ぶならこの3冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波

目的と用途に合わせてベストの国語辞典を見つけよう 国語辞典というのは

PAGE TOP ↑