夏本番。今年はぜひ美味しいクラフトビールを飲もう!
アメリカのビールと言えばバドワイザー。そのイメージは正しい。なにしろ下図が示すように、市場シェアで圧倒しているのがバド・ライトであり、続けてクアーズ・ライトに通常のバド、そしてミラー・ライトというラインナップだ。そして、こうしたビール会社が大量のCMを投入してきたのがアメフトでありスーパー・ボウルであったというのは、「世界で最も成功したスポーツビジネス:アメフトNFLとスーパーボウル」で書いたとおりだ。
ただ、こんなにも売れている「アメリカのビール」だが、美味しいかと問われたら、120%の自信を持って即答しようではないか「薄くて不味い」と(苦笑)。だって、名前の通りライトなんだから。その事実にアメリカ人も薄々気づいていたのだろうか、何も驚くことはないのだが、アメリカのビール消費は年々下がり続けており、ワイン等の他のアルコールの消費増加も相まって、ビールはますます敬遠されていきそうな傾向なのである。
そんな暗いニュースに覆われた米国ビール業界にあって今もっとも勢いがあるのが、「アメリカのクラフトビールは実は美味しいんです」でも紹介したクラフトビールである。以下の図が示すように、とくにこの10年で一気に生産量が伸びた。過去2年間では、なんと1日に平均1.2の醸造所が新設されているのだという。ものすごいペースではないか。そんな米国クラフトビールの聖地となっているのがオレゴン州であり、僕もその熱気を感じるためにわざわざ現地を訪れてみたのは「オレゴン州の小さな町ベンドに酔いしれる」で紹介したとおりだ。
もちろん、ビール業界全体からしてみればクラフトビールのシェアはまだまだ小さく、2013年時点でも8%にとどまる。しかしながら縮小する市場にあっては、生産量・消費量ともに伸びまくっているという点こそが、書籍『クラフトビール革命』をはじめ、各方面から注目される理由である。しかも、つい先日の報道にあった通り、日本でも「キリンがクラフトビール事業に本格参入、5年で単年度黒字狙う」ということらしい。いよいよ日本国内にもクラフトビールの波がやってくるか?
そんな「クラフトビール革命」の中心となっているのが、Indian Pale Ale (I.P.A.) と呼ばれる品種。もともとはイギリスがインドを植民地支配していた時代に、本国からインドまでの長い船旅の中でもビールが劣化しないようにとホップを大量に入れたことがこの品種の起源となっている。その強い香りと苦味は最初に飲んだ時には顔をしかめてしまうだろうが、これがまたクセになる美味しさなのである。日本でも少しずつクラフトビールが増えてきたのは、「日本のクラフトビールは新潟がアツいんです。ご存じでした?」でも報告した通りだ。また、東京都内でもここ数年でずいぶんと多くのクラフトビアパブが新規オープンしたみたいだし、この夏こそぜひ、IPAを始めとするクラフトビールを味わってみてはいかがだろうか?
Amazon Campaign

関連記事
-
-
アメリカ地方自治体の分断:富裕層による独立運動
先日のNHKクローズアップ現代を興味深く視た。「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」
-
-
廃棄カツ横流し事件でよみがえる『震える牛』と食品・外食産業への不信
先日からニュースで大きく報道されている冷凍カツの横流し事件(NHKニュース「カツ横流しで業者 廃棄食
-
-
史上最年少プロ棋士・藤井聡太の初勝利と『将棋の子』たち
史上最年少のプロ棋士が誕生したと話題となったのが2016年9月のこと。それから3か月が経ち、今度は若
-
-
2022年将棋賞金ランキング発表|藤井聡太5冠が1億円超で堂々の首位
将棋連盟から2022年の獲得賞金・対局料ベスト10が発表されましたね。毎年この時期の恒例であり、名
-
-
バレンタインの統計学と経済学
明日は男性諸君が待ちに待ったバレンタインデーですよね!? というわけで以下のエントリを再掲。そして、
-
-
米国Amazonの第2本社候補地選びがついに決着
1年以上に渡って注目を集めてきた、米国アマゾンの第2本社候補地選び。5万人以上の雇用を生むというこの
-
-
現代アメリカ社会の象徴:メガチャーチの誕生と新たなコミュニティの創造
毎年クリスマスを迎えるたびに思い出すことがある。それは若い頃の甘酸っぱいデートの記憶、ではもちろんな
-
-
囲碁タイトル7冠同時制覇|井山裕太と師匠・石井邦生が創りだした盤上の宇宙・独創の一手
すごいな、井山裕太。大きなニュースとなったことで、囲碁ファン以外にも伝わったであろう、7冠同時制覇へ
-
-
新潟県南魚沼市の銘酒「鶴齢」がJALビジネスクラスの機内食日本酒リストに登場
JALが3月1日から、国際線の機内食にて春の新メニューを提供開始したというニュース。今回のメニュー刷
-
-
震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える
新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年10月に起こった中越地震に関して